2024年11月05日( 火 )

ようやく始まった!? 住宅・自動車メーカーの本格EVコラボ(後)

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1泊2日で暮らしのメリット体感

 イベントは、積水ハウス(株)が横浜市内に建設した充電器を備える賃貸集合住宅に、参加者が1泊2日の日程で滞在。EVと充電器が身近にある暮らしのメリットを体験・確認できるというものだ。

 建物がZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウ)仕様であることも特徴の1つ。これは太陽光発電などにより生み出されるエネルギーと、暮らしのなかで消費されるエネルギーとがほぼ同等となる住宅のことをいう。

 消費エネルギーは建物全体の断熱性能を高めることに加え、LEDや高効率給湯器などの導入による省エネルギーで低減される。脱炭素社会実現に向け、国や住宅事業者が今、普及に向け積極的に取り組んでいるものだ。

 これまでは戸建住宅が主体で供給されており、賃貸住宅ではいまだレア。先導的に建設を進めてきた積水ハウスは、こうしたイベントを行うことで防災配慮やペット共生の仕様なども含めたトータル、かつハイグレードな賃貸ライフの魅力を訴求する。

 つまり、このプロジェクトとイベントの背景にはEV普及を目指す日産と、ZEH賃貸というより上質、高付加価値な賃貸住宅の受注拡大を目指す積水ハウスの思惑の一致があることを改めて指摘、強調しておきたい。

 上記のような自動車メーカーとハウスメーカーが本格的にタッグを組むのは、ガソリン車でもそうだが以前にはなかったこと。あるとすれば、プライム ライフ テクノロジーズ(株)の傘下に入ったトヨタホーム(株)と、その前の親会社だったトヨタ自動車(株)の間くらいだろう。

 いずれにせよ、住まいとEVの結びつきがより強まれば、得られるユーザーメリットは大きくなる。例えば、住宅の太陽光発電(PV)で生み出される電力を、EVに搭載されている蓄電池に貯めて使うことができる。

 この場合、EV充電のための電気代はほぼタダになり、電気代の高騰が叫ばれる今、大変助かるし、充電する電気は再生可能エネルギーだから、一般電源からの充電より環境に優しいというメリットも発生する。

住まいとクルマで電力を融通する「V2H」

 EVの蓄電池は一般的な住宅に設置されるものより大容量。EVを買い物の短時間しか利用しない、常にフル充電に近い状態が保たれるケースであれば、EVの蓄電電力を暮らしのために使うこともできる。

 EV充電をPVの発電電力でまかなうのなら、電力を再生可能エネルギーだけで自給自足するのに近い暮らしができるうえ、災害によって起こる停電時にも電気が使えるようになり、ユーザーの安心・安全に貢献する。

V2Hシステムの制御モニター
V2Hシステムの制御モニター

    上記は「V2H」(Vehicle to Home)というシステムで、ずいぶん前に実用化されているが、導入コストが高額なことに加え、そもそも対応するEVが少なく、導入実績はまだ非常に少ないのが実状である。

 また、こうしたシステムは、住まいとクルマの事業者がそれぞれに訴求してもユーザーメリットが伝わりづらい。そうしたことからも今回の日産と積水ハウスの連携は時宜を得たものと評価できそうだ。

 今後、戸建や賃貸住宅、さらには分譲マンション、月極駐車場の業界でもこのようなプロジェクトが推進されるようなら、日本におけるEVの普及は一層の加速感をもって進展するものとみられる。ぜひそうであって欲しいし、少なくともEV充電スポットを増設するより、圧倒的にユーザーが享受できるメリットは多い。

(了)

【田中 直輝】

(前)

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