未曽有の国難に見舞われる日本 それに対応できる政治を目指して
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衆議院議員・文部科学委員長(福岡4区)
宮内 秀樹 氏4期目の宮内秀樹衆議院議員(福岡4区、自民党)は、農林水産副大臣や国土交通大臣政務官を歴任し、中堅議員として東奔西走の日々を送っている。安倍晋三元総理銃撃事件で、流動化した政局と、不安定な国際情勢のなか、国民のために何をすべきなのか、話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)被害者救済新法の成立
──安倍元総理の銃撃事件以降、2022年は激変の年でした。21年はまだ明るさがありましたが、23年は大変な年になることが予想されます。今後の見通しはいかがでしょうか。
宮内秀樹氏(以下、宮内) 安倍元総理の事件のようなことが起こるとはまったく予想していませんでした。その後の状況はご承知の通りですが、現時点では、衆議院解散という雰囲気は永田町にはないですね。
──それどころではないということですね。5月の広島サミットまでは解散することはないということですか。
宮内 サミットは、岸田文雄総理の地元広島での開催ですし、そこまでは岸田政権で行くと思います。予算の執行もあり、政治の空白はありえないことですから。それでは、サミット後も続くのかというと、政治は水物であり、断定はできないと思います。岸田総理も、支持率低下はあるとはいえ、党内で距離を置くグループ、たとえば、二階俊博先生のグループに助けを求めてくることはないでしょう。二階先生の政局に対する勘は天才的なものがあり、今は動く時ではないとみておられるように思われ、能動的に動くことはないと思います。
──旧統一教会の問題をめぐって、高額献金の問題などが明らかとなり、教団側は巻き返しに必死のようです。
宮内 昨年12月10日に悪質な寄付勧誘の規制を柱とする被害者救済新法を成立(23年1月5日施行)させました。また、宗教法人法に則って、所管の文化庁が質問権の行使を行っています。そういう意味で国の方向性は出されました。解散命令まで出されるのかどうかが焦点ですが、方向性においては、想定に入れているのではないでしょうか。
──今後、政治家や行政は旧統一教会と接点をもたないということになりましたから、信者からの献金は集まるとしても、教会は事実上干されていくものと思います。
宮内 今回の新法は、宗教法人が霊感などを用いて不安をあおり、寄付が必要不可欠だと告げるなど、個人を困惑させる行為や借金をさせたり自宅などを売らせたりして、寄付を求めることを禁止するとともに、悪質な勧誘の規制に違反した場合の取消権を認めました。
ただ、宗教一般に対しては、信教の自由や内心の自由は保護される必要があります。一部メディアにはわかりづらいなどの意見もあるようですが、現在、宗教法人は約18万法人あり、その正当な活動にまで影響を与えるものは立法化できません。今回の立法によって、問題となってきた行為に一定の歯止めがかけられると思います。
──オウム真理教のように国家権力から弾圧されたと結束してまとまるのか、逆に信者が離れていくのか、政治との接点含め、どのように見ておられますか。
宮内 私は旧統一教会とはそんなに親しい関係ではありませんでしたから、詳しいことはわかりませんが、活動を見る限り、宗教団体としての結束力は強いと思います。これから入信する数が増えることはないと思いますが、一定程度の組織力は維持していくと思います。
激変する日本の政治・社会
──議員秘書として25年、国会議員として10年、政治の世界に身を置いてこられましたが、今回のように安倍晋三という1人の政治家を失ったことで世の中が激変したということはおそらくなかったと思います。その後、旧統一教会との関係の見直し、東京五輪汚職関係者の摘発、自民党内の路線対立という大きな変化が生じています。
宮内 そういう意味ではやはりショックでした。まさかこんなことになろうとは…。結果として山上徹也容疑者の思った方向に行っていることになります。その後の変化に、一体、社会は何を求めているのか、そのことでしばらく悩みました。数年前の旧統一教会の実態が表面化していなかった数年前の時点での同教会の集会への参加が、とんでもなく悪い活動に加担しているかのように報道されるなど、臨時国会の後半は自民党にとって厳しい逆風が吹く状況でした。教団は反共思想を掲げていますから、その理念において自民党と共通する部分はありましたが、安倍元総理も、基本的にはあくまで選挙上のおつきあいであったと思います。
──検察による東京五輪汚職関係者の摘発は、安倍元総理が亡くなってから動きが見られたようにみえますが、どう見ていらっしゃいますか。
宮内 人的な要因によるものではなく、時間の経過とともに変わっていくものであり、その変化に恐ろしさも感じます。岸田総理が安倍元総理逝去後のさまざまなプレッシャーに的確に捌ききれなかったため、それまでの反動がより鮮明に出ているように見えるのではないでしょうか。元のさやに戻るような雰囲気でないことはたしかです。
──自民党内における経済・財政政策をめぐる路線対立が激しくなっています。
宮内 安倍・菅(義偉)両政権では、政治と霞が関が一体制となり、元財務官僚の黒田東彦氏を日銀総裁に据えて、金融緩和を続けてきました。しかし昨年から各国の中央銀行、国際金融市場がインフレを懸念して金利を引き上げており、我が国も利上げに舵を切りました。どこまで本気なのかはわかりませんが、岸田総理は、安倍・菅政権からの政策転換を考えているのかもしれませんね。
──安倍政権下で、日銀を財務省の路線から独立させ、大規模な金融緩和を実施したことに関して、私は評価しています。黒田総裁は旧大蔵・財務省出身ではありましたが、主流派ではなく、財務省の圧力に屈せずに金融政策を行える最高の役者だったように思います。
宮内 前政権まで、結果としては金利をまったく上げていません。金利を上げなかったことは財務省にとってはよかったのです。10年間利上げをできなかったことは、結果として政府のいうことを聞く日銀総裁であったということのように思えます。黒田総裁は今春退任予定です。次の総裁がどういう方向性でいくのか、安倍・菅路線とは違うものになるのかわかりませんが、日銀の独自性は増すように思います。黒田路線を継続するのか、それとも金利を上げるのかわかりませんが、金利なしという状況はやはりおかしいと思います。アメリカは金利を上げたり下げたりしています。
──金融政策はダイナミックなものですからね。国はリーマン・ショックからずっと企業の面倒を見てきていますが、潰れるものは潰していかざるを得ません。そうなってくるとこれから自民党内の路線対立が激化すると思います。
宮内 党内の雰囲気について、清和政策研究会(安倍派)の方々は発言力を増してきました。人数も多く、今もそういうところがあります。「日本はもっとアイデンティティーを掲げて強い日本をつくっていこう」という考え方自体は理解できますが、「それを俺たちが言ってるんだと、安倍さんの遺志」だと正当化する空気には、率直に言って違和感を覚えもします。もう少しバランスを考えて理念や政策を打ち出していったほうが良いのではと考える場面があります。
清和研のなかで、安倍さんの思いを引き継いで派内をリードできる人物は、やはり萩生田光一自民党政調会長だろうと思います。森友学園の問題でも、身代わりになる気概で、安倍総理(当時)を守っていたと思います。身びいきになるかもしれませんが、自民党の次のリーダーにふさわしいのは、萩生田氏、武田良太氏、それから厚生労働大臣の加藤勝信氏あたりとみています。加藤氏は頭脳明晰であり、政権のなかでずっと仕事をしてきたので、安定感があると思います。
──萩生田政調会長は、増額した防衛予算を国債で資金調達するという主張ですが、国民に国を守るためにその負担をすべきと正面から訴えるべきではないでしょうか。
宮内 そのあたりを萩生田氏と直接やりとりしたことはありませんが、とりあえず来年度予算をつくるにあたって、不足分は国債を充てようという考えだったように思います。そもそも2週間で1兆円の増税を決めるとかありえないです。消費税も2%引き上げる際にどれだけの政治的なダメージを受けながら踏み切ったのか。防衛予算についてけりをつけるのは、政調会長の仕事ですから、自ずと結論を出すように思います。財政に関する打ち出の小槌はありません。
日本の今後の行方
──今深刻なのは、ほとんど話題になっていませんが、22年の出生数が約77万人ということです。まさに日本民族の存亡にかかわる話です。
宮内 私の持論ですが、少子化担当大臣を十数年配置して予算をつけているけれども、あまり結果が出ていないようにみられ、まずは過去の検証をする必要があります。
家庭の経済が厳しいため、子どもをつくれないという話があります。しかし、男女が互いに好意をもって、結婚し、子どもが生まれて、我が子に愛情を感じる、夫婦の間に幸せを感じるということは、頭だけで考えることではないと思います。東京は所得水準が日本でもっとも高いのに出生率は一番低いです。逆に沖縄の所得水準は低いのに、出生率は高いです。デリケートな問題ではありますが、未婚の男女が増えていることは残念に思います。最近、私の息子が結婚し、親としてものすごく嬉しかったです。妻からはお嫁さんにプレッシャーをかけてはだめといわれますが、早く孫の顔を見たいという想いがあります。
未婚者が多い問題には、直接告白し、告白されるという気持ちを伝え合うコミュニケーションがうまくない人が増えていることと関係があると思います。仕事上でも直接ではなくメールで伝えることが多くなり、トラブルのときに面と向かって謝罪することができない人がいます。結婚も人付き合いの延長です。人間同士がもっと触れ合うことによって、家族を持つ喜びや人生の楽しさを感じられるようにうまく伝えていく必要があるように思います。
──12年12月に初当選され、ちょうど10年経ちました。その経験を踏まえて、国民のためにどのように尽くしていくのかお聞かせください。
宮内 地球の反対側(ウクライナ)で戦争が行われています。北朝鮮もミサイルを撃ってきています。与党として国家国民を守るために責任ある話をしていかなければいけません。繰り返しになりますが財源に関する打ち出の小槌はありませんし、借金はいくらしても大丈夫ということはあり得ません。岸田総理が、内政・外交をどう進めていくにせよ、次の選挙は順風満帆にはいかないとみています。新しい政党が出現するのか、政党同士の合流の話が浮上するのか、何が起こるか未知数です。菅前総理が21年8月の横浜市長選挙で敗北した途端に、党内から「辞めろ辞めろ」の大合唱でした。ところが最近は「やっぱり菅さんのほうがよかった」なんていうのですから、風向きはどう変わるかわからないと思います。
平時は党内でさまざまな議論があっても、いったん決まったことには従わなければなりません。私も1回生、2回生のときより、政治の現場においてはたすことのできる役割の範囲が広くなりました。ポストはあくまで結果にすぎません。自分の得意分野、やりたいことはもちろん意識していますが、喩えるなら出された定食は「おいしい」と全部食べることを心がけています。中堅議員はみんなそうだと思います。幸いに法案策定などの調整役や新規プロジェクトチームの座長を任されるなど充実した日々を送っています。
【文・構成:近藤 将勝】
<プロフィール>
宮内 秀樹(みやうち・ひでき)
1962年愛媛県松山市生まれ。愛媛県立松山東高校、青山学院大学経営学部卒。衆議院議員秘書(塩崎潤、塩崎恭久、渡辺具能)を経て、2012年12月衆議院議員初当選(現在4期目)。15年国土交通大臣政務官。17年自民党副幹事長。20年農林水産副大臣。現在、衆議院文部科学委員長を務める。関連記事
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