経営から見る長崎J1昇格 あのジャパネット元社長・高田明氏が起した奇跡(後)
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地方弱小クラブの鮮やかな昇格劇は、まさにJリーグ史上に残る奇跡といえるだろう。サッカーJ2のV・ファーレン長崎が、初の1部昇格を決めた。今年3月、3億円を超える累積赤字を抱える長崎は給与未払いに陥り、J3降格寸前となっていた。その崩壊の危機を救ったのが、地元企業のテレビ通販大手(株)ジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)の創業者の高田明氏である。今年4月に社長に就任して経営改革に着手。クラブを消滅の危機から救ったのだ。
J1で闘うには、最低20億円の資金が必要
どうして、高田氏は奇跡を起すことができたのか。経営の視点から見てみよう。
初めてのサッカークラブの再生は「会社の仕組みができていない。マイナスからのスタートだった」。外国選手を含めた大型補強は一切行なわなかった。監督やスタッフの交代もしなかった。その代わり、委託業務の見直しから職員の労務改善に至るまで、気持ち良く働ける職場環境を整備した。倒産の心配がなくなり、職場環境の改善に注力したことで、長崎の選手のモチベーションが上がった。快進撃を続けた要因といえる。サッカーと言えども経営である以上、収支が合った組織にしなければならない。半年たって、組織らしきものはできてきたが、まだ完成ではない。では、何をもって完成と考えているのか。
西日本スポーツ(11月12日付)のインタビューで、高田氏はこう語っている。
〈資金的に言えば、J1昇格時の予算規模は半端じゃない。名古屋はJ2ですけど30億円ぐらいの予算がある。J1で5億では絶対に回らない。補強を考え、安定化させるには、15とか20(億)のお金を確保しないと。もちろんジャパネットは先頭に立って投資していくけど、それだけでは駄目ですね。採算を取れるようにしないと〉
それでは、長崎はどの程度か。17年1月期のクラブの事業規模を表す営業収益(売上高)は前に触れたように7.4億円。Jリーグトップは浦和レッズの66.0億円。J1平均が36.4億円、J2平均が13.1億円。J2平均よりも5億円以上少ない。そんな弱小クラブがJ1に昇格した。Jリーグ史上の奇跡と言われた理由だ。
北部九州3県のJ1、J2クラブの営業収益は、サガン鳥栖が27.6億円、アビスパ福岡が18.3億円、ギラヴァンツ北九州が8.5億円。いずれもJ1で闘うには規模が小さい。
注目は鳥栖。広告料収入が前年より4.2億円増加し16.3億円に。増加額はJ1トップだ。15年からユニフォームスポンサーになった、ゲーム企画・運営会社のサイゲームズの影響が大きい。2年前の14年に7.8億円だった広告料収入は、いまや倍以上になった。
その効果で、チームの人件費は前年より3.7億円増えて14.7億円に。増加額はJ1の2位だ。J1の平均チーム人件費15.7億円に近づいた。17年のJリーグ成績は8位。J1の上位を争うチームへと力をつけてきた。経営危機は過去の話。いまや地方クラブのお手本だ。
広告料収入増→チーム人件費増→チーム成績の上昇。この好循環が勝利の方程式だ。
長崎のチーム人件費は3.2億円。この規模ではJ1で戦うのは無理。選手を補強するには、広告料収入を大幅に引き上げねばならない。J1昇格という奇跡をもたらした高田明社長のさらなる経営手腕に注目したい。
(了)
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