2024年12月23日( 月 )

任天堂創業家VS東洋建設の争いが泥沼化 6月の定時株主総会で両者は激突(前)

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 海洋土木大手の東洋建設と、同社に対する”友好的TOB(株式公開買い付け)”を提案している任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」との対立が泥沼化し、”全面戦争”に突入した。

東洋建設が任天堂創業家の臨時総会開催要求を拒否

    東洋建設は3月10日、任天堂創業家の資産運用会社の「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(以下YFOと略)が開催を求めていた臨時株主総会について、招集はしないと発表した。YFOの請求は権利乱用に該当する不適当なものだとしている。

 YFOは3月3日、東洋建設に対し、臨時株主総会の招集を請求するとともに、業務や財産の状況を調査する第三者の選任を提案したと発表した。その候補として弁護士や公認会計士など3人を提案した。

 プレスリリースによると、YFOは東洋建設の非公開化が企業価値、株主価値を最大化すると主張。1株1,000円のTOB(株式公開買い付け)を提案したが、実質的に検討は行われなかったとの見解を示している。

 これに対し、東洋建設はYFOの一方的な情報開示に強く反発。YFOのプレスリリースなどには「秘密保持契約」で公表を禁止した事実が複数含まれており、「信頼関係が損なわれた」と主張。YFOの情報提供こそ不十分で、企業価値向上に向けた具体策や定量的分析が示されておらず「これでは賛否を判断しようがない」と突っぱねている。

インフロニアHDの友好的TOBに、任天堂創業家が参戦

 両社の対立が始まったのは昨年春。NetIB-NEWSが『任天堂創業家、東洋建設にTOB』(22年5月27日~29日付)のタイトルで報じた。振り返ってみよう。

 前田建設工業や前田道路などを傘下にもつインフロニア・ホールディングス(HD)が、東洋建設の経営陣の賛同の下、22年3月23日より1株770円でTOB(株式公開買い付け)を開始した。

 インフロニアがTOBを始めて1週間たった3月31日。「WK」1~3という投資ファンドが東洋建設株を5.84%保有しているとする大量保有報告書を関東財務局に出した。

 WKは保有比率を高め、4月22日時点で27.19%を保有、筆頭株主の前田建設(20.19%)を上回った。筆頭株主になったWKはケイマン諸島籍で、任天堂創業家の資産運用会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が出資する。

 YFOがインフロニアのTOBに待ったをかけた。YFOの参戦で、TOB合戦の期待から株価は上昇。インフロニアのTOB価格(1株700円)を上回って推移し、5月19日の終値は921円。TOBは成立しなかった。インフロニアによる東洋建設の買収は失敗した。

旧村上ファンド系投資会社の後を追う

 ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)(東京都港区六本木)は、任天堂の創業家である山内家の資産を運用するファミリーオフィス(個人資産の運用会社)である。

 YFOは20年6月、任天堂の山内溥元社長から相続した同社株を基に、孫の山内万丈代表(30)が立ち上げた。運用資産は2,000億円弱と公表している。

 後には旧村上ファンド系投資会社の動きがあった。ゼネコン再編を狙い、投資会社レノ(東京都渋谷区)が東洋建設株を買い集めていた。

 レノによる5%超の新規保有が明らかになったのは21年1月。その後、買い増しが続き、持ち株比率はインフロニアがTOBを発表する直前まで7.31%だった。

 TOBの発表で東洋建設株が急伸すると、すかさず保有株の3分の2を売却して、3月31日付の持ち株比率を1.89%に落とした。高値で売り抜けたのである。

 レノに代わって、東洋建設株を買い占めたのがYFOだ。

 『日刊ゲンダイDIGITAL』(21年7月7日付)は、関係者の話をこう伝えた。

 〈万丈氏は、”村上ファンド”の村上世彰氏(61)のようなファンドマネージャーに憧れていた。村上氏は現在、外部の投資家から資金を集めるのではなく、ファミリーオフィスという形態をとっています。万丈氏もこれを真似たのでないでしょうか〉

 投資家1年生の万丈氏は、村上世彰氏に憧れて、東洋建設株の買い占めに乗り出した。狙いははっきりしている。高値売り抜けだ。

(つづく)

【森村 和男】

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(後)

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