2024年12月28日( 土 )

ディズニー、FOX映画事業買収でAmazon、Netflixを叩く(前)

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 アップル、Google、フェイスブック、アマゾン――。IT(情報技術)企業が世界の産業構造を根底から変えようとしている。自動車、銀行、小売業の最大のライバルは、これらIT企業だ。テレビ・映画・音楽もまたしかり。新興のIT勢に侵食されてきた。娯楽の王様、米ディズニーが反撃に出た。

定額制動画配信の新興勢力にガチンコ勝負を挑む

 各メディアは12月14日、米娯楽大手ウォルト・ディズニーが、米メディア大手21世紀フォックスの映画・テレビ事業を買収すると一斉に報じた。買収額は524億ドルで、負債込みで661億ドル(7兆4,000億円)になる。

 報道によると、フォックスは買収手続き前にニュース・スポーツ番組部門を分離。ディズニーは映画など残ったフォックスの中核事業を株式交換方式で買収し、フォックス株1株にディズニー株0.2745株を割り当てる。フォックスを率いる「メディア王」ルパート・マードックス氏一族はディズニーの大株主になる。買収手続きは19年半ばまでに完了の見通し。

 ディズニーがフォックスの映画・テレビ事業を買収する狙いは何か。
 米週刊誌ニューズウィーク日本版(12月15日付)は「ディズニー、FOX買収で動画配信市場に殴り込む」と報じた。

〈ディズニーは来年、動画配信サービスを始める予定。今度の買収で、動画配信会社Huluの過半数の株式を手にする。いずれディズニーは、先行する動画配信大手の強力なライバルになるだろう。ネットフリックス、アマゾン、Google、フェイスブックにとって脅威だ〉

 動画をインターネット配信する企業が旧来型メディアの視聴率を奪いつつあるなか、ディズニーはコンテンツ拡充で反攻に出る。旧来型メディアによるIT企業への反撃である。

 米ネットフリックスは、動画をネットで有料配信する新興勢力で、15年に日本でも事業を開始。芥川賞を受賞した又吉直樹氏の映画「火花」などオリジナル作品を配信している。米アマゾン・ドット・コムもネットフリックスと同様のサービスに乗り出し、米Google系の「You Tube(YouTube)」もテレビに似たネット向けの有料番組配信を始めている。

 ディズニーが買収するHulu(フールー)は、2007年に創設された動画配信サービス。11年に日本事業を開始。14年に日本テレビ放送網が日本事業を買収した。

 ディズニーは映画「スター・ウォーズ」といった人気タイトルをもつが、フォックス買収で映画「X-MEN」シリーズなどが加わる。豊富なコンテンツを武器に、ネットフリックスやアマゾン、Google、フェイスブックといった新興勢力を駆逐することを狙っている。

日本のテレビ局は定額制動画配信を強化

 国内ではテレビ局が、定額制動画配信サービスを強化した。視聴率が低下し、広告収入が減速している。成長が期待できる分野として、定額制動画配信は活溌だ。

 日本テレビホールディングス(HD)傘下の日本テレビ放送網が先行。日本テレビは14年4月に傘下に入れた米動画配信サービス「Hulu(フールー)」(月額933円=税別)で、定額制動画配信事業を展開している。

 フジ・メディア・HDは05年9月にサービスを開始した「FOD(フジテレビオンデマンド)」(月額888円=同)で、テレビ朝日HDは16年4月に本格スタートした無料インターネットテレビ局「Abema(アベマ)TV」のなかで、見逃し視聴サービス(月額960円=税込み)を行っている。

 TBSHDと日本経済新聞社、テレビ東京HD、WOWWOW、電通、博報堂DYメディアパートナーズの6社は、今年7月に新会社「PPJ(プレミアム・プラットフォーム・ジャパン」を設立。来年4月に定額で見たいときに見放題の定額制動画配信を始める。

 PPJは、先行3局を追いかけるTBSとテレビ東京が手を組み、有料放送WOWWOWを巻き込んで対抗する。

 だが、定額制動画配信は利益を出すまでには至っていない。見たい作品の配信が終わると、すぐに解約するため、固定客がつかないのが原因だ。

 放送中の番組を同時にネットで配信する「同時配信」で新たな動きが出てきた。総務省は情報通信審議会に地上放送の同時配信を諮問し、18年6月をめどに最終答申の予定とした。著作権の処理、配信コストの負担など解決すべき課題は多いが、地上放送には新たな商機と期待が高まる。NHKが地域限定で、同時配信実験を行っており、民放各社はその結果を見守っている。

(つづく)

 
(後)

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