【BIS論壇No.408】日本のFOIPと、中国のBRI
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は3月22日の記事を紹介する。本年5月の広島でのG7首脳会議と9月のインド・ニューデリーでのG20首脳会議を控え、国際経済の動きが急を告げつつある。
3月18日にはドイツのシュルツ首相に率いられた外務、財務、防衛などの担当閣僚を含む、日独6閣僚による政府間協議が初開催された。経済安全保障を軸に重要物資の脱中国などサプライチェーン強化やサイバー攻撃からの防衛など、供給網における脱中国を打ち合わせたという。
EUを脱退した英国をはじめとして、ドイツも中国との経済関係を見直しつつある。ドイツは中国への過度な依存の是正によってアジア政策の転換を目指しており、経済安保を中心に供給網の脱中国を狙う日独両国は中国牽制で急速に接近しているようだ。
一方、岸田首相は20日訪問先のインドで、中国の広域経済圏構想「一帯一路」)(BRI)に対抗するため、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の実現に向け、グローバルサウスと呼ばれる南半球の途上国のインフラ整備支援に2030年までに750億ドル(9.8兆円)以上を投じると発表した。政府開発援助(ODA)を拡充して、「質の高いインフラ投資に注力する」と発言、中国による途上国へのインフラ支援に対抗するという。
日印はそれぞれ本年はG7(主要7カ国首脳会議)で日本が議長国。G20(20カ国・地域首脳会議)でインドが議長国を務める。これらの会議で日印は、問題になっている世界の開発金融や食糧安保、気候、エネルギーなどの分野において連携することで一致したという。日印関係ではムンバイ~アーメダバード間の高速鉄道事業への3,000億円借款に署名した。
一方、中国はBRI策定以来、10年を経た21年9月、習近平主席は国連総会で、新たに「グローバル開発イニシアチブ(GDI)」を発表。GDIは国連で約60カ国がGDIグループとして参加。中国が発展途上国との戦略的な関係を再確認する外交的な場として機能しているという。一方、主要7カ国(G7)などはインフラ投資で「一帯一路」(BRI)に対抗しようとしてきたが、スウェ―デンや英国などは援助や開発に向かう資金が細りつつある。開発資金の削減は貧困撲滅という目標の達成を脅かし、欧米の資金提供国と南半球のパートナー信頼関係を損ねてしまうとの意見もある。(NIKKEI Asia Opinion 2023年3月19日)
日本は中国の「一帯一路」構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)に積極的に協力し、日中相携えてグローバルサウスの発展に協力する方策を考究することを提言したい。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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