米銀行の連鎖破綻に歯止めも、くすぶる金融不安(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏銀行破綻の背景は(つづき)
銀行は短期で資金調達を行い、長期で運用するのが一般的だが、金利が長期よりも短期のほうが高くなり、貸出をすればするほど、銀行に損失が発生するようになった。その結果、銀行は貸し出しを控えるようになる。また、預金者は高い利回りの国債などに投資できるので、銀行の預金は減少する。
顧客の引き出しに備えて流動性不足にならないため、シリコンバレー銀行はやむを得ず価格の下がった売却可能債権(AFS)を売却し、18億ドルの損失が出た。そして、それが噂になり、取り次げ騒ぎが起こったのだ。今回は、米金融当局の迅速な対応により破綻に歯止めがかかったが、すべての問題が解決したわけではない。
債権の価格が下がっても、売却しないと損失は確定しない。米連邦預金保険公社(FDIC)によると、米の銀行全体で抱える債券の含み損は2022年末時点で約6,200億ドルと、1年前の約80億ドルから急拡大している。米金融当局が預金を全額保証するとは言っても、保有資金は限られており、真の解決にはならないという。それに、何らかの要因で資産を売却せざるを得なくなると、同様の危機が再燃する可能性もゼロではない。
どこかの銀行が資金難に陥り、長期国債を投げ売りすることで国債価格が下落すると、国債市場も崩壊する。銀行システムの安定と、国債市場の安定を同時に狙ったのが銀行ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)の創設である。債権を時価ではなく額面で評価し、それを担保にして融資を行うことで、株価下落などの悪循環に陥ることを防ぐのが狙いである。しかし、一部では価格が下がった債権を購入し、それを担保に入れて借り入れをするようなモラルハザードを懸念する声もある。
韓国では不動産市場に信用不安が
韓国において利上げで最も深刻な打撃を受けているのは、不動産業界だろう。金利が上がると、不動産のコストが上がることになるので、不動産価格は下落する。問題は不動産価格が下落すると、金融機関の危機につながることだ。また、金融機関の危機は建設業界にも影響を与える。マンションなどの販売が不振になり、資金繰りに窮するようになって、銀行から融資を受けるのも難しくなり、流動性危機に陥る建設会社が増える。
韓国で不動産価格が20%ほど下がると、年間のGDP成長率も1%くらい低くなるとの試算がある。また、不動産業界の不況は、プロジェクトファイナンスのかたちで不動産市場に資金を供給した貯蓄銀行、証券会社など、非銀行系金融機関の信用リスクにつながっていく可能性も排除できない。
実際、プロジェクトファイナンスの延滞率は、20年3月の0.38%から22年9月には0.77%にまで上昇している。それによってプロジェクトファイナンスが中断されたり、すでに供給した資金が回収されなかったりといった事態が懸念され、建設会社の資金繰りはますます悪化している。このように韓国では不動産業界発の金融危機の発生が懸念されている。
(了)
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