福岡でも高額電気料金と不当勧誘、新電力グランデータ
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このところメディアで高額の電気料金請求が取り上げられている(株)グランデータ(東京都豊島区)。訴えの多くは関東が中心で、たとえば、2人世帯で月4万円、5人家族で月13万円超などの請求がきたとして話題になっている。
当社にもグランデータの高額請求、勧誘方法がおかしいのではないかという情報が寄せられた。
1、2月の電気料金は、九州電力より50%以上高額
情報提供者(以下、Aさん)は福岡市近郊に在住。昨年10月に、仕事用事務所をマンションの一室に引っ越した際、グランデータと契約したという。もともと電気使用量が少なく、電気料金の請求額を都度確認することはなかったが、4月に入ってグランデータの高額請求問題をメディアで見て、電気料金の請求書を改めて確認したところ、たしかに高いことに気が付いたという。
Aさんに対するグランデータからの請求内容と、同じ使用電力量で九電の「従量電灯B」を利用した場合の電気料金を比較する表を作成した。
Aさんは勧誘を受けたときに、「九電より10%以上安くなる」と説明されたという。しかし、初回の10月検針の電気使用量が初回基本使用料割引きで九電よりも安くなっているほか、後の月はすべて高くなっている。
電気料金がとくに高くなっているのは、2023年1月の検針分である。九電より52%も高い。原因は燃料費調整額である。九電が634円であるのに対して、グランデータは7,974円と10倍以上になっている。この燃料調整費とは、燃料価格高騰や為替レートが要因となる原価の変動を電気料金にすぐに反映できるための制度で、自由電力料金の場合、事業者の裁量で自由に設定することができる。一方、九電の従量電灯Bは法律で料金が規制されているため、燃料費調整単価の上限が1.94円で固定されている。グランデータの検針日23年1月の推定燃料費調整単価を見ると24.39円である。他の月についても見ると22年中は10.71円~11.26円の間を推移し、23年は20円以上になっている。
この燃料費調整単価については、事業者ごとに設定が認められているため、必ずしも法令上は問題ではない。しかし、利用者に対して単価の変動額について説明がほとんどないのが実態であり、利用者は請求がきてから驚くことになる。しかも請求が来るのは1カ月後であり、すでに次の月の電力を使用中であって、今月も高額請求になるのではないかと不安になる。
グランデータと契約した多くの利用者は、九電や東京電力などの大手電力会社よりも安くなると思って契約したのに、実際には高額請求がきた。これをめぐり、クレームが発生している。電気料金は体系が複雑で分かりにくく、今回の件で初めて燃料費調整額という仕組みがあることを知った人も多かったようだ。
しかし、グランデータをめぐる問題は高額請求にとどまらない。
九電を名乗る電話
話はグランデータと契約する発端に遡る。
Aさんが昨年10月に仕事事務所をマンションへ移転させて早々、携帯電話に電話がかかってきた。
電話の相手は「九電」を名乗り、電話口で「電気利用契約について、紹介する九電の関連企業と契約すれば、確実に九電よりも10%ぐらい安くなる」と説明したという。Aさんは、引っ越したばかりだったので、これから電力会社に連絡しようと思っていたところに、ちょうど九電から電話がかかってきたと思って、電話の主が九電で間違いないものと信じてしまった。Aさんは、電話の勧めに従って契約したいと回答すると、後日、ショートメールで契約手続き用のホームページURLの案内が届き、それでグランデータと契約したという。
4月に入って高額請求に気づいたAさんは、解約するためグランデータのカスタマーセンターに電話をした。そこで解約手続きの方法とともに、勧誘方法について質問したところ、カスタマーセンターの担当者は、「グランデータとしてはそのような勧誘は行っていない。各地の代理店に営業を任せているため、代理店がどのような勧誘を行っているのかは分からない」と回答したという。
引っ越し業者から情報が名簿業者へ漏れている?
Aさんは、引っ越し直後に電話がかかってきたことにも疑いをもっている。すなわち、名簿業者が介在しているのではないかということだ。Aさんは引っ越しに際して、引っ越し用の見積もりサイトを利用し、そこで安い業者を利用していた。
契約解除について
グランデータのホームページによれば、契約解除は決して煩雑ではない。ホームページの説明によれば、「他社とのご契約をいただければ、弊社への解約のご連絡は必要ありません。 他社サービスの供給開始と同時に、弊社サービスは解約完了となります。」ただし、「東京電力エナジーパートナー」への切り替えの場合は連絡が必要なようである。
Aさんによれば、グランデータのアカウントページでは契約が切れた表示となっている模様。しかし、実際に契約が切れているかどうかは、今月契約を解除したばかりなので、請求が発生する来月にならなければ正確には分からないという。
グランデータならびに親会社「光通信」へ取材
本件にいて、グランデータのカスタマーセンターを通して電話で取材を申し込んだものの、「担当部署がないので対応できない」との回答だった。グランデータに取材等の対応部署がないとのことであったので、親会社の光通信に取材申し込みを試みた。しかし、ガードが固くこちらも記事執筆時点で取材に応じてもらえていない。
グランデータは、18年7月の設立当時は「(株)ひまわりでんき」だったが、20年4月にグランデータに商号変更した。同社ホームページによれば、22年9月時点の電力契約数は約42万件、ガス契約数は約7万件である。
九電へ取材
本件には九電を騙った勧誘の疑いがあるため、九電にも取材を行った。九電は取材に対して、本件と同様の問い合わせが発生しているかどうかについて明言を避けた。九電として、現時点で何らかの対応を取るかどうかは分からないとし、利用者に対しては、本件に限らず九電を名乗る電話で不審に思われる際は一度九電へ問い合わせの電話をしてほしいとの回答であった。
分かりにくい電力料金、大手電力会社も自由料金があるので注意
本件はグランデータという会社の問題としてメディアでクローズアップされているが、実は高額な電気料金はグランデータのような新電力会社でばかり発生するものではない。程度の差こそあれ、たとえば九電でも「こんなに高額な電気代になるなんて思っても見なかった」という事態は発生し得る。
九電にも自由料金がある。たとえば、昼間と夜間で料金が大幅に変わる「時間帯別電灯」や「季節別電灯」や「スマートファミリープラン」も自由料金である。これらは燃料費調整単価を電力会社が自由に設定することができる。たとえば、この3つのプランの場合、九電は3月の燃料費調整単価を8.19円/kWhに設定している。グランデータの20円台よりずっと安いが、単価が固定された従量電灯Bの1.94円/kWhよりは高い。
ただし、2~9月までの検針分は政府の電力補助により7円/kWhの補助金が出ることになっており、この期間、「時間帯別電灯」や「季節別電灯」や「スマートファミリープラン」の3つの燃料費調整単価は1.19円/kWh程度※となる。また、従量電灯Bの場合は補助を受けると、マイナス5.06円/kWh程度※となる。※各月の単価から7円差し引かれるため「程度」としている。
よって九電の自由料金を契約した利用者は、23年1月の電気料金は高かったに違いない。しかし、利用者の多くは、そのような仕組みをほとんど理解していない。
過去記事「大手電力の赤字見込みと値上げラッシュ(前)」で詳しく報じているが、大手電力7社は2月に規制料金の値上げを発表した。この7社に九電は含まれていない。よって九電の電気料金は上がっていないのかというと、そうではない。上がっていないのは従量電灯Bなどの法令によって規制を受けた料金体系であって、自由料金はすでに上がっている。
【寺村朋輝】
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