2024年12月23日( 月 )

債務51兆円、財政危機にあえぐ貴州省(後)

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 世界銀行やIMFは、政府の債務割合は多くても80%までとの目安を設けている。従って、貴州省が独力での返還は不可能と宣言したのは、各地方政府がすでに深刻な危機に陥り、今にも風船が割れそうな状態であって、外部の支援がないと2022年の不動産業界のように取り返しがつかなくってしまうからである。

 地方債がここまで膨らむと、巨大なリスクが生じる。このように際限なく膨らんでいく理由をいくつか挙げてみる。1つ目は、「都市を運営する」という根深い政府の考えである。 

貴州省 イメージ    かねてから旧ソ連の計画経済を見習ってきた中国は、政府の機能や地位を、公共サービスの提供でなく経営や管理をするものに変えてしまった。改革開放から50年、市場経済体制の整備を訴え続けてはいるが、実際には政府の資本集めや資本運営力の強大化から抜け出せていない。政府という市場経済の審判を試合に参加させて、都市の運営や市場の誘導という衣装を着せているのである。政府が都市の運営に加わってしまうと、企業と同様に自ずと資金の配分にも手を出す。これで地方債が際限なく膨らむ。

 2つ目は、誤った経済成長モデルである。中国は、供給がすでに需要を上回っているなかでも経済成長のモデルを改めず、依然として先取り投資や消費の抑制にこだわり続け、深刻な供給過多になっている。これで収益の出ない投資が大量に発生して返済力が下がり続け、債務リスクが膨らんでいく。

 貴州省の場合、2015年に中国西部の省で初めて「全県に高速道路開通」となったが、山間部ばかりでべらぼうな道路維持費が必要となる。また経済を支える大きな事業案件もなく、インフラ建設は借金頼みで、完成しても収益が出ない。これで根の深い借金漬け状態が出来上がる。

 3つ目は、上層部の指針を受けた地方政府に妙な業績概念が出ている。 投融資会社の野放図な背伸びは、経済再建に向けてインフラ建設に融資をつぎ込むようにとの指針や、役人のいびつでむやみな業績概念と表裏一体である。

 借金で投資することでGDPも成長し、税収も生まれ、工業団地や道路、広場など目に見えたかたちでインフラが出来上がるので、GDP成長率、広場の面積、地下鉄路線、高架橋の数、ビルの高さ、そしてこれにより高騰する不動産価格を競い合う。しかし、視察に訪れる上層部はたいてい、都市部の外観イコールその地方の業績と見なしてしまう。こうしたいびつな概念は、役人に対する評価の尺度となり、そして外国相手のひけらかしの対象になっていく。

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 4つ目は、政治と経済の癒着による融資リスク管理の形骸化である。中国には、中央政府や地方政府がほぼ統制する金融系を中心に多くの国有企業があるので、地方政府内部で債務が行き来する仕組みがある。つまり地方の財政には、片や借主である都市の投資会社、片や貸主である地方銀行という2つの「子会社」が存在する。こうして貸借対照表が肥大化し、まるで規制を受けない債務から通貨までのサイクルが出来上がる。そこで不動産が落ちこめば土地の収入が減り、政府系ファンドがしぼんで地方債を誘発してしまう。

 浮き彫りになった貴州省の債務危機。中国の地方政府が今年、深刻な財政負担や債務に見舞われることを物語るものである。経済回復という切実な任務を前にした中国が、引き続き通貨の緩和や前向きな財政、先取り投資、債務の上乗せをその重要な手段とするようであれば、野放図な隠れ債務など危険な地方債務が経済に致命的な打撃をもたらすことになる。

(了)


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