2024年12月22日( 日 )

アメリカの凋落を象徴する老老対決:バイデンvsトランプ(前)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

2024年大統領の構図

    アメリカは2024年に大統領選挙を控えていますが、かつてないほどの分断と混乱が続いています。その象徴的事件が、アメリカ史上初となった大統領経験者の起訴です。もちろん、主人公はトランプ前大統領に他なりません。

 実は、「不動産王」と呼ばれていた頃も、トランプ氏は自身の経営するホテルやカジノが経営不振に陥り、倒産を繰り返していました。話題となった「トランプ・エアライン」もわずか1年半で破綻。当時の負債総額は20億ドルに達するもの。こうした負債をすべて踏み倒し、出資者に尻ぬぐいさせてきたのが「倒産成金」と異名を取った所以です。

 大統領に選ばれた後、トランプ氏が最も力を注いだのが富裕層や法人への減税政策でした。それまで35%だった法人税を21%に減らすことに成功。今回、世界が注目しているニューヨーク大陪審による起訴にしても、トランプ氏にとっては慣れ親しんだ訴訟案件に過ぎません。なぜなら、不動産事業に関わっていたころ、175件もの訴訟を起こされ、38件は敗訴しましたが、45件では勝訴し、それ以外は係争中というわけで、いわば「裁判のプロ」と言っても過言ではないからです。

 そんな裁判沙汰を数多く引きずる人物が、堂々と2024年の大統領選挙に出馬し、共和党の候補者のなかではトップを走っているのです。もちろん、アメリカの法律では、たとえ裁判で有罪判決を受け、刑務所に入っていても、大統領選挙に出馬する権利は保証されています。しかも、今回、新たに起訴されたことで、トランプ氏の支持率は鰻登りとなっています。

 トランプ氏の「これは俺を恐れる民主党のバイデン政権による陰謀だ。違法な司法介入に他ならない。アメリカを復活させるためには、俺をもう一度ホワイトハウスに送り込んでくれ」といった自己チューなメッセージに同調する熱烈なトランプ支持者が多数いるからです。

 一方のバイデン大統領ですが、今回のトランプ起訴について、「しめしめ」と、ほくそ笑んでいるようです。いくら熱心なトランプ支持者であっても、起訴され、有罪判決を受け、刑務所に収監されるような人物を「いつまでも信用しないだろう」と高を括っているに違いありません。このところ、バイデン大統領は気分が高揚しているせいか、これまで以上に奇妙な言動が目立ちます。

 たとえば、先のウクライナへの突然の訪問の際にも、ゼレンスキー大統領よりオレナ夫人とばかり急接近していました。また、全米各地を訪問していますが、やはり可愛らしい少女を見つけると、いつものように急接近を繰り返す有り様。すでに80歳を超え、アルツハイマー型認知症との噂が絶えません。周りの目は気にならないようで、本能の赴くままに美女や美少女に引きずられています。民主党内には強力な対抗馬も見当たらず、「わが意を得たり」といったところでしょうか。

 そのため、バイデン大統領自身は「史上最高齢の大統領の記録を更新できる」と妙な自信を見せています。しかし、「次の大統領はトランプかも」と、うっかり口を滑らすこともあり、周囲は気が気でないようです。

 そこに、突然、名乗りを上げたのがケネディ一族のロバート・ケネディ・ジュニアです。
環境弁護士として活動するかたわらい、自らが立ち上げた非営利の環境団体の会長も務めていす。妻である女優シェリル・ハインズから支持を取り付けた、と喜びの記者会見を行いました。

 はたして、「ケネディ神話」の復活となるのでしょうか?いまだにアメリカの政治においては、ケネディ家の名前が輝いていることは間違いありません。今回、立候補の意向を示したロバート・ケネディ・ジュニアは故ケネディ大統領の甥にあたり、故ロバート・ケネディ上院議員の息子です。確かに華麗なる政治家一族の一員ではありますが、先行きは容易ではありません。

 というのも、ケネディ・ジュニアは「奥さんの尻に敷かれっぱなし」との噂も絶えないからです。彼を有名にしたのは「コロナワクチン反対運動」の急先鋒として、「ワクチン接種は個人の自由な判断に委ねるべきで、政府が強制すべきではない」との論陣でしょう。彼が出版したコロナに関する書籍は100万部を超す大ベストセラーになりました。

 そのとき、首都ワシントンで開催された「ワクチン反対集会」で演説し、「政府がワクチン接種を強制しようとしており、我々はナチスの迫害から逃れようとしたアンネ・フランクより厳しい環境に置かれている」と述べました。この発言には各方面から批判が殺到。妻からも「夫のことを愛しているが、アンネ・フランクを引き合いに出すのは如何なものか」と、突き放されてしまい、結局、謝罪することに。

 その上、カリフォルニアの自宅で催したホームパーティの案内状には「ワクチン接種とPCR検査の事前陰性証明をお願いします」との文面が記載されていたことが公に。本人は「妻が仕切っていたので、知らなかった」と、ここでも見苦しい言い訳に終始。こんなことから、一国の最高指導者には向いていないように思えてしまいます。要は、ケネディ神話にも陰りが見えるというのが、アメリカの実態です。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

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