明治神宮外苑の再開発、3,000本伐採で都民の反対が高まる(前)
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元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授
村田 光平 氏明治神宮外苑(東京都)の再開発問題で、伐採対象の樹木は約1,000本ではなく約3,000本であることが明らかになり、都民の反対がさらに高まっている。市民の声を代弁し活動している元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授・村田光平氏に、再開発の問題点と現状について話を聞いた。
神宮外苑の再開発、伐採対象の樹木は3,000本
「神宮外苑の再開発は、東京都議会が6月5日の環境・建設委員会の請願審査で、再開発の見直しを訴えてきた日本イコモス国内委員会に参考人として出席を求めなかったため、都民の反対運動はさらに盛り上がるでしょう」──そう語るのは、明治神宮外苑(東京都、以下、神宮外苑)の再開発について、市民の声を代弁して活動してきた元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授・村田光平氏である。
村田氏は、神宮外苑の再開発事業者と「日本イコモス」(文化遺産保護に関わる国際的非政府組織ICOMOS(国際記念物遺跡会議)の日本国内委員会)との議論の場をつくるべく、6月5日の請願審査で両者を参考人として出席を求めることを検討するよう、東京都議会に提言していた。
神宮外苑は、国民の勤労奉仕や献木により1926年に完成した緑地帯である。東京都新宿区から港区にまたがる広大な敷地に、神宮球場や国立競技場などのスポーツ施設や文化施設を擁し、都民に憩いの場を提供している。第二次世界大戦後の57年以降は都市計画公園「明治公園」としての位置づけが与えられ、観光名所としても名をはせてきた。
その神宮外苑の再開発事業計画が今年2月17日に認可され、3月から本格的に始動している。事業の柱としては、(1)明治神宮第二球場を解体して跡地に新ラグビー場を建設、(2)秩父宮ラグビー場を解体し跡地に野球場と球場併設ホテル棟を新設、(3)明治神宮球場を解体し跡地を中央広場として整備、(4)聖徳記念絵画館前の軟式野球場を廃止し、会員向けのテニス場棟および絵画館前広場を建設、など。野球場棟付近に事務所棟や複合棟A、複合棟Bの高層ビルを建てることも計画されている。
神宮外苑の緑豊かな景観が損なわれる問題
この再開発により、都民の憩いの場として親しまれている神宮外苑の多くの樹木が伐採され、イチョウ並木の順調な生育が阻害されるなど緑豊かな景観に悪影響がおよぶことが懸念されている。また、都民が気軽にスポーツを楽しめる軟式球場やバッティングセンター、フットサルコート、ゴルフ練習場がなくなることも、大きな問題となっている。村田氏は、「神宮外苑の緑豊かな景観を守るためにも、明治神宮球場やラグビー場などのスポーツ施設は改修と保全で対応すべきです」と話す。
再開発で伐採対象となる樹木は、新宿区都市計画審議会(2022年1月時点)では892本と報告されていた。しかし、今年2月に事業者が新宿区に提出した伐採許可申請から、伐採される樹木の本数は約1,000本ではなく、低木も含めると約3,000本におよぶことが判明した。「伐採対象の樹木が3,000本であるにもかかわらず、中高木に限定して約1,000本としていたのは、単なる記載の誤りだとは考えにくいです。東京都の対応によっては、国の名誉に関わる問題です」(村田氏)。
(つづく)
【石井 ゆかり】
<プロフィール>
村田 光平(むらた みつへい)
1938年東京生まれ。61年東京大学法学部を卒業、外務省入省。フランスで2年語学研。分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。96年より99年まで駐スイス大使。99年より2011年まで東海学園大学教授。現在、(公財)日本ナショナルトラスト顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会顧問、東海学園大学名誉教授、天津科技大学名誉教授。著書に『新しい文明の提唱―未来の世代へ捧げる』(文芸社)、『原子力と日本病』(朝日新聞社)、『現代文明を問う』(日本語・中国語冊子)など。関連キーワード
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