建設業の「2024年問題」 2次下請以下の理解度45%未満
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建設産業専門工事業団体九州地区連合会
(一社)福岡県建設専門工事業団体連合会
会長 杉山 秀彦 氏「2024年問題」 働き方改革に関する調査
──建設産業専門工事業団体九州地区連合会(以下、建専連九州)としての現在の取り組みをお聞かせください。
杉山 働き方改革関連法の一環として、2024年4月から建設業でも適用開始となる時間外労働条件の上限適用は、建設業界全体の大きな問題です。
今年3月に上部団体の(一社)建設産業専門団体連合会(以下、建専連/岩田正吾会長)が「令和4年度 働き方改革における週休二日制、専門工事業の適正な評価に関する調査結果」を発表しました。これは、(公財)建設業福祉共済団の協力を得て、専門工事業における週休二日制の推進や技能者の処遇改善などの動向を観察することを目的に、建専連会員団体を通じて各種団体の加盟企業の協力の下、18年度から継続して実施しているものです。
今回の調査では、初めて「2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることを知っているか」というアンケートを実施し、全国の各専門工事団体所属の827社から回答を得ることができました。「内容まで知っている」と回答したのが58.0%、「聞いたことはあるが、内容はわからない」が31.7%、「知らない」が10.3%という結果となりました。驚くことに約4割が、時間外労働の上限適用についてわかっていないという状況です。請負階層で見ると、2次下請以下では「知っている」が45%を切っており、社員数10名未満では30%すら切っているのが現状で、非常に危機感を覚えています。
また、「時間外労働の上限規制が遵守できるか」については、480社から回答を得ることができました。「十分可能だと思う」が27.9%、「かなりの努力が必要だが、可能だと思う」が44.6%、「遵守するのが困難だと思う」が22.1%、「どちらともいえない」が5.4%という結果です。
「時間外労働の削減に向けて実施している取り組み」については、827社から回答を得て、最も多かったのは、「業務内容・分担・工程見直し」の46.6%、次に「とくに実施していない」が20.8%です。実施していない割合が多いのは、やはり3次下請および社員数が1人~4人の小規模企業でした。
アンケートから得られた、時間外労働の上限規制に関する意見・要望は、概ね6つに分類されます。(1)実現は困難、(2)適切な工期の設定や工期の平準化が必要、(3)建設業独自の時間外労働の上限規制を策定すべき、(4)労務単価、賃金アップが必要、(5)発注者・元請・業界全体の意識改革や徹底した指導が必要、(6)その他です。この結果は、建専連を通じて各県専連支部に共有され、その後は、各所属団体にも共有されています。早急に各企業に理解を求めていくことが重要です。
労働環境改善で職人の雇用維持へ
──職人の所得アップなど、労働環境改善に向けた取り組みなどをお聞かせください。
杉山 建専連九州では、各専門工事業者が1%でも受注金額を上げられるように、九州地方整備局や各県との意見交換会の場などで、待遇改善を求めてきました。建専連九州に所属している企業は、一丸となって適正価格の実現に取り組んでおり、適正価格の実現が職人の所得アップにつながっていくものと期待しています。
現場で働く職人たちの社会保険への加入、日給月給制から月給制への変更なども重要な課題です。企業側からすれば費用負担が増しますが、長期的な視野に立てば、新入社員の受け入れには欠かせないことですし、建専連九州では雇い主への改善を促しているところです。
また、若手職人の育成にも力を入れています。職人不足解消のためには、新たに人を入れるだけでなく、今働いている職人の離職を抑えなければなりません。そこで建専連九州では(一社)福岡経営者労働福祉協会に委託して、会員企業の新入社員向けに約1カ月半にわたる職業訓練講習を毎年4月に開催しています。そこでは、座学と実技の講習が実施されており、実技では、玉掛けや小型移動式クレーン運転、フォークリフト運転などの技能講習やフルハーネス型安全帯使用作業や足場の組立て等の、業務に関する特別教育などを実施しています。個々の企業では新入社員教育の時間を割くことが難しいこともあり、毎年10名~15名の若手職人に受講いただいています。講習開始時、いつも私が受講生に伝えているのは、「ものづくりをする人がいないと世の中は成り立ちません。自分たちが社会を支えるという気持ちをもって頑張ってほしい」ということです。
ほかにも、近隣の工業高校を訪問し、業界の説明や出前授業・技能講習を行う「学校キャラバン」や、佐賀県や長崎県、大分県などの工業高校の就職担当部署を訪問しての求人活動も行っております。
建設業には、再開発や建築物工事のほかにも、災害復旧工事などを通じて日本の国土を守るという役割があります。そういう重要な業界にどれだけの人が入ってもらえるのか、さまざまな手立てを講じていかなければなりません。高校での学校キャラバン、新人講習会、元請などとの適正価格交渉、職人の労働環境改善など、これらに積極的に取り組み、若手職人の増加や技術継承などを進めていきたいと考えています。
【内山 義之】
<プロフィール>
杉山 秀彦 (すぎやま・ひでひこ)
佐賀県生まれ。大学進学で上京。1970年に(株)杉山組(現・(株)スギヤマ)に入社。79年、34歳で代表取締役に就任。2010年に代表交代し、会長へ。03年9月、建専連九州の設立と同時に初代会長に就任。専門工事業の地位向上、待遇改善のため、複数の公職リーダーを務め、多岐にわたる活動を展開している。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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