2024年12月22日( 日 )

東久邇宮国際文化褒賞 受賞者の声(1)タイ運河プロジェクトの進捗状況

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代表取締役 中村 ニック 昇 氏

 23年7月17日、天から祝福されるような快晴と日差しが降り注ぐなか、東京・八芳園にて東久邇宮国際文化褒賞授与式が執り行われた。受賞者の1人である中村ニック昇氏は、米国建築士として40年以上、世界中でプロジェクトマネージャーを務めてきた。 中村氏が最高顧問を務めるタイ運河都市開発計画の進捗状況について、(一財) 東久邇宮国際文化褒賞記念会 総裁・代表理事で、(一財)DEVNET INTERNATIONAL代表理事でもある明川文保氏との特別対談エピソードを交えながら、振り返りたい。

2021年プロジェクト発表

 タイ王国300年の夢であるタイ運河開通にむけて、(一財)DEVNET INTERNATIONAL代表理事の明川文保氏が、タイ運河都市開発計画を発表したのは21年のことだ。全長108km×幅3km、総事業費は約5,000兆円という、壮大な構想をプレゼンした会場では、大きなどよめきが起きたと当時の関係者は振り返る。

 このタイ運河はマレー半島を横断し、東のインド洋と西の太平洋を結ぶ。海上交通が逼迫するマラッカ海峡を補うだけでなく、航路を1,200kmも短縮可能にする。時間にすると2~5日の短縮となり、船舶の燃料費や人件費等のコストカットはもちろん、海上環境の改善や、災害救助活動の効率化など、国内外に多様なメリットをもたらす。

 また、運河周辺は誘致計画が進められており、運河の両端に保税(関税を留保)区域を設け、貴金属・穀物などの国際物流および金融証券の拠点として整備するという。また国連機構の施設や領事館なども建ち並び、さまざまな人種や文化が融合した、新たな世界都市を生み出す可能性を秘めている。

進捗状況について

 このタイ運河計画は現国王ラーマ10世の認可を受けている。開通までの工程だが、工期5年、28年に開通を予定しており、現在、調査・調整・協議の最終時期にきているという。

 明川氏は「タイ王室と調整を行い、政府ではなく王室のプロジェクトとして我々DEVNET INTERNATIONALが主導することで合意しました。今後タイに会社を設立し、中村氏の指揮の下、着工に向けて準備をしていきます。資本金、役員などは2カ月後をメドに決定します。また、円滑な資金の流れをつくるために、ドイツ銀行にも協力をお願いしており、そちらも同時に進めていきます」と、進捗状況を語る。

中村氏が描くタイ運河建設

 プロジェクトの最高顧問に就任した、中村ニック昇氏は米国建築士として40年以上、さまざまなプロジェクトを成功に導き、現在も世界中の大規模事業でPM(プロジェクトマネージャー)を務めている。

 「私が日本でPMの依頼を受け始めたころ、日本の建設業は世界的に見てもかなり特異な経営方針で営まれており、いわば鎖国状態でした」と中村氏は振り返る。日常的に談合が行われ、競争原理がうまく働かない仕組みであり、海外に比べてあらゆる面で遅れていたという。偶然にも明川氏も、安倍晋太郎氏から指示を受けて、ゼネコンの旧体制が崩壊する一連の動きに深く関わっていたといい、両者は別々の視点から当時を分析をしている。

 中村氏は、アイオワ州やミシガン州の原子力発電所、サウジアラビアのジュバイル工業都市、東京国際空港、関西国際空港、NTT本社ビル、東京テレコムセンター、汐留開発、東京ミッドタウンなど、大プロジェクトを成功に導いてきた。

 「お話をいただいてから、毎日頭のなかで最適なプロジェクト遂行法を考えています。運河の建設は技術的には難しくありませんが、過去成功したプロジェクトは参考程度にしています。国政の状況や宗教、人々の意識や文化などはプロジェクトごとに違うので、その都度必要な戦略を立てます。しかし、この考え抜いた戦略はポケットのうちに秘めてこそ価値があります。闘いの前に手の内を見せないこと、そして依頼者のイメージを超えるものを見せることが私の仕事です。すべてが予定通りに進むことはありませんが、それを将棋のように読むのがPMの真髄です」と語る。

 明川氏は「中村先生には、DEVNET INTERNATIONALの理事にも就任していただきます。NY支部を設立しますので、支部長をお願いしているところです」と語り、今後の連携をより強化し、円滑にするべく動いている。

タイ運河の役割と、世界に与える影響について

 タイ運河の開通は、日本を含むアジア太平洋地域の経済社会の発展のみならず、全世界に大きく寄与する。SDGsの実現・実行で、世界共通の課題である環境問題にも貢献するだろう。ここに人種や文化が融合した、新たな世界都市が形成されれば、香港やシンガポールに続く、アジアの先進都市として存在感を放つに違いない。

 明川氏によると、すでに中国、フィリピン、インドネシア、ヨーロッパの一部の国などが運河建設に賛同しており、投資計画を立てるなど活発に動き始めたという。今後、プロジェクトが拡大し、一気に前進することもあり得る。
 アフターコロナによる混乱や戦争勃発など、世界は複雑な課題を常に抱えているが、このタイ運河の開通は、世界平和に貢献し、未来を照らす希望の光となるだろう。

【清家 麻衣子】


<プロフィール>
中村 ニック 昇
(なかむら にっく のぼる)
(株)Cosmo Link代表取締役。米国建築学会フェロー(FAIA)。1973~98年まで米国の大手総合建設業のベクテルに勤務。サウジアラビアのジュバイル工業都市、アイオワ州とミシガン州の原子力発電所、東京国際空港(羽田空港)、98 年の長野冬季オリンピックなどのプロジェクトに携わった。98 年に独立し、 2005 年までに汐留シティセンター、東京ミッドタウン、中国の連雲港市マスタープランなどのプロジェクトに携わった。工業団地、データセンター、コンドミニアム、複合施設など、さまざまな国際プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務めている。

明川 文保(あけがわ ふみやす)
山口県生まれ。DEVNET INTERNATIONAL世界総裁、(一財)DEVNET JAPAN代表理事、東久邇宮国際文化褒賞記念会代表理事。1973年山口県防府市に日本初の冷凍冷蔵庫・普通倉庫を備えた3温度対応の総合流通センター開設。岸信介元首相後援会青年部会長、安倍晋太郎衆議院議員私設特別秘書、九州・山口経済連合会(現・九州経済連合会)の国際交流委員・運輸通信委員・農林水産委員、山口大学経済学部校外講師などを歴任。

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