2024年12月23日( 月 )

NATO首脳会議、欧州大西洋地域とインド太平洋地域の同志国の結束を~アザーニュース(前)

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DEVNET JAPAN 顧問
前駐ノルウェー日本国大使
田内 正宏 氏

 Net I・B-Newsでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONAL(本部:日本)のニュースを紹介している。DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)によりその総合諮問資格を認定されている非政府組織(NGO)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は7月28日掲載の記事を紹介する。

1. NATO首脳会議の開催

    北大西洋条約機構(NATO)は、本年7月11~12日、リトアニアの首都ビリニュスで首脳会議を開いた。4月に正式メンバーとなったフィンランドを加えた31のメンバー国と、近く加盟が認められるスウェーデンならびにNATOの主要パートナーである日本、豪州、ニュージーランド、韓国およびEUの各首脳が出席した。

 ウクライナに対する支援が議論の中心であり、NATOは、ウクライナに対する複数年にわたる支援プログラムの提供、ウクライナとの協議枠組みを委員会から理事会に格上げすることとともに、加盟交渉が本格化した場合にその手続きを短縮することを決めた。欧米諸国は追加の軍事支援を発表した。しかし、ウクライナが最も関心と期待を寄せるウクライナのNATO加盟時期に関しては、「同盟国が同意し、条件が満たされたときに、同盟に参加するようウクライナを招待する立場にある」としたにとどまり 、ゼレンスキー大統領にとっては必ずしも満足のいくものではなかった 。

 NATOのストルテンベルグ事務総長(元ノルウェー首相)は、記者会見で「加盟への道筋を示す政治的なメッセージとNATO諸国からの具体的支援という点で、NATOからこれほど強いメッセージが発せられたことは過去においてなかった」とその前向きな支援を強調した。

2.欧州大西洋地域の安全保障とインド太平洋地域の安全保障は不可分

 NATO首脳会議で日本の岸田首相は、ウクライナに対する支援の表明のほか、欧州大西洋地域の安全保障とインド太平洋地域の安全保障が不可分であることを強調した。ロシアのウクライナ侵略により欧州大西洋地域のみならず、インド太平洋地域も安全保障上の影響を受けるとともに、インド太平洋地域での事態の進展が欧州大西洋の安全保障に直接影響を与えるので、両地域の民主国家が連携して対処しなければならないということである。首脳会議にはアジア太平洋地域のパートナーであるオーストラリア、ニュージーランド、韓国および日本(AP4)の首脳も出席しており、NATOとインド太平洋地域との連携の必要性を主張するには適切な場であった。

 岸田首相は、「ロシアによるウクライナ侵略などによって国際社会は歴史的転換点に直面している。欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり、ウクライナ侵略は欧州だけの問題ではない。グローバルな問題であるとの認識は、広く共有されている。本日の会合は、欧州大西洋とインド太平洋の同志国の連携をより強固なものとし、それを国際社会に示す重要な機会」と述べた。

 ロシアの侵略行為すなわち「力による現状変更」により、国際社会はその根幹が揺らぎ、国際秩序が大きく変わる可能性がある。ロシアの違法な侵略が既成事実化して、「力による現状変更」が追認されることとなると、国連憲章・国際法に基づく国際秩序は崩壊し、同じような「力による現状変更」を行うものがほかにも現れ、世界は分断と対立が継続することとなる。こうした局面において、国際社会の対応が今後どうなるかによって、国際秩序は大きく変わる。国際社会は、ロシアの武力の行使を違法な侵略として、軍隊の即時撤退とウクライナの主権領土の回復を求め続けなければならない。

 また、上述したように、ロシアのウクライナ侵攻が、国際秩序の崩壊と国際社会の分断と対立をもたらすこととなれば、国際社会全体の安全保障に大きな影響をおよぼすことは明らか。ロシアが核兵器の使用で威嚇していることも、原発攻撃や核兵器使用、その場合の核戦争への拡大の懸念などもグローバルな問題である。地理的に見ても、ロシアはユーラシア大陸の太平洋側にも存在し、我が国周辺における軍事活動を活発化させている。また、ロシアは、中国との間で、戦略的な連携を強化し、我が国周辺での中露両国の艦艇による共同航行や爆撃機による共同飛行等の共同演習・訓練を継続的に実施するなど、安全保障上の強い懸念となっている。中国のロシアに対する支持と連携が欧州に対する危機を増幅させている。

(つづく)

(後)

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