NATO首脳会議、欧州大西洋地域とインド太平洋地域の同志国の結束を~アザーニュース(後)
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DEVNET JAPAN 顧問
前駐ノルウェー日本国大使
田内 正宏 氏Net I・B-Newsでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONAL(本部:日本)のニュースを紹介している。DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)によりその総合諮問資格を認定されている非政府組織(NGO)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は7月28日掲載の記事を紹介する。
2.欧州大西洋地域の安全保障とインド太平洋地域の安全保障は不可分(続き)
NATO首脳コミュニケ(声明)は、「インド太平洋は、その地域の進展が欧州大西洋の安全保障に直接影響を与える可能性があることを考えると、NATOにとって重要である」として、両地域の安全保障上の関係を指摘し、「我々は、アジア太平洋地域の我々のパートナーであるオーストラリア、日本、ニュージーランドおよび韓国の、ウクライナ支援へのコミットメントを含め、欧州大西洋の安全保障への貢献を歓迎し、共通の安全保障上の課題に取り組むための対話・協力をさらに強化する」として 、インド太平洋地域の同志国との協力関係の強化を決めた。
また、NATO首脳コミュニケは、中国とロシアの関係の深まりと中国自体の大規模な軍備増強、核戦力の近代化と拡大、そしてその野心と強圧的な政策に対する懸念を表明するとともに、中国に対し、ロシアのウクライナ侵略戦争を非難し、いかなるかたちでもロシアの戦争遂行を支援しないよう求めた。
ただし、同コミュニケは「中国との建設的な関係に引き続きオープン」であるとしているので 、NATOとして、中国がもたらす安全保障上の課題に対処しつつ、経済面などにおける建設的関係を両立させたい意向と思われる。
3.日本とNATOの新たな協力関係
岸田首相は、NATO首脳会議の機会に、ストルテンベルグ事務総長と会談し、ロシアや中国の動向を念頭に、サイバーや宇宙も含めた安全保障上の課題に共同で対応するための新たな協力文書をまとめた。新たな協力文書「日・NATO国別適合パートナーシップ計画」は、ことしから4年間で進めるべき協力の内容を盛り込んだ。このなかでは、ロシアと中国が連携を念頭に「インド太平洋の状況はヨーロッパにも影響する」と指摘し、共通の安全保障上の課題に対応していくため協力を強化するとした。そして重点的な協力分野として、サイバー防衛や偽情報対策、宇宙の安全保障、それにAIや量子技術などを用いた「新興破壊技術」への対応や、軍縮・不拡散など16分野を明記した。
今回の日本を始めとするAP4(オーストラリア、ニュージーランド、韓国および日本)のNATO首脳会議出席は、欧州大西洋地域の同志国と日本を含むインド太平洋地域の同志国との連携を強化するうえで大変有益であった。21年にNATOは中国を西側諸国に対する安全保障上のリスクと言及し、22年に新戦略概念において中国を記載するなど、欧州の中国に対する警戒は比較的新しいが急速に警戒感のレベルを高めている。サイバー攻撃やハイブリッド攻撃が地理的な隔たりをなくした上、ロシアのウクライナ侵略でロシアを支持する姿勢を示したことは、国際社会が中国を安全保障上のリスクと認識するうえで決定的であった。
NATO東京事務所の開設については、フランスのマクロン大統領が反対し、今回のNATOサミットでは先送りになったが、NATOと我が国は、自由・民主主義・人権・法の支配の基本的価値観を共有するものであり、両者の協力関係は必然的なものである。その協力関係は今後も強化されていくべきものである。しかしながら、ロシアがNATOの東方拡大をウクライナ侵略の口実とし、中国がNATO事務所の東京事務所開設をNATOの東方拡大として反発している状況のなかでは、NATO東京事務所開設が自由で開かれた国際秩序の維持強化と地域の安定に望ましいものであることの理解をフランスはもちろん国際社会に粘り強く求めていかなければならない。
(了)
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