政策微修正では円安は是正されず
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日銀が金融政策決定会合で長短金利操作(YCC)の修正を決めた7月28日、植田和男総裁は15時半からの会見で狙いを語ったが、その直前に朝日新聞デジタルは「植田総裁は本当に『仕事人』なのか 微修正に留まった金融政策正常化」と銘打った署名記事を配信した。原真人・編集委員は、植田総裁の仕事ぶりを次のように批判したのだ。
「黒田東彦前総裁の時代の10年間、日銀はアベノミクスの主柱となる『異次元緩和』をずっと続けた。結果として政府債務の膨張と日銀の財務悪化が進み、その影響とみられる円安がエネルギー資源価格の高騰に端を発した国内インフレに拍車をかけている。金融政策を知り尽くしている学者出身の植田氏が今春、総裁に就いた意味は、当然、この異次元緩和から抜け出し、金融政策を一刻も早く正常な状態に戻すことにあるはずだ。金融市場はそういう理解で植田日銀の緒戦に注目してきた。だが4月、6月の決定会合でも植田日銀は動かず、金融市場は肩すかしを食った。3回目となる今回の決定会合でようやく一部修正に踏み切ったものの、内容的にはまったくの微修正である」
まさに正論だ。私もNETIB-Newsで「アベノミクス見直し否定の黒田日銀総裁と岸田首相」(2022年6月24日)などの記事で、黒田前総裁が安倍元首相とタッグを組んで進めた異次元緩和が行き過ぎた円安を招き、輸入物価高で国民を苦しめていると指摘。しかし、岸田政権(首相)も黒田前総裁も異次元緩和を見直さず、円安による輸入物価高は継続している。
だからこそ、今年4月に新総裁に就任した植田氏に対して「アベノミクス見直し(金融政策正常化)に踏み切るのではないか」という見方が市場で広まったが、期待外れに終わってしまったというのだ。
「微修正」に止まった結果、円安は是正されることはなかった。8月3日の日本経済新聞は、こう分析した。
「金利上昇と為替相場の円安・ドル高が同時に進行している。日銀は政策修正に踏み切ったものの、急激な金利上昇を容認しない姿勢が示され、緩和政策自体の撤回には当面踏み切らないと市場が見透かしたためだ。政策修正を通じ、円安抑止を狙ったとされる日銀の思惑とは異なる方向に進んでいる」
植田新総裁になったものの、「黒田前総裁路線と決別して金融政策正常化を断行する」という姿勢に乏しいと市場に判断され、「円安是正で輸入物価高を抑える」という日銀の狙いは空振りに終わったのだ。
先の朝日新聞が「金融政策を知り尽くしている学者出身の植田氏」と表したのは、「アカデミズムを貫いて金融政策正常化を進めるに違いない」という期待感を込めたものだろうが、実際には学者出身にありがちな線の細さ(弱々しさ)が目についてしまう。アベノミクス称賛の自民党国会議員と全面対決をしてでも正論を訴えるといった力強さに欠けように見えてしまうのだ。
(つづく)
【ジャーナリスト/横田 一】
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