中国最大の家電量販店「国美」が破産のピンチ
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負債総額7,862億円
7月14日、中国最大の家電量販店「国美零售」 (リテール)が4カ月遅れで2022年度の決算報告を発表した。年間売上高は前年比62.47%減の174億元で、純損失額が199億元(約3,872億円)であった。負債総額は2022年末時点で406億元(約7,862億円)に達している。
国美は今年4月の時点で、資金繰りが困難になってデータ照合ができず、決算発表が遅れたため、取引の一時停止を命じられていた。
売上が大幅に減った直接の理由は、供給源が絶たれたことである。国美は2022年の預金額が前年より93%も減ってわずか4億3,300万元となり、事業を支えきれなくなっていた。
品物は入らず光熱費も払えず、2022年7月から閉店ラッシュに見舞われている。2022年6月に3,825あった店舗のうち90%がこの1年間で消滅し、今や376店まで減ってしまった。
国美は2021年末から仕入先への代金支払いが遅れ始め、昨年の夏には完全に支払いが止まった。その後、販売商品は倉庫入れせずメーカーから引き当て発送するという「共享共建」モデルに切り替え、再起をはかった。
しかしこのモデルは、今年も未払いが続いたことで失敗してしまい、現在は商品の大部分がたまり続けている試作分からの出荷となっている。
そして国美は今度、加盟店から資金獲得を目指す「加盟店モデル」を打ち出している。加盟店はルールにより「国美」ブランドで家電も含めたさまざまな種類の店を開いたり、既存の国美の店を管理したりできるが、店の運営資金を負担しなくてはならない。また国美は、加盟店からライセンスを付与する店を選び、合弁会社にして株を所有する。ただし、今のところ契約に至った例はないという。
ひところ家電販売の大手だった国美だが、最近は経営が悪化の一途をたどっている。創業者である黄光裕氏が2021年に服役を終えて復帰してから大掛かりにECに手を伸ばしたが、結局は資金繰り問題に陥った。昨年何度か実施した投資の誘致交渉も実らなかった。黄氏は配下の国美電器、真快楽など複数の子会社の破産を申請したが、現時点で受理されていない。
赤字は雪だるま式に増える。2022年末現在の負債総額は406億元で、うち銀行その他の融資額が259億元、そのうち1年以内に返済が必要な分が233億元に達している。すでに多くの銀行や外部組織に対してデフォルトが発生しており、5月31日現在の未返済債務は計161億元となっている。
半年間も賃金未払い
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中国EV車市場競争が激化 75社が倒産また、現金は2023年1月時点でわずか1億7,000万元である。
このような状態により、社員の賃金や離職時の補償金などの支払いが遅れる一方で、賃金は今年7月までもう半年も未払いである。2021年末に3万2,278人だった社員数は、2022年末時点で1万2,431人まで減った。
このような苦境にあえぐ国美零售に対し、創業者である黄氏は2022年12月から2023年3月までに7億8,000万元を融資した。これにより黄氏の持株率は10.74%から25.66%に増えた。
3度に渡り中国長者番付N0.1に立った黄氏が国美零售をこれほど苦しめるとは、誰が想像しただろうか。
有名な実業家であり、国美電器を立ち上げ総裁も務めた黄氏は、一連の斬新なアイデアを打ち出したことで国美電器を家電販売のトップ級に育て上げた。
しかし黄氏は後に、資産運用の問題で逮捕され、懲役刑を受けた。中国でEコマースが脚光を浴び始めた年のことである。それ以前からオンライン事業に取り組んでいた国美であったが、結局はEC時代に「乗り遅れ」という結果になったのだ。 野心的な実業家である黄氏は出所し国美に復帰してから、「6カ月で国美を中国ビジネスの主役の座に戻す」とぶち上げた。
しかし現実は厳しいものだった。さまざまな努力を重ねた黄氏であったが、凋落に歯止めをかけることはできず、むしろ一段と悪化していった。
凋落の理由
1. マーケットの問題
中国の家電市場は、成長するにつれて参入者がどんどんと増え、競争が激化している。一方でブランドに対する消費者のこだわりが薄れ、国美の愛用者もほかの銘柄品や通販サイトの購入に走り出した。
2. 販売モデルの不徹底
かつて国美は家電販売のトップに立っていたが、Eコマースが普及し、また購入方法およびサービスに対する消費者からの要望が高まるにつれて、国美のビジネスモデルは通用しなくなっていった。
3. 資金源の不足
国美は大規模な拡張や再編をしたり、SFエクスプレスなどと提携したりしたが、こうした取り組みがさほど功を奏さず、むしろ大量の金をつぎ込んだことで資金繰り問題を招いてしまった。国美の凋落理由を本質的にいえば、もちろん黄氏の努力が足りなかったわけではなく、また黄氏の頭脳に問題があったわけでもない。中国がECの時代に突入したなか、リアル店舗に依存していたビジネスモデルが似つかわしくなくなったということであり、結局は時代に取り残されたということだ。
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