【建設業界】適正工期を宣言 国含め動向に要注目(後)
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建設業界や運送業界など一部業種については納期や工期の関係、天候に左右されることなどの事業特性が考慮され、同協定への適用は24年3月まで猶予期間が設けられていた。そして、同年4月以降の適用に向けてさまざまな動きがあった。
たとえば、同連合会では21年度会員企業に対して調査を実施。それによると、原則の上限規制の達成状況は約4割、特例の上限規制達成が約 7割と、「十分な進捗が図られているとは言い難い状況」であることが判明した。
国は同連合会と意見交換会などを実施。そのなかの申し合わせを踏まえ、「取り組みをそれぞれ進めるとともに、傘下の建設業者等に周知」を求めるなど、状況の改善に向けて強く働きかけを行っており、今回の宣言はそれを受けたものである。
このように、日本建設業連合会による今回の「宣言」は、こうした国からのプレッシャーを受けた、いわば「させられた」感が色濃いものと言える。そのため、規模に関わらず、ゼネコンのなかには今後、抜け道を探るような動きが、決して低くない頻度で行われることが考えられる。
というのも、36協定を適用し、それに基づく工期を設定すれば、工期はより長期化することが必至。人手不足が深刻な今、工期を守るために施工人員を増やせば、人件費のさらなる増大につながりかねない。
資材価格も高騰していることから、建設コストはより大きくなるため、それでは発注者、とくにコストに敏感な民間デベロッパーの理解を得ることが大変難しくなる。来年4月以降に向け、建設業界は深刻な課題を突き付けられているわけだ。
ところで、前述したように宣言は、「国や地方公共団体の発注の工事」を対象としていない。これは、公共発注の建築工事のなかには、災害復旧工事など、工期を設定しづらいケースがあるためで、それ以外は対象となる。
では、たとえば25年に開催される大阪万博はどうなるのだろうか。パビリオン建設が一向に進捗していない状況が指摘されているが、万博は国や自治体による公共事業。国家事業として国のメンツをかけるべきものであり、工期の遅れは許されない。
おそらくこれは「やむを得ない」工事に位置づけられ、最終的には突貫工事で進められるということになるに違いない。
ただ、万博工事の進捗の遅れはそもそも、国や自治体の見通しの甘さが要因である。そうであるにも関わらず、万博工事で宣言の内容が守られないようであれば、国は「身内には甘い」ということになる。
時間外労働の扱いを含め、万博工事の今後の工期や開催(工事も含む)コストに関する動向は、宣言の実効性が問われる格好の契機となるだろう。いずれにせよ、国には、適正工期確保宣言を「させた」経緯もあるだけに、ゼネコンなど元請事業者や発注者の今後の動向について監視し、強い指導力を発揮することが求められる。
(了)
【田中 直輝】
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