2024年11月22日( 金 )

回復途上にある九州のインバウンド 今後取り組むべきこととは(中)

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(株)インアウト・ツーリズム研究所
代表取締役 帆足 千恵 氏

 インバウンドに取り組むべき理由は、下記の5点が挙げられる。

(1)国内市場の限界

 08年を境に人口が減少し始め、48年には1億人を下回ると言われている。一部のシニアには旺盛な旅行、消費意欲はみられるが、介護や老後の不安から節約をする傾向がある。

(2)急成長する世界の旅行市場

 観光業は世界のGDPの10%を占め、10人に1人を雇用している。170兆円を超える巨大産業で、「燃料」「化学」の次ぐ第3位で、第4位の自動車産業より市場が大きい。

(3)高い消費力

 定住人口の減少を交流人口で補うという考え方がある。18年の日本人1人あたりの年間消費額は127万円。外国人旅行者の1回の旅行での消費額が平均15万3,029円消費であり、8人で日本人1人分を補うことができる。23年4月~6月の観光庁の訪日外国人消費動向調査では、1回あたり20万5,000円に増加している。

(4)観光は地域づくり・まちづくりの1つ

 日本、九州のどの地域をみても、自然や伝統工芸、食文化、祭りなどすばらしい資源、コンテンツを有している。住民が誇りに思う地域の価値を理解し、大切にしてくれる旅行者にきてもらうことは喜ばしく、まちの活性化につながると考えられる。

(5)観光はすそのが広い産業

 宿泊や交通事業者、旅行エージェントのみが観光業というわけでない。飲食業や小売、商店街などすべてが受け皿になる。漁業や農業など地産地消の食材や加工品、そしてそこでできる体験などすべてが地域の魅力として捉えられ、旅行者が消費するコンテンツとなる。

アフターコロナ ツーリズムの変化に対応

 コロナ後、顕著になっているツーリズムの変化について触れたい。そのポイントに対応することが、インバウンド誘客に重要になってくるからだ。

(1)個人旅行の進展

 コロナの前から、自分で航空券や宿泊施設を手配する個人旅行が主流ではあったが、さらに進展をしている。19年の中国市場をみても団体旅行は3割程度、7割は個人旅行で訪日している。自分たちの地域を知ってもらい選んでもらえるようにすることが、魅力的な観光コンテンツの発掘とともに、情報発信も大きな課題になる。

(2)サステナブルな視点を

 今後の観光では、環境、地域社会・文化に配慮し、経済的にも成長できる持続可能性が重視される。たとえば、脱炭素やペットボトルをできるだけ使わずにマイボトルを利用することに加え、地元の食材を利用した地産地消の料理を提供することや、観光による雇用の増加など地域経済の持続性の追求などがあげられる。

(3)その土地でしか得られない本物の体験を提供する、アドベンチャー・トラベル

 「アドベンチャー・トラベル」と聞くと、トレッキングなど大自然のなかでのアクティビティを思い浮かべる人が多いだろう。実際には「自然」、伝統文化や生活文化などの「異文化体験」「アクティビティ」のうち2つ以上を含むものを指す。その地域にしかないストーリー、魅力、価値を明確に把握して、地域で旅行者を迎えていくことが必要となる。

(4)多様性への対応

 「食」「性」の多様性への対応が求められている。ベジタリアンやイスラム教徒への対応は、MICEや国際的なスポーツ大会の際にはとくに必要となってくる。欧米豪、タイなどに比べて、九州、日本はまだまだこれからという位置にある。LGBTQ+といった性の多様性の対応も含めて、基礎知識を身につけ、柔軟な対応に向けた準備が求められる。

(つづく)


<プロフィール>
帆足 千恵
(ほあし・ちえ)
福岡県出身。九州大学卒業。(株)インアウト・ツーリズム研究所代表取締役。福岡のタウン情報誌、旅行情報誌などの編集を経て、2001年リクルート在籍時に台湾・香港向け九州のガイドブックを制作・発行したのを機に、インバウンドに取り組む。取材・業務で世界各地60エリアを旅した経験から、HPなどの多言語ツール作成やマーケティング、受入環境整備、プロモーション、旅行商品造成、接客研修やガイド育成などを一気通貫に行う。(一社)九州通訳・翻訳者・ガイド協会 理事、事業部長、(株)やまとごころ九州支部マネージャーを務める。福岡空港発海外情報サイト「Fly from Fukuoka」を運営。

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