2024年12月23日( 月 )

サムスン電子に何か起こっているのか(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

サムスン電子の先行きに不透明感

半導体 イメージ    韓国産業界の巨人・サムスン電子が身もだえしている。サムスン電子は韓国で圧倒的な存在感を示す企業の1つ。サムスン電子における売上高の約30%を占める半導体部門の赤字転落が、サムスン電子に暗い影を落としているのだ。さらに、30年間首位の座をキープしていたメモリ事業においても、同社はSKハイニックスの猛追を食らって、1位の座が脅かされている。加えて、長くスマホ販売台数において同社は世界トップを走っていたが、世界シェア首位の座も最近アップルに譲ることとなった。

 2位と圧倒的な差を維持するというサムスン電子の戦略になぜ異変が起こっているのか。相次ぐ首位陥落のサムスン電子に何か起こっているのだろうか。半導体は韓国輸出全体の約18%を占める稼ぎ頭だけに、韓国経済に与える影響も大きい。サムスン電子の収益は、22年第2四半期以降、期を経るごとに減少している。1月31日に発表した2023年10~12月期決算は、営業利益が前年同期比35%減の2兆8,000億ウォン(約3,100億円)だった。減益は4四半期連続となった。

 半導体事業の業績不振が響いた結果だ。それに、通年の営業利益(予測)が10兆ウォンを下回るのは、リーマン・ショックに見舞われた08年以来、15年ぶりだ。売上高は同14・6%減の258兆1,600億ウォン。サムスン電子は半導体のなかでもデータの一時保存に用いられるDRAMで約43%、NAND型フラッシュメモリでは約34%の世界トップシェアをもつ。ところが、メモリ市況の低迷で、メモリは供給過剰に陥り、価格が下落を続け、サムスン電子はメモリ部門で巨額の赤字を計上することとなったのだ。

 サムスン電子はスマホ分野においても、「ギャラクシー」スマホの大量生産体制を確立し、輸出競争力を高め、世界首位の座を維持していたが、スマホ市場が飽和したうえに、中国製品の台頭で激しい競争にさらされ、需要が伸び悩むなか、アップルにその座を明け渡した。一方、アップルはすばらしい戦略を駆使し、ついに利益率だけでなく、シェアにおいても世界首位となった。つまり、サムスン電子の業績悪化は、半導体の世界的な需要低迷が影響したほか、テレビや家電の競争激化や、スマートフォンの出荷減少などが影響しているわけだ。

30年間メモリ首位の座が揺れている

 サムスン電子にとって屈辱なのは、今まで競争相手とも思っていなかったSKハイニックスの追い上げだろう。これまで30年間世界首位を死守し、なおかつ独走してきたDRAMの世界シェアで、23年7~9月にはサムスンが38.9%、SK34.3%と、わずか4.6ポイント差にまで差が縮められた。2013年第2四半期以降の最小の差である。異変に気付いたのは昨年の初め頃からだ。チャットGPTによって生成AIのブームが起きてからだ。

(つづく)

(後)

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