北朝鮮による拉致問題の解決に欠かせない日本側の前向きな取り組み(後)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、3月1日付の記事を紹介する。残念ながら、日本が独自に入手し、アメリカはもちろん北朝鮮もが喉から手が出るほど欲しがっている朝鮮半島に眠る未開発の資源に関する情報が有効に活用されていないのです。しかも、拉致問題に限って言えば、日本政府は北朝鮮を非難糾弾するばかりで、相互協力の下で問題解決を図ろうとする姿勢が官邸からも外務省からも感じられません。
たとえば、北朝鮮が横田めぐみさんの遺骨だと日本側に引き渡したものですが、日本でDNA鑑定を行った結果、「めぐみさんのものではない」と断定。その結果を受け、当時の小泉純一郎首相と面談した金正日総書記は最側近の洪善玉氏(最高人民会議副議長)を通じて「拉致を謝罪し、関係者を処罰した。その上で、この問題の解決に当たりたい」と、3点の提案をしてきました。
第1に、問題の遺骨に関して、再度の分析を日本、北朝鮮、そして第3国の科学者による合同で行いたい。第2に、日本の拉致被害者の家族全員が北朝鮮を訪れ、被害者を一緒に探す。第3に、それでも被害者の行方が判明しない場合には、北朝鮮が国家賠償を行う。
実は、その洪氏を団長とする北朝鮮の交渉団が訪日ビザも取得し、北京から日本へ向かう飛行機に搭乗しようとした際に、搭乗が拒否されたのです。その理由は「日本の官邸からの指示だった」とのこと。こうした一連の情報は北朝鮮を2019年9月に訪問した日本の参議院協会(宮崎秀樹会長)の訪朝団に説明があったと言います。
宮崎氏曰く「北朝鮮は拉致問題で、日本にそれなりの誠意を示した。しかし、日本はまったく応えず、それどころか、訪日し日本政府と交渉しようとした北朝鮮代表団を拒絶した。これでは北朝鮮が交渉断絶を宣言したのも無理ない」。こうした、日朝間の交渉のすれ違いについて、日本外務省の中枢幹部は「横田めぐみさんの案件については全く知らない」と、いまだにけんもほろろです。
そんな中、岸田首相は来る3月20日ごろ、韓国を訪問し、ユン大統領と対北朝鮮問題を協議する「シャトル外交」を行うと表明。しかし、なぜその時期に韓国を訪問するかと問われると、たまたま大谷翔平選手の試合が予定されているので、ユン大統領と仲良く観戦もできるとの回答です。北朝鮮の金正恩総書記は元旦の能登地震へのお見舞い電報を岸田首相宛てに送ってきただけではなく、最近、日本からの帰還朝鮮人の待遇改善を指示しています。
そもそも、金正恩氏の母親は大阪生まれで1962年に北朝鮮に帰還した在日朝鮮系に他なりません。一事が万事。日本と北朝鮮の間には、歴史的、経済的にも、人的にも多くのパイプが横たわっています。そうした経緯をしっかり押さえたうえで、北朝鮮の現状や可能性にも配慮した対応をしなければ、拉致問題の解決は「絵に描いた餅」に終わりかねません。
岸田首相は「前提条件なしで、金正恩氏と面談したい」と、上から目線です。このところの支持率急落を受け、起死回生の隠し玉のように、北京ルートを通じて金正恩氏との接触を模索しているようですが、その手の内は北朝鮮にすべて見透かされています。今必要なことは、2002年の小泉訪朝の原点に戻り、日朝国交正常化に向けての真摯な協議を再開することでしょう。
(了)
著者:浜田和幸
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