2024年11月30日( 土 )

急速に生活に浸透するAI その活用は人類に幸せをもたらすのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

 2022年11月30日に無料公開された「ChatGPT」が瞬く間に世界の人々から注目を集め、すでに企業、市民を問わず多くのユーザーを獲得している。このChatGPTの実現を可能とした技術の発展、隣国韓国での活用の事例などに触れつつ、人々が今後より適切にAIを活用していくためには何が必要かを考える。

AIに勝つのは結局どの企業か

AI イメージ    今までAIの開発において先頭を走っていたのはGoogleである。ところが、ChatGPTに先を越され、Googleはそれを挽回するために必死の努力をしている。

 マイクロソフトは検索サービスにおいてGoogleに大きく差をつけられて苦戦していたが、OpenAI社に投資して連携を図っている。世界最大のショッピングモールを展開しているアマゾンも、モールで集めた膨大なデータを活用して顧客が好みそうな商品をレコメンドしてきたが、AIの研究をさらに加速させている。世界最大のIT企業であるアップルも、自社の膨大なデータを分析することにより、顧客の嗜好分析はもちろんのこと、市場が今後どのように流れているのかを予測するのにAIを活用している。

 AIをうまく活用して世界的に成長した企業として、ネットフリックスは欠かせない。ネットフリックスは1997年に創業され、もとはDVDのレンタルからビジネスをスタートしたが、2010年ごろに映像のストリーミング会社に変身を遂げている。

 ネットフリックスの創業者は大学でコンピュータ工学を専攻しており、早くからデータを有効に活用するという視点をもっていたようだ。彼はiPhoneが登場した年である07年から、ストリーミングサービスが将来主流になるだろうと見込んで、ストリーミングサービスを開始する。ストリーミング配信であるため、視聴者が動画をどこで早送りしたか、どこで繰り返し再生したか、またストップしたのはどの場面なのかなどのデータを収集できる。このようなデータをAIで分析すれば、視聴者の嗜好などが把握できるようになる。

 AIは今後ますます活用され、進化を遂げていくだろう。そのほかにも、新薬の開発、新素材の開発、半導体の設計など、AIの力を借りることで、大きく発展する分野はたくさんある。AIは人間の生活を自動運転など広範囲もに支えることになるだろう。

AIの限界とリスク

 AIは人間の補助として、労働力不足の解消や生産性向上など、さまざまなメリットがある反面、限界とリスクがあることもよく知っておく必要がある。現時点ではChatGPTにインプットされているデータは21年9月までのものであり、その後の出来事については誤った情報を提供したりする。

 また、ChatGPTを含めた生成AIはもっともらしい回答をしてくれるが、その回答が正確かどうかを判断する能力は備えておらず、人間が判断する必要がある。ほかにも、生成AIには個人情報などの保護、誤った回答が悪用される可能性、著作権の問題などの課題があるのも現実だ。今後、責任の所在を明らかにするとともに、法体制を整備していくことなどが求められるだろう。

AIで変わる人類の未来

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬 氏
日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

    AIによる技術革新が進むことによって、生活が便利になり、人類にもたらされるメリットは多くある。しかし、デジタル化を歓迎する若者がいる反面、それに戸惑う高齢者も同じように存在する。東京出張の際、受付に人がおらず、ロボットが対応してくれるホテルに泊まったことがある。画面を見ながら、自分で記入事項を入力していくが、住所の項目は日本の住所しか入力できず、苦労した経験がある。AIを使用しやすいものとすることが大事となるが、それでも人々の活用できる能力によって受けられる恩恵に差が出ることになるだろう。

 AIが発展するころでAIが人に代わって仕事をすることにより、仕事を失う人が出てくるだろう。仕事が減ったときに人間は何をするのかという問題が浮上してくる。ほか、AIが高度に発達することで、人間がAIに太刀打ちできなくなり、AIに支配されるような時代が到来することへの懸念もある。AIはいかなる場合にも人間の命令に服従しないといけないというルールづくりも早急に求められる。

 人間がAIをコントロールできなくなる事態への備えが十分であれば、AIはいろいろな場面で人間と共存することになるだろう。まず、AIと人間の役割分担について議論するのが良いだろう。今後、AIに関する倫理の議論を深め、関連の法整備を行っていくことで、人間はAIに助けられる幸せな時代を迎えることができるかもしれない。

(了)

(中)

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