武田良太氏、役職停止処分決まる~麻生氏の党内影響力低下の声
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自民党の党紀委員会は4日、派閥の政治資金パーティー裏金事件に関係した安倍・二階両派の議員ら39人の処分を決定した。
塩谷・世耕両氏は離党勧告
安倍・二階両派の主な処分者は以下の通り。安倍派(清和政策研究会)の衆参両院側のトップであった、塩谷立元文部科学大臣(衆議院)、世耕弘成前自民党参議院幹事長に対しては離党勧告が下された。離党勧告は、自民党の党則にある8段階の処分の中で2番目に重く、勧告に従わなければ、除名となる。
塩谷氏は、処分決定前に「不当に重すぎる処分で納得がいかない」「執行部による独裁的な党運営に断固として抗議する」との弁明書を党本部に提出している。
同派幹部を務めた下村博文元文部科学大臣、西村康稔前経済産業大臣には、1年間の党員資格停止、高木毅前国会対策委員長に6カ月の党員資格停止処分を科すこととした。また、萩生田光一前政調会長、山谷えり子元国家公安委員長、松野博一前官房長官は1年間の党役職停止処分が下され、杉田水脈元総務大臣政務官、衛藤征士郎元防衛庁長官は、6カ月の党役職停止となった。
二階派(志師会)では、事務総長を務めた武田良太元総務大臣、林幹雄元経済産業大臣、平沢勝栄元復興担当大臣が1年間の党役職停止処分となった。これ以外に、政治資金収支報告書への不記載が500万円以上、1000万円未満の安倍・二階両派の議員が17人戒告処分となるなど、安倍派を中心に処分が下された。
首相の処分なしに批判の声
一方で、党総裁である岸田文雄首相と二階派会長の二階俊博元幹事長は処分の対象から外された。岸田首相への処分がないことについては、国民からだけでなく、自民党内からも反発の声が上がっているが、岸田首相は、次のように主張している。
(1)個人としての不記載はない
(2)岸田派の不記載は、事務的ミスで、裏金ではない二階氏は処分の議論が出る直前に、自民党本部で会見を開き、次期衆院選に立候補しないことを表明しており、処分を免れた形である。二階氏の国土強靭化や観光政策などでの長年の貢献や独特の政局観に対し、岸田首相含め党幹部が敬意を示したともいえる。
今回の処分決定に至る自民党内の協議は、処分内容をめぐって、勢力争いが持ち込まれ、「不公平だ」「安倍派つぶしだ」との声も聞かれる。とくに、二階派の事務総長を務めた武田氏の処分内容をめぐっては、なかなか結論が出なかった。
麻生対武田の綱引き
武田氏の処分について、自民党幹部からは党役職停止とする声がほとんどであった。ところが、麻生太郎副総裁が「事務総長は党員資格停止にすべき」と主張、岸田首相などとの協議でも譲らず、党幹部からは「福岡の争いを持ち込まないでもらいたい」という声も出たという。最終的には岸田首相が役職停止という判断を下した。
安倍晋三元首相や麻生氏の力を借りて総裁の座を射止めた岸田首相は、両氏の意向を汲んだ政策を実行してきた。それをよく思わなかったのが岸田首相の前の派閥会長である古賀誠元幹事長だ。古賀氏は、地元福岡をはじめ首相の地元である広島でも、地方議員に対して政権批判を込めた講演を行うなどしていた。
岸田首相は、安倍元首相が逝去すると重しがとれたように、安倍政権下で蜜月関係にあった旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係断絶を実行し、保守層の反発が強いLGBT法を制定するなど、路線転換を図ってきた。
林芳正官房長官の起用や派閥の解散などにより、岸田首相は麻生氏との間に距離が生じ、その結果、古賀氏や、菅義偉前首相に接近している。なお、武田氏は、古賀氏や菅氏と近い関係にある。
派閥解散を二階氏に進言したのも武田氏であり、2月末の政治倫理審査会も乗り切るなど武田氏の存在感は日に日に増している。対する麻生氏は、安倍元首相が亡くなってから、岸田首相の後見人として君臨してきた。しかし、今回の武田氏の処分について、「岸田政権における麻生氏の影響力が低下した」とみる向きが永田町関係者には多い。
福岡政界における麻生対武田の構図は、全国的に知られている。また、麻生氏の意向で、福岡9区の自民党支部長の決定も保留とされたままとなっている。麻生氏に近い議員が多い福岡県内の自民党地方議員の中にも、水面下では麻生氏から離れる動きが出ているようだ。
個人的な因縁で国政を振り回すことは、自分たちの保身や勢力争いに明け暮れて国民生活を考えていないとしか国民の目には映らないだろう。問題は内閣支持率の回復に結びつくのか、また、岸田首相は解散権を行使できるのかという点だが、今回の処分が自民党内政局の都合に過ぎないとするならば、国民は到底納得しないだろう。
解散を行えるかどうかは、今月28日の3つの衆議院補欠選挙の結果をみてからになるだろうが、先行きは厳しいと言わざるを得ないだろう。
【近藤 将勝】
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