島根一区など補選全勝で勢いづく立民・泉健太代表

　与野党激突となった「島根一区補選（4月28日投開票）」で、岸田文雄首相との“応援演説対決”を制した立憲民主党の泉健太代表が勢いづいている。5月10日の記者会見では、裏金議員全員の小選挙区に対抗馬を擁立する方針を表明。次期総選挙での「小選挙区200人擁立」の目標を上方修正する可能性も示唆したのだ。

　島根一区など三補選全勝後の世論調査も好調。5月6日のJNNの世論調査では、「自公政権継続を望む」が34％に対して「政権交代を望む」が48％と上回る一方、政党支持率も自民が1.6％減の23.4%と下落傾向なのに比べて立憲は4.1％増の10.2%と差は縮まりつつあるのだ。

　岸田首相が二度も現地入りした“天王山”の島根一区補選で立憲公認の亀井亜紀子候補が競り勝ったことが、両党の明暗を分けたのは確実だ。当確後に亀井氏を直撃、岸田首相が二回も入ったことについて聞くと、こんな答えが返ってきた。

　「この保守王国でこういう、8時の時報と共に勝つことができたのは本当に画期的なことだと思います。岸田さんが二回入った上での勝利ですから、それは、裏返せば、岸田さんはいかに人気がないことが証明されたのかなと思っています」。

　続いて補選中に「島根から日本の政治を変える」と訴えていたことについても聞くと、亀井氏は「今回の結果が日本の政治を変えるきっかけになればと思います」と答えた。

　実際、補選で亀井氏は古い土建（利益誘導）政治からの脱却を訴え続けていた。選挙戦最終日の4月27日には「古い政治を一掃」のプラカードを持った支援者が何人も県庁前に集まっていたが、亀井氏は立ち並ぶプラカードを指差しながら「古い政治を一掃し、増税を止め、ここ自民王国と言われている島根から皆さんの力で政治を変えて下さい」と訴えながら、こう続けた。

「(応援に駆け付けた仲間が同じ飛行機に)『自民党議員が一杯乗っていた』と言うのです。その人たちが業界団体を回って、いわゆる業界団体の締め付けをやっている。『やっぱり自民党でなければ、大変だよ』と言って回っているわけです。それに（野党は）今まで負けて来てしまった。今度は皆さんの力で、上から上からの圧力に何とか打ち勝って、ここから島根から政治を変えて下さい。私を勝たせて下さい」。

　こう訴えて亀井氏がマイクを置くと、聴衆から「そうだ！」の声と拍手が沸き起り、選対委員長の石橋通宏参院議員が「古い政治を一掃して政治を島根から変えて参りましょう。皆さんの一票でしか政治を変えることはできません。どうかよろしくお願いします」と締め括った。

　一方、最終街宣で亀井氏の前にマイクを握った泉代表は、島根入りした岸田首相を厳しく批判していた。

「岸田総理、何か忘れてはいませんか。島根一区に入ってくるのだったら、何か大切なものを持ってくるのではないですか。何を忘れてきたのか。政治改革案です。空っぽではないですか。何も無いのになんで来たのですか。『（政治改革案は）連座制もどき、以上』。何ですか、これは。私たちは今回、自民党の不祥事で政治そのものが信頼を失うことに、本当に悔しさを感じています。『許せない。情けない。こんな政治を変えないといけない。まず変わるのは自民党だろう』とずっと言ってきた。

　去年12月に裏金問題が発覚して、もう5ケ月も経っている。5ケ月経って何が進みましたか。真相究明も進まない。処分も不十分。そして、いよいよ、この選挙があるからと言って、急ごしらえで出してきた政治改革案が、その餡が入っていないお餅になってしまっている。自民党の作った大福には餡が入っていない。こんなおかしな政治、納得がいかないですよね」

　泉代表がこう訴えると、この時も大きな拍手が沸き起こっていた。

　故・細田博之衆院議長が9回連続当選をするなど衆参議席を自民が独占する「保守王国・島根」で亀井氏が勝利した衝撃は永田町を直撃、「補選全敗の岸田首相では選挙を戦えない」という見方がさらに広がった。当然、秋の総裁選での再選が絶望的になると同時に、政権交代の可能性が一気に高まることにもなった。岸田首相との応援演説対決を泉代表が制した島根一区補選は、与野党の力関係が逆転していく転換点になるようにも見える。政治改革案が焦点となる後半国会での与野党攻防から目が離せない。

【ジャーナリスト／横田　一】