GMS盛衰に見る小売事情(前)~決断の意思が無ければ変われない
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コロナが明け、一部百貨店の業績復活がマスコミに取り上げられる。しかし、業態としての百貨店はすでにその寿命がない。それは日本もアメリカも同じだ。改めて、業態としての百貨店を見てみよう。
我が国の実態もアメリカのそれと大差はない。バブル期に12兆円だった百貨店の市場額は今やその半分の6兆円を切るところまできている。
かつて県庁所在地には必ず百貨店が街の中心部に鎮座していた。しかし、今やその雄姿は消えた。百貨店で生き残るのは一部大都市の限られた店に過ぎない。
経産省の商業統計による小売市場額は、163兆円余り、そのうち百貨店の市場規模は5.9兆円。全小売市場の3.6%あまりに過ぎない。しかも、その対象客である富裕層がこれから増えるという経済環境でもない。
業態市場額は今後も長い間、低下傾向が続くだろう。とくに、宮崎や鹿児島、佐賀といった地方都市の百貨店の健全な経営は最善の手を尽くしても望み薄だ。近い将来には、首都圏や大阪、福岡といった地方の大都市でようやくその存在を維持できるというかたちに落ち着くのだろう。クラウゼヴィッツの『戦争論』ではないが、いかなる戦術の成功も戦略ミスは補えない。業態として成長力は消えたということだ。
日本型GMS(General Merchandise Store、総合スーパー)も同じだ。セブン&アイが百貨店業態だけでなく、GMS業態の切り離しも併せて投資ファンドから突き付けられ、その対策に動き始めた。残るはイオンや広島本拠のイズミといったごく一部の企業だ。
彼らが何とか現在も旧来業態で存在する一番の理由は競争相手が消えたからだ。イズミはGMS後発、イオンはSC転換という形態リボーンでかろうじてGMSを維持している。あとから来る者は先にいた者より強いというのは歴史が示す通りだ。そうはいうものの、陳腐化したGMS業態がこのまま生き残るのは容易ではない。残存GMSにも現状維持なら業態としての先はないということだ。
かつての日本型GMS、西友やダイエーといった小売業は大きなスケールで我が国小売業を席巻した。しかし、市場の変化に沿った改革を実行できず、今や歴史に名を残すだけになった。
一方、ユニーというGMSを傘下に収めたドン・キホーテはその奔放な経営手法で好調だ。現場に権限と商品の選択、陳列などの自由裁量を認め、秩序と統制という既存業態と一線を画した手法を用いる。その売場はいわば無秩序だ。種々雑多な商品を所狭しと積み上げる。いわゆる非常識な現場経営だ。
振り返ってみれば生まれたての日本型GMSも同じような手法で途方もない成長を手にした。破天荒と無秩序が売上は二けた伸びが当たりまえといわれた時代を生んだ。
同質化が終わり、データが蓄積され、商品の絞り込みや在庫の圧縮といった堅実主導の経営が無秩序にとって代わるころ、業態の陳腐化は急伸する。それから40年、日本を代表する大手小売業の多くがその姿を消した。
その後10年、今や小売業はただモノを売る業態ではなくなっている。そうならざるを得ないのはオンラインを含む販売拠点の増大と多様な個的消費によるモノクロ消費消滅の市場だ。こうなると、カットスロートコンペティションといわれる苛烈な競争が待っている。さらに人手不足とオンライン投資、店舗設備の更新という苦難も待つ。小売業受難の時代だ。
(つづく)
【神戸彲】
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