2024年12月22日( 日 )

長崎市民の足が脱線!? 原因を調査中~長崎電気軌道(株)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

dassen 2015年11月16日に開業100周年を迎える長崎市の路面電車。その大きな節目を前に異常事態が発生した。10月11日、蛍茶屋・赤迫間を結ぶ3号系統で脱線事故が発生。赤迫方面に向かう電車が、公会堂前交差点を曲がる線路で脱線した。乗員・乗客にけがはなかったが、この事故により、一部が運休。約6万5,000人に影響を与えたとされている。

 同じ場所で2007年にも脱線が発生した。運営する長崎電気軌道(株)によると、その後、レールを変えており、定期的なメンテナンスも怠っていないという。同社は、再発防止のため、原因究明に徹する考えのようだ。事故発生から10日が過ぎた22日正午頃も現場では調査が行われており、3号系統は、大波止を経由する2号系統で代替運行を行っている。

 同社は、路面電車の運営企業では、九州唯一の私企業である。大正時代から、長崎市民の足として活躍し、原爆被害や長崎大水害といった大難も乗り越え、どこまで乗っても均一運賃で市民の暮らしに貢献してきた。売上の8割を鉄道事業が占めているが、さまざまな企画を打ち出すことで、利用者の拡大に努め、毎年、黒字経営を維持する大健闘を見せている。

 利用者増のアイディアは1日乗車券やICカードの導入といった利便性の向上に関するものだけに留まらない。他都市で廃車になった車両を購入して、実際に運行する「動く電車博物館」は、電車ファンだけではなく、レトロな車体は、歴史のまち・長崎の風情作りにも貢献している。完全予約制で即完売となるため、まだ、乗ったことがないという市民も珍しくない「ビール電車」(7月上旬~9月中旬限定)は、存在自体が都市伝説に近づいている。ビアホール風にアレンジされた車内で、車窓から黄昏の街並みを眺めつつ飲むビールは、非日常感がスパイスとなった格別の味わいと聞く。

 長崎市民にとって、その生活に欠かせないパートナーとしての活躍を望む声は強い。徹底した原因究明と再発防止に期待したい。

【山下 康太】

 

関連キーワード

関連記事