2024年06月21日( 金 )

イムズ跡にアジア2拠点目のエースホテル

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イノベーションの場を提供

 三菱地所(株)がイムズ跡地で開発を進める「(仮称)天神1‐7計画」が、5月15日に着工した。新たに誕生するビルは、オフィス・ホテル・商業機能を集約した地上21階・地下4階建の大型複合ビルとなる。建物外装には九州産材のCLTパネル(直交集成板)を採用するほか、植栽を有機的に配置することで、まちを行き交う人たちが憩いや安らぎを感じられるよう意匠が凝らされている。注目したいのが、高層階と低層階に客室やホテルレセプションなどを設ける米シアトル発のホテルブランド「エースホテル」。エースホテルの出店は、京都に続いてアジア2拠点目となる。

 1999年に米シアトルで設立されたエースホテルは、米国内を中心にホテル事業を展開。「各都市が持つ個性そのものを生かし、立地ごとに地域との調和を図る」ことで、同業他社との差別化を図っている。着工に合わせて開催されたプロジェクト発表会では、エースホテルCEOのブラッド・ウィルソン氏が登壇。エースホテルは「プレイスメーカー」「スペースメーカー」であると語り、同ホテルが目指しているのは単なる宿泊サービスの提供ではなく、出店地域において、地域住民や地域の伝統工芸品、音楽などのアートが世界各国の宿泊客からもたらされる文化と共鳴することで、新たなイノベーション創出につながる「場」を提供することだと強調した。

 エースホテルはロビーやラウンジをパブリックスペースとして開放することで、ジャンルを問わず多彩な人たちが集い、刺激し合える交流拠点としての場を宿泊客以外にも提供。クリエイターが集まる文化発信の場という、他ホテルと一線を画した地位を築いている。今回の天神1‐7計画で開業予定のエースホテルも、ラウンジやルーフトップバーなどは宿泊客以外にも開かれる。

 ブラッドCEOは福岡出店の理由に、「福岡という都市のもつエネルギーに加えて、私たちエースホテルが常に大切にしている歴史・工芸・芸術・食など豊かな文化も合わせもっていること」を挙げた。宿泊料金などのプランに関しては、「国内マーケットの動きを見ながら考えていきたい」と話した。

 また、ブラッドCEOは「日本を介してアジアを見ている」と話すなど、将来のアジア市場開拓への意欲をのぞかせた。日本におけるアジアの玄関口でもある福岡への出店は、その試金石となるだろう。

「交流の循環」目指す

用途構成 提供:三菱地所
用途構成 提供:三菱地所

 天神1-7計画の前身となるイムズは「情報受発信基地」というコンセプトの下、多くの人々から愛されてきた。その跡地で始まった本計画の開発コンセプトは「福岡文化生態系~福岡のあたらしい文化を共に創造し続ける~」としており、近年の技術革新やグローバル化、コロナ禍などによる価値観や生活様式の多様化を踏まえ、古くから対外交流の窓口として文化を育んできた福岡に相応しい、新たな「交流の循環」を生み出すことを目指すという。三菱地所の掲げるこのコンセプトに共感したというブラッドCEOは、エースホテル開業後はアートや音楽などのイベントなどを積極的に実施し、人々に賑わいを提供していくと語った。

 エースホテルは1~3階にラウンジやレストラン、ギャラリーなど、16~20階に192の客室を備える予定としている。天神1-7計画は、地下2階~地上2階の低層部分は商業フロア、3~5階および7~15階は約8,000坪(30坪から分割可能)、想定就業者数約3,000人のオフィスフロアとなる予定で、26年12月末竣工、翌27年の開業を予定している。

【若松大生】

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