元職でも現職でもない若い市長誕生への期待~立憲・野田国義氏の戦略(3)
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八女市議会の一般質問が3日午前10時から行われたが、最初に一般質問を行った牛島孝之市議が質問の残り時間数分を使って、三田村統之市長が11月に行われる市長選をめぐりどう対応するのか、進退について質問を行った。
4年前の雪辱への思い
三田村氏は「いろいろな角度から検討している」という趣旨の答弁を行ったが、その際に「世代交代」という言葉を使ったという。4選目となる前回の市長選(2020年)でも引退説が流れたが、三田村氏の強い意志もあって立候補し三つ巴の戦いを制した。
このとき、市長選に名乗りをあげていた1人が野田国義参議院議員の妻で、元県議の野田稔子氏であった。
当初は接戦と見る向きもあったが、三田村氏が過半数を獲得して圧勝した。三田村陣営は、自民・公明・社民・農政連が推薦。八女市職員労働組合の多くも現職の三田村氏を支持したほか、市議22人中17人が三田村氏についた。
野田氏は圧倒的な現職に対して、立憲民主党の一部県議などの応援を受けるなどしたがおよばなかった。地元では「夫の国義氏の意向がある」と見る向きもあった。野田氏陣営は今、このときの敗北を挽回しようと考えているのではないだろうか。
もう1人の立候補者の石橋義博氏は、市議を辞して選挙戦に臨んだ(昨年の市議選で市議に返り咲いた)。現職の財政に対する考え方への批判や経済活性化を主張した。当時は自民党の地域支部長も務めていたが推薦を得られず、一部保守系市議が応援した。
立憲・参議院はプラチナチケット
20年の市長選での構図でわかるように、地方の首長選は現職優位になりがちだ。しかし、22年の安倍晋三元首相の事件以降、中央政界の構図が一変し、権勢を誇った安倍派は事実上解体した。
物価高などからの国民の不満が高まり、岸田政権の支持率は低迷が続いている。長期政権の自民党体制を変えようという空気が広がり、4月の衆議院3補選、5月の静岡県知事選、2日の東京港区長選、いずれも野党系の候補が自公推薦候補を破った。
わずか2年で社会の空気が一変したのである。09年の政権交代時に似たような、野党に対する期待感があることは間違いない。一方で、三田村市長が「世代交代」に言及したように、若い世代に対する期待感が高まっている。
東京都港区長選を制した元区議の女性は、40代で子育て真っ最中の現役世代だ。5期20年務めた現職は、70代であった。あともう1期という思いもあっただろうが、自民の政治資金問題などのあおりを受けた。
ところで、野田氏が国政に転じてからも八女にこだわる背景について前回言及したが、再び市長選にという考えがあると地元では専らの噂になっている。
ある野党系の福岡県議は次のように語った。「参議院(福岡選挙区)の3つの枠は、立憲がもっており、プラチナチケットの面がある」。
立憲県連のなかにも、次を狙う人たちがいることは間違いない。そうした空気も野田氏は敏感に察しており、地盤の八女市を含む福岡7区から秘書を出そうとしたが、市議時代の旧統一教会との関係が露見したことや、県連内部のコンセンサスがないままの表明で、勇み足となってしまった。
八女市議会は22年12月議会において、旧統一教会による被害救済や政治との関係是正を求める意見書を全会一致で採択し、政府や衆参両院議長に送っている。よりによって、秘書が教団と接点があったというのは立場的によくない。
若手官僚への期待の声
この状況を虎視眈々と見つめているのは、野田国義氏が秘書として仕えた古賀誠元自民党幹事長なのではないだろうか。現職議員ではなくなったが、有明海沿岸道路をはじめ、インフラ整備は古賀氏の存在抜きに語れない。
八女市も旧八女市の主要部は生活道路や上下水道など充実しているが、旧八女郡地域の山間部は毎年のように災害が起きており、現在も復旧していない道路などが複数ある。そうした地域に住む人々にとっては、まだまだ「古賀先生のお世話にならなければ」との思いが強い。
次期八女市長選には経済産業省の30代の現職官僚が立候補するという話が進められており、各種団体の会合で挨拶したり、議会関係者などとの会合を行ったりしているという。地元では、期待の声が高まりつつあるようだ。現職(三田村氏)にとっても、元職(野田氏)にとっても、かなり厳しくなることは間違いない。
(了)
【近藤将勝】
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