2024年12月22日( 日 )

インドとロシアの蜜月関係:日本の出番は?

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、7月12日付の記事を紹介する。

インド イメージ    インドのモディ首相は先の総選挙の結果を受け、政権3期目に突入しました。その直後、ロシアを訪問し、プーチン大統領との間で両国の蜜月関係を世界にアピールしたものです。これまで、首相は新政権発足に当たっては近隣諸国から外交活動を始めるのが習わしでしたので、ロシア訪問は異例のこと。しかも、ウクライナ戦争を引き起こしたと国際社会からは批判や制裁を課されているロシアを最初の訪問先に選んだのは、「非同盟外交」を誇るインド式戦略が隠されているに違いありません。

 実際、インドとロシアは経済的な相互依存関係を急速に強めています。欧米諸国による経済制裁下で原油などの輸出先を確保したいロシアと安価なエネルギーを輸入したいインドの利害が一致したわけです。何しろ、インドがロシアから輸入する原油や天然ガスなど、鉱物資源の額はウクライナ戦争の前と比べ10倍以上に増加しています。直近のデータでは、金額は10兆円ほど。ある意味では、戦時下のロシア経済をインドが支えているといっても過言ではありません。ロシアからは原子力発電技術の提供や軍事産業分野での連携も加速しています。インドを訪問するロシア人観光客も急増中です。

 実は、インドの経済力は飛躍的に伸びています。本年、人口規模でも中国を抜き、世界最大となりました。しかも、平均年齢が28歳であり、少子高齢化が顕著な中国とは対照的。GDPの規模でも2025年には日本を抜き去り、世界4位となることが確実視されています。2027年には世界3位に浮上する見通しです。正に「未来の超大国」として存在感や影響力を拡大しています。

 そうした潜在力に注目し、日本企業も相次いでインド市場への参入を進めています。これまでは自動車や機械製造企業が目立っていましたが、近年は三菱UFJ、三井住友、みずほといった3大銀行グループがインド市場で攻勢をかけ始めました。2010年、インドでは日本のマイナンバー制度に相当する「アダール」が導入され、個人の身元確認が容易になり、貧困層でも銀行口座の開設が急速に広がっています。日系や現地の企業の資金需要も旺盛です。日本の3大銀行のインドでの貸出金残高も昨年末で3兆円を大きく上回り、コロナ禍以前と比べても6割強の増加を記録しています。

 とはいえ、インドには課題も山積しています。たとえば、「水問題」が深刻化しています。異常気象の影響もあり、大洪水もあれば、河川や井戸が干上がり、生活用水や農業用水にも事欠くといった危機的状況が各地で発生中です。かつてモディ首相は「2019年までにすべての家庭に水道水を届ける」と公約していました。このところ連日45度を超える熱波に見舞われているため、水の確保は至難のワザ。インド第2の都市ムンバイですら水汲みのために毎日4、5時間も費やす人々がザラにいます。

 インドでは「毎日の水汲みから解放されるのが夢」という貧しい国民が数えきれません。そのため、水をタンクで運ぶ「タンカー・マフィア」と呼ばれる悪徳業者も暗躍中です。残念ながら、モディ首相が掲げた「誰にも水を」という公約は実現されていません。先ずはこの水問題の改善、解決に協力することが日本には望まれます。

 なぜなら、日本には海水の淡水化、汚染水の浄化、水道管の敷設、維持など、さまざまな水関連の技術の蓄積があるからです。大の親日家であるモディ首相が進める「インド超大国化」に一肌脱ぐチャンスに他なりません。ロシアとは異なる視点から、「グローバル・サウス」を味方につける好機到来にしようではありませんか。


著者:浜田和幸
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