2024年12月28日( 土 )

岸田首相、9月の自民総裁選不出馬表明~退陣の時期を見計らっていたとの指摘も

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 岸田文雄首相(自民党総裁)は、14日、首相官邸で記者会見し、9月に行われる自民党総裁選に出馬しない意向を表明した。党総裁任期は9月末であり、新総裁選出後に任期満了で退任する。

■一兵卒として新総裁を支える
 岸田首相は、会見の冒頭「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、『新生自民党』を国民の前にしっかりと示すことが必要」としたうえで「そのためには透明で開かれた選挙、そして何よりも自由闊達な論戦が重要」と語り「自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くこと」と次の総裁選への不出馬を明らかにした。

 自民党総裁選について「総裁選を通じて選ばれた新たなリーダーを一兵卒として支えることに徹する」と述べたが、質疑において、後継の総裁に関しては「当然のことながら、不出馬を表明した人間が後のことについて何か申し上げることは控えるべき」と具体的な後継指名などは行わなかった。

 内閣支持率低迷の大きな要因となった政治とカネなどの問題に対しては、次のように述べた。
「この間、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐる問題や、派閥の政治資金パーティーをめぐる政治とカネの問題など、国民の政治不信を招く事態が相次いで生じた」として「被害者救済法の成立や、政治資金規正法の改正などへの対応や、再発防止策を講ずることが総理総裁としての私の責任であるとの思いで、国民を裏切ることがないよう、信念をもって臨んできた」と実績を強調。新総裁についても「一連の改革マインドが後戻りをすることのない方であってもらいたい」と釘を刺すことを忘れなかった。

 岸田首相の政治手法に批判はあるが、旧統一教会問題や政治資金問題にメスを入れたことは、評価されるべきだろう。

 また、賛否が分かれる憲法改正については「自衛隊の明記と緊急事態条項について、条文のかたちで詰め、初の発議までつなげていく必要がある」と語り、自衛隊の明記について「今月末までにこの論点整理をするよう指示し、着実に実行してまいりたい」と、引き続き憲法改正を目指していく考えを述べた。

 岸田首相が不出馬表明をしながら、改憲にこだわる背景は、自民党保守派への配慮があるとみられ、9月の総裁選においても憲法改正が1つの論点になるだろう。

■3人目のキングメーカーになるか
 岸田首相の事実上の退陣表明に対して、政界関係者は、「続投に意欲を燃やしていたのに・・・」と驚きをもって受け止めている声もある一方で、「総理は、支持率や周囲の諫言などを受け、どのタイミングで表明するか見計らっていたのでは」との指摘もあった。

 岸田首相の出身派閥・宏池会所属の藤丸敏衆議院議員(福岡7区)は、先月行われた地元福岡で行われた自民党支部の会合で「岸田総理には、ぜひキングメーカーになっていただきたい」と語り「お盆のあたりには、総理に直接伝える」とも述べていた。

 藤丸氏は、宏池会前会長の古賀誠元幹事長の元秘書で、次期総裁に林芳正官房長官を推す1人。岸田首相と疎遠な古賀氏に代わって、岸田首相とのパイプ役といわれる。今回の不出馬表明は、「自身で判断」(岸田首相)としているが、そうした周囲の声が少なからずあったことは間違いない。

 自民党内でのキングメーカーは、安倍晋三元首相の死去以後、元首相の麻生太郎氏と菅義偉氏の2人といわれる。総裁選をめぐる水面下の動きも、2人を軸に動いてきた。

 ニューヨークタイムズは、電子版の速報で「不人気な政権から脱したい自民党内の圧力に屈した」と報じたが、選挙で誰を公認候補とするかなどの強力な人事権を持つ党総裁でも、党内の支持が得られないことには継続は厳しい。

 岸田首相をキングメーカーに推す藤丸氏の発言は、麻生太郎氏のように追い込まれて政権を手放すより、影響力を残したほうが良いと示唆したもので、岸田首相に近い議員は、同様に考えているのではないか。

 一方、立憲民主党の泉健太代表は、岸田首相の不出馬表明に対し「党が危機になると総理総裁を代えて心機一転、過去を忘れてもらう手法に国民はいつまでも引っかかってはいけない」と批判したが、政治資金問題と関わりが薄い人物が総裁選の候補に押し上げられた場合、野党は厳しい状況になるとみられる。また、自民総裁選と同時期に行われる代表選次第では政権交代に向けて勢いをつける可能性もあるが、顔ぶれ次第ではむしろ後退することもあり得る。

 終戦の日を翌日に控えた8月14日に、岸田首相が事実上の退陣表明を行い、新たな政局の幕開けとなった。引き続き、総裁選の動向や野党の動きも取り上げていく。

【近藤将勝】

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