2024年08月30日( 金 )

多彩な顔持つ福岡市の湾岸(1)

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 北側が博多湾に面する福岡市──。その湾岸エリアは港湾施設やレジャー拠点のみならず、公園や住宅地など多彩な表情をもつ。また、東区のアイランドシティでは新たなまちづくりが進行するなど、さらなる発展の余地も残されている。今回はそうした福岡市の湾岸エリアについて焦点を当て、これまでの開発の経緯や今後について見ていこう。

大陸との玄関口、歴史が交差する湾岸部

 福岡市の湾岸エリアは西区、早良区、中央区、博多区、東区に跨がるが、今回はそのなかでも主要な施設などがあるエリアについて着目する。

 そもそも福岡市の湾岸エリアでは、志賀島、海の中道、糸島半島、玄界島、能古島、小呂島といった地域が玄海国定公園に指定されている。福岡市都心部からさほど離れていないにもかかわらず、豊かな自然環境が市民生活の身近にある状況は、国内の他の大都市にはあまり見られない特徴である。

 もともと、このエリアは中国や朝鮮半島に近いという立地性から、とくに博多港周辺を中心に古代から大陸との交易・外交があったことにも言及しておくべきだろう。遣隋使や遣唐使の時代には、九州の行政の中心地であった大宰府の外港として機能し、大宰府が廃れてからは日宋貿易、鎌倉時代には2度にわたる元寇なども経験した。中世には、大商人たちによる合議制で治められた日本史上初の自治都市・商業都市として繁栄したという歴史もある。こうした歴史的な経緯も、福岡市の湾岸エリアを理解するうえで重要な基礎といえる。
 なお、古墳時代の海岸線は、現在の中央区今泉あたりにまでおよんでいたとみられている。

MICEの一大拠点として発展する博多ふ頭周辺

 さて、湾岸エリアで最も広く周知されているのが、博多区築港本町・石城町、沖浜町などからなるエリアだろう。そのなかでも目を引くのが、博多ふ頭にある福岡ポートタワー(全高100m、展望室の高さは70m)だ。1964年に民間レジャー施設「博多パラダイス」のメイン施設として開業。経営不振などにより、施設は75年に福岡市に移管され、タワーは76年に「博多港PRセンター」として開館し、2007年9月にタワー1階部分に「博多港ベイサイドミュージアム」が移転して現在に至っている。

ベイサイドプレイス周辺の様子
ベイサイドプレイス周辺の様子

 同タワーは、東京タワーや名古屋テレビ塔、2代目通天閣などを手がけた内藤多仲氏の設計によるもので、同氏が手がけた6つのタワーの最後に完成したことから「タワー六兄弟の末っ子」と呼ばれることもある。博多ふ頭にはこのほか91年にオープンした「ベイサイドプレイス博多」があり、飲食店や商業施設のほか、第1ターミナル(志賀島、西戸崎、海の中道行きフェリー、壱岐・対馬行きジェットフォイル)と第2ターミナル(壱岐・対馬、五島行きフェリー)がある。なお、福岡ポートタワーを含めた一帯は「ベイサイドプレイス」と呼称されている。

博多ポートタワーから見た博多ふ頭

 博多ふ頭の東側にあるのが中央ふ頭(沖浜町)。ここには九州を代表する展示会場である「マリンメッセ福岡」や、旅客船ターミナルの「博多港国際ターミナル」がある。前者(現・A館)は94年開業で、「2023世界水泳福岡大会」の会場など、多様なイベントの会場となってきた。21年4月からは「B館」の供用も開始している。その北側にある「博多港国際ターミナル」では、韓国の釜山港と結ぶ定期航路などの発着が行われているほか、さらにその北側には中央ふ頭クルーズセンターがあり、主に不定期に寄港する豪華クルーズ船などの発着が行われ、海外に向けた福岡の海の玄関口として機能している。

 このほか、博多ふ頭・中央ふ頭の中間にあるのが、石城町の「福岡国際会議場」や、築港本町の「福岡サンパレス」「福岡国際センター」だ。これらを含めた一帯は、福岡市におけるコンベンションセンター・エリア、MICEの一大拠点となっている。

(つづく)

【田中直輝】

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