2024年10月03日( 木 )

勢いづく福岡の東部臨海エリア(4)

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工業団地や住宅地開発 駅前再開発も進む古賀市

 福岡都市圏の北東部に位置し、北は福津市、東は宮若市、南は新宮町および久山町と接している古賀市。42.07㎢の市域の主に西部エリアにおいて市街化が進行する一方で、宮若市と接する東部は犬鳴山地となっており、宮若市と直接行き来できる道路は整備されていない。97年10月の市制施行前は糟屋郡に属していた関係上、現在も広域行政などの点で糟屋郡との関係が深く、とくに新宮町と福津市との密接な関係を有している。

 豊かな自然環境や交通アクセスに恵まれた立地から、ベッドタウンや工業団地、物流拠点などの多様な発展を遂げてきたが、とくに交通の利便性は極めて高く、市内を南北に国道3号、国道495号の2本の国道のほか、主要地方道である筑紫野古賀線(福岡県道35号)が通る。さらに九州自動車道・古賀ICを擁し、移動所要時間1時間以内の距離に国際拠点港湾2港(博多港、北九州港)および重要港湾(苅田港)1港があるほか、2つの空港(福岡空港、北九州空港)もあり、陸・海・空それぞれの拠点に対しての抜群の交通アクセスを誇っている。

 こうした優れた交通利便性や地理的優位性を背景として、これまで古賀市内では多くの工業団地・物流団地が開発されてきた。その皮切りとなったのは、地域振興整備公団(現・中小企業基盤整備機構)が事業主体となって開発し、1968年度に完成した今在家工業団地(35.7ha)だ。その後も需要に応じて隣接部の拡張を行うかたちで、青柳工業団地(83年度完成、15.2ha)、鹿部工業団地(福岡食品加工団地/90年度完成、14.1ha)、三田浦工業団地(94年度完成、19.6ha)、楠浦工業団地(2000年度完成、11.1ha)などの開発を繰り返し、現在では全体として約70社の製造業・卸売業・倉庫などが集積した産業クラスターが形成されている「古賀工業団地」となっている。その一方で、古賀物流団地(14年度完成、19.0ha)や玄望園地区物流団地(19年度完成、19.2ha)、古賀青柳工業団地(20年度完成、10.4ha)など、古賀工業団地から離れたエリアでは主に物流団地の開発も順次進行。さらに本誌vol.57(23年2月末発刊)でも紹介したが、現在は市内6カ所で新たな開発が進もうとしている。

(左)今在家地区 (右)新久保南地区
(左)今在家地区 (右)新久保南地区

 国道3号沿いに位置する今在家地区(約21.1ha)では、前述の古賀工業団地を拡張するかたちで現在、市街化区域への編入および用途地域(工業地域)の決定、地区計画の決定がなされている。同地区では、隣接する工業団地と調和した産業集積を図り、著しく環境を悪化させる恐れのない製造業等の誘致を図るとともに、良好な市街地環境の形成・保全を図る計画となっている。

 九州自動車道の東側に位置する青柳大内田地区(約18.9ha)では流通・工業系を中心とした開発を進めていく計画で、22年4月に地区計画が決定。現在、造成工事が着々と進んでいる。さらに、筑紫野古賀線を挟んで古賀グリーンパーク(総合健康文化公園)に隣接する青柳釜田地区(約6.8ha)では、(株)ピエトロの新工場が立地することが決定。新工場のオープンは当初は25年秋を予定していたが、半年遅れの26年春の竣工を目指してプロジェクトが進行している。

 筑紫野古賀線の古賀インター入口交差点の北東に位置する新原高木地区(約27.9ha)では、市内でも古賀ICまでの距離が最も近い利便性を生かして、運送業・倉庫・卸売業等の立地が検討されている。ほかに工業団地系の開発では、具体的な計画地の面積は未定だが、今在家地区の南側に位置する青柳迎田地区でも、前述の今在家地区を拡張するかたちでの検討が行われている。

 そのほか、国道3号と筑紫野古賀線とに挟まれた新久保南地区では、居住機能の強化に資する開発を目指している。同地区は古賀中学校の隣接地であり、自転車利用だけでなく、徒歩でもJR古賀駅の利用が可能なエリア。開発に向けての線引きなどが終わっていないため具体的な計画地の面積は未定だが、主に子育て世代を含めた若年層を取り込んでいきたい考えで、戸建住宅のほか、住民の世代交代や新陳代謝が見込める賃貸マンションなどの開発が想定される。

 さらにこうした6地区の開発のほかに、現在注目を集めているのが、JR古賀駅東口の駅前再開発プロジェクトだ。JR古賀駅の周辺は、駅東側には市役所や市立図書館や市民体育館、リーパスプラザこが(古賀市生涯学習センター)などの公的施設が集積する一方で、駅西側の国道495号沿いには、大規模商業施設「サンリブ古賀」を始め、ディスカウントストアやドラッグストア、ホームセンターなどの商業店舗が立ち並ぶほか、駅近くの本町商店街、新町商店街の2つの商店街に中小店舗が軒を連ねている。

 こうした状況下で、ニビシ醤油(株)の本社および工場が広がる駅東口は、西口と比較して人流や賑わいの面からやや見劣りしていた。そこで古賀市は、駅東口での魅力ある都市的な賑わい空間の創出に向けて、土地の高度利用や中心市街地への都市機能の集積、定住促進等の検討をするべく、19年11月にニビシ醤油とまちづくりの協力協定を締結。21年8月には「JR古賀駅東口周辺地区まちづくり基本計画」を策定したほか、21年12月には都市基盤となる公園や道路などの具体的な整備方針を示した「JR古賀駅東口周辺地区整備基本計画」も策定された。24年度からは公園や周辺道路等の基盤整備に係る都市計画手続きに着手しており、今後、古賀駅東口の再開発が順次進んでいく見込みだ。

(左)アルファスマート千鳥駅 (右)オーヴィジョン古賀駅
(左)アルファスマート千鳥駅 (右)オーヴィジョン古賀駅

 そんな古賀市での主な分譲マンション開発を挙げると、JR千鳥駅まで徒歩6分の花見東7丁目の国道495号沿いでは、穴吹興産(株)による「アルファスマート千鳥駅」(54戸、24年3月竣工)の開発が完了。また現在、古賀駅まで徒歩6分の天神1丁目の国道495号沿いでは、エス トラストによる「オーヴィジョン古賀駅」(52戸、24年12月中旬竣工予定)の開発が進んでいる。

 新築一戸建「イデアコート」などを手がけるイデアハウス不動産(株)。同社は今回取り上げた福岡都市圏東部エリアでは、シャープで飽きのこないキューブ型のファサードデザイン(外観)と自由度の高い可変性のあるプランニングが特徴の、ライフスタイル提案型戸建分譲住宅「イデアキューブ」の供給に力を入れている。主な供給物件は以下通り。

イデアキューブ津屋崎Ⅱ
イデアキューブ津屋崎Ⅱ

    和白では、「イデアキューブ美和台」(美和台4丁目、2区画)。古賀市では「イデアキューブ古賀花見東Ⅲ」(花見東2丁目、2区画)、「イデアキューブ古賀日吉」(日吉2丁目、総区画数未定)。福津市では「イデアキューブ津屋崎Ⅱ」(津屋崎3丁目、2区画)、「イデアキューブ福津西福間Ⅲ」(西福間3丁目、2区画)、「イデアキューブ福津福間小前」(西福間1丁目、6区画)、「イデアキューブ津屋崎」(津屋崎1丁目、1区画)、「イデアキューブ福津花見の里Ⅱ」(花見の里3丁目、3区画)、「イデアキューブ福津福間南Ⅳ」(福間南5丁目、2区画)、「イデアキューブ福津福間南Ⅴ」(福間南4丁目、総区画数未定)。

(つづく)

【坂田憲治】

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