2024年10月07日( 月 )

劇的な変貌を遂げた六本松(前)

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 2009年10月に九州大学の六本松キャンパスが伊都エリアに移転完了してから、15年になる。キャンパスがあった六本松周辺エリアは学生街から、裁判所、そして大規模なマンション、商業施設が立ち並ぶ複合的な機能をもつまちへと大きく様相を変えた。現在もマンション開発などが行われ、まちの更新が進んでいるが、その一方では学生街を偲ばせる一角も残り、それらを目当てに多くの人たちが行き交っている。

学生街として発展

 今回は六本松地区のほか、草香江、谷、梅光園などの各地区について見ていく。さて、六本松の地名はその名の通り、この地に六本の松があったことが由来。その六本の松は福岡城の城下町に近いことを示す目印であり、かつてからこの地域が交通の要衝であったことを意味する。現在は福岡市地下鉄・七隈線が通っているほか、国道202号(別府橋通り)、県道557号東油山唐人線、市道の堅粕西新2号線(国体道路)、博多駅草香江線(城南線)、大濠東油山線(油山観光道路)、六本松青陵通り(六本松1665号線の愛称)などの道路がエリア内を貫いている。なお、昭和の時代までは西鉄の路面電車、国鉄の筑肥線(博多-姪浜間)もこの付近を通っていた。

 六本松周辺エリアは大正以降、学生街として発展してきた。1921年、六本松4丁目に旧制福岡高等学校が設立。同校は、49年の新制大学発足時に九州大学の一部となり、63年に九州大学教養部が置かれて以降は、同大学の一般教養教育が行われてきた。「六本松キャンパス」として親しまれ、九大生を相手にした飲み屋街などが発展するとともに、六本松1丁目にあるマンモス校「福岡大学附属大濠中学校・高等学校」の存在を含め、福岡市内の文教地区の1つとして広く福岡市民に認知されていった。

 そこから大きく様相が変わったのが、2009年。九州大学の六本松キャンパスが西区の伊都キャンパスへ移転するため閉校し、再開発が行われてからだ。

各種機能が集約化

 九大六本松キャンパス跡地(六本松4丁目)の面積は約6.5ha。10年3月に(独)都市再生機構 (UR) に売却され、北側には福岡市科学館、九州大学の法科大学院、商業施設、住宅などが入る複合施設「六本松421」(所在地の六本松4-2-1から付けられた名称)が建設された。南側には福岡高裁、福岡地裁、福岡簡易裁判所、福岡地検の司法関係施設が建設されている。北側部分は、14年2月にJR九州が落札し、その後、複合施設、分譲マンション、老人ホームが17年に完成した。

 一方で、05年2月に地下鉄七隈線(橋本駅-天神南駅間)の「六本松駅」が開業し、さらに23年3月に天神南駅-博多駅間が開業したことから、福岡市中心部へのアクセス性が高まり、かつてよりさらに利便性の高いまちへと変貌した。なお、このうち六本松421に入る福岡市科学館は、宇宙飛行士の若田光一氏が名誉館長を務めている。

シンボリックな福岡高裁などが入るビル
シンボリックな福岡高裁などが入るビル

古き良き街並みも

 このように、大きく変貌を遂げた六本松地区だが、古き良き街並みも見ることができる。長屋時代の面影を残す六本松2丁目には、かつて学生たちを相手にした飲み屋街が存在していたが、今では趣向を凝らした酒の肴を提供する名店が散在する飲み屋街が形成され、福岡の“のんべえ”たちを魅了している。また、2丁目には21年に閉店したパチンコ店「ニュークラウン」の建物がそのまま残されており、今後どのような開発が行われるのか注目される。

 1丁目は、北側に福大大濠中・高校やNHK福岡放送局、福岡縣護國神社が立ち並ぶエリアだが、その南側には古い住宅などを活用した複合テナント戸建「cobaco六本松」をはじめ、その雑多な空間を生かした特徴的な店舗が出店している。このほか4丁目には、緑とテラスが目を引くテナントエリアで「CLASSIER SWITCH」など新しい店舗が多く、六本松地区は国道202号を挟んで都会と下町の棲み分けがうまくなされている印象を受ける。また、油山観光道路沿いには、西公園の展望台でお馴染みの「今屋のハンバーガー」六本松店をはじめとする多彩な飲食店などが軒を連ねる。

(つづく)

【田中直輝/代源太朗】

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