“台湾有事”にどう対応すべきか:日米の温度差も不安定要素!
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、10月11日付の記事を紹介する。ウクライナ戦争やイスラエルによるパレスチナ攻撃が激化し、中東全体が戦争状態に突入しています。これでは台湾危機がいつ起きるとも限りません。
日本にとって生命線ともいえる台湾海峡が封鎖されることにでもなれば、日本経済は壊滅的な被害を受けることになります。ブルームバーグの推計では台湾有事の推計コストは1,440兆円で、全世界の国内総生産(GDP)の10%に相当します。
アメリカの有力シンクタンク「ランド研究所」のシミュレーションでは「台湾の現状の防衛装備品では中国の軍事侵攻にはお手上げ状態」と分析。台湾はアメリカからF-16戦闘機を購入したいと要望していますが、ウクライナからも要望が繰り返されており、双方を満足させるだけの余裕はないのがアメリカの現状です。
残念ながら、日本は政府も国民も台湾防衛に関しては具体策をもたず、他人事的な対応に終始しています。
確かに、さまざまな研究機関や団体が台湾有事に関するシミュレーションを実施していますが、防衛費獲得のための絵空事が多いのが現実です。しかも、日米や国際社会が対処しようとしても、「台湾問題は中国の国内問題」との見方も根強いため、介入のハードルは高いまま。
そもそもアメリカの台湾関係法は上院で可決成立したもので、政府の正式な承認を得たものではなく、有事の際に米軍が参入しようとすれば、その都度、議会承認が必要となります。
しかし、アメリカには台湾を守る意思はあっても、そのための能力がなく、このところ人工衛星への攻撃力を高め、GPSをかく乱しようと目論む中国には対抗できそうにありません。
そもそも、史上最悪の財政赤字に陥っているアメリカです。第2次大戦以降、国防予算を毎年増加させてきましたが、すでに限界に至っています。これまでは圧倒的な経済力や国際機軸通貨であるドルの信用力で何とか冷戦も勝利したわけですが、今後はそうした状況は望めません。
別の注意点としては、万が一、台湾が中国に組み込まれた場合の経済安全保障上の問題を認識していないことです。台湾海峡を通るシーレーンが封鎖される場合には、海外からのエネルギーや食糧への依存度の高い日本は国家存亡の危機に陥ることは火を見るよりも明らかなはず。
一方、中国はロシアによるウクライナへの軍事侵攻から多くの教訓を得ており、病院船の建造も急ピッチで進め、1日当たり7万人から15万人の負傷兵を受け入れる体制を構築中と言われています。明らかに台湾侵攻を想定した動きです。
アメリカを代表する天才投資家とも呼ばれているウォーレン・バフェット氏に至っては、台湾有事のリスク回避策として、これまで大量に保有していた半導体大手のTSMCの株をすべて売却しています。
ところが、日本では台湾有事の際には、台湾在住の日本人の避難手段が確保できないとか、石垣島など周辺地域のシェルターや輸送手段が不足している、といったレベルの問題で右往左往しているのが現実です。
台湾有事が起きるかどうかは別にして、朝鮮半島有事の可能性も否定できないわけですから、何を差し置いても、先ずは日米間の相互信頼の強化が求められます。と同時に、安倍元首相が腐心したように、ロシア、中国、北朝鮮との水面下の交渉チャンネルづくりにも取り組む必要があるはずです。
なぜなら、現在のバイデン政権はロシアと中国を最大の脅威と位置づけ、台湾を中国封じ込めの「不沈空母」にしようとしているからです。
11月の選挙でハリス政権が誕生するのか、トランプ政権が復活するのか、どちらになっても国内の分裂は危機的状況に追い込まれます。かつてのようなアメリカの強いリーダーシップは期待できません。
アメリカ発の世界恐慌すらあり得る話です。ドルや米国株の価値も失墜する可能性もあるわけで、資産価値の高い資源分野への投資を心がける必要があります。
著者:浜田和幸
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