2024年10月18日( 金 )

地方創生を掲げる石破政権の切り札となるか:Web3技術の可能性

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、10月18日付の記事を紹介する。

Web3 イメージ    衆議院選挙の真っ最中ですが、自民党を率いる石破新首相は地方創生を目玉政策に掲げています。

 総裁選挙の時から「ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)の活用を通じて、食や観光体験など地域の持つ多様なアナログの価値を世界からも称賛されるようなレベルに高め、その価値の最大化を図る」と主張していました。

 と同時に、「ネット環境の整備とデジタル化によって、都市部との情報格差ゼロの地方を創出し、遠隔教育や医療、ビジネスなどの分野における地方の人材確保を進めたい」とも語っていたものです。

 要は、国際的にも注目を集めているデジタル技術を基盤産業に位置づけ、「東京一極集中を是正し、地方の持つ潜在力を最大化させる」、そして、「地方への企業進出やスタートアップ企業を後押しするインセンティブを整える」という試みに他なりません。

 GDPの規模でも1人あたりのGDPでも、2000年には世界第2位だったものが、今や上位20位にも入れないほど凋落を続ける日本です。

 その最大の原因は、日本におけるデジタル化の遅れでした。

 つまり世界で飛躍的に進むデジタル化の流れに乗り遅れてしまったのが日本なのです。

 そのため経済的な疲弊が深刻化する地方にとっては、石破政権の唱えるデジタル化を通じた地方創生は期待がもてる分野となるでしょう。

 岸田前政権では「新たな資本主義」政策を看板に掲げていましたが、結局、何ら成果を挙げることなくお払い箱になってしまいました。

 その二の舞を演じてほしくないものです。

 とはいえ、石破氏は安全保障問題に詳しく、軍事オタクとしては有名ですが、ブロックチェーンやNFT技術については素人同様であり、具体的な政策に落とし込むには地方創生担当副大臣を務めた経験を買われデジタル大臣に任命された平将明氏に委ねることになります。

 というのも、Web3技術を活用した「地方創生2.0」政策は仮想通貨やブロックチェーンなどに詳しい平議員が石破氏に吹き込んだ政策そのものですから。

 日本はアニメやゲームの分野では世界をリードしてきました。

 今後はゲーム業界でも本格的なWeb3やブロックチェーン技術が活用される状況が生まれています。

 具体的にはステーブルコインが出てくるようになれば、メタバース空間に新たな経済圏が生まれる可能性も高まるはずです。

 そうなれば、アニメやゲーム産業で培ったノウハウがブロックチェーン技術と合体されることになり、分散型IDやデジタル政府・行政にも応用できる道が開かれることになります。

 サイバーセキュリティに関しても関心が高まっていますが、ハッカー集団から民間企業を守るニーズもあるものの、国家を背景としたサイバーテロ攻撃も頻発しており、事態は深刻さを増す一方です。

 実際、長引くばかりのウクライナ戦争においてもサイバー空間での激しい戦闘が続いており、台湾有事の可能性も間近に迫る日本としてはサイバーセキュリティに関しては最大限の備えが欠かせません。

 地方創生にとってもデジタル基盤が外部からハッキングされるような事態になれば根底が潰れることになりかねませんので。

 実は、我が国の自治体では2026年3月までに業務システムを政府クラウドへ移行する大規模なプロジェクトに着手しています。

 「自治体情報システム標準化」計画と呼ばれ、住民基本台帳、印鑑証明、個人・法人・固定資産税、介護保険などのシステムを一元化し、コストを抑え、公共サービスに関するあらゆる手続きがスマホを使えば60秒で完結できるという触れ込みで、予算は7,000億円。

 夢のような計画ですが、現実は厳しいと言わざるを得ません。

 なぜなら、多くの自治体では大幅なスケジュールの遅れが見られ、本来の目的であったコスト削減どころか、逆に予算の大幅増加が見込まれているからです。

 要の政府クラウドも見通しが立っていません。

 次々と前言や公約を翻している石破新首相のため、どこまで本気でデジタル化による地方創生を実現しようとしているのか疑問視する声が内外から聞こえています。


著者:浜田和幸
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