うきはテロワールと悠久の古代史(1)
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前うきは市長 髙木典雄 氏
福岡市から高速道路を利用して、うきは市にお越しになる皆さんが、朝倉インターを降り、朝倉大橋を渡りうきは市に入ると、空気が違う、何だかほっこりした気持ちになると言われます。景観十年、風景百年、風土千年と言われますが、うきは市には、2,000年を超える歴史、風土が息づいています。このことを「うきはテロワール※と悠久の古代史」と称して、紹介させていただきたいと思います。
※テロワール:土地のことをフランス語でテール(terre)といい、テールから派生した言葉がテロワール。フランスでは、生育地の土壌、地勢、気候など地理的条件をブランド化につなげていく言葉として使用されている。
1. うきは市の概要
北には九州最大の大河である「筑後川」と、南には屛風山とも呼ばれる「耳納連山」に囲まれ、大分県との県境に位置する福岡県うきは市は、福岡都市圏から車で一時間も満たない近距離にありながら、水と緑に恵まれ、風光明媚な自然環境、田園風景を今なお保っている、人口約2万8,000人のまちです。
うきは市には海こそありませんが、山麓部、中山間地、平坦地そして扇状地が広がる、大変起伏に富んだ地形を有しています。山麓部や中山間地には果樹園や棚田、平坦地には古い町並みや米、麦、植木等の圃場が広がっているほか、古墳や神社、仏閣など歴史・文化遺産の多い地域でもあり、まさに日本の原風景がここにあるといっても過言ではありません。
そのことを物語るように、数々の日本百選等の選定を受けています。代表的なものでは(1)1968(昭和43)年、環境庁指定の国民保養温泉(筑後川温泉・吉井温泉)、(2)85(昭和60)年、環境庁選定の日本名水百選(清水湧水)、(3)91(平成3)年、NPO法人健康と温泉フォーラム認定の名湯百選・温泉療法医がすすめる温泉(筑後川温泉・吉井温泉)、(4)95(平成7)年、林野庁選定の水源の森百選(滝のある水源の森、藤波ダム・調音の滝・魚返りの滝・斧淵の滝)、(5)96(平成8)年、文化庁選定の重要伝統的建造物群保存地区(筑後吉井 在郷町)、(6)99(平成11)年、農林水産省選定の棚田百選(つづら棚田)、(7)2006(平成18)年、農林水産省選定の疎水百選(大石用水)(8)08(平成20)年、(公社)国土緑化推進機構認定の森林セラピー基地(セラピーロード、つづら棚田・長岩の奇岩群・調音の滝)、(9)12(平成24)年、九州風景街道推進会議登録の九州風景街道(みどりの里・耳納風景街道)、(10)同年、文化庁選定の重要伝統的建造物群保存地区(新川田篭 山村集落)、(11)15(平成27)年、環境省選定の生物多様性保全上重要な里地里山(小塩地区 ほたるの里)があり、1つの自治体で10を超える百選の選定などは大変珍しいのではないかと思われます。まさに日本の原風景が残るまち、うきは市であります。
2. 「フルーツ王国」うきは
うきは市は、先ほど述べたように山麓部、中山間地・平坦地そして扇状地が広がる、大変起伏に富んだ地形を有しています。かねてから、このような地形を生かして、農作物の適地適作が行われてきました。そして現在では、農業に従事される皆さんの、たゆまぬ努力により、農業は基幹産業の1つとなっております。とくに、うきは市では、いちごに始まり、桃やブルーベリー、ぶどう、梨、柿、イチジク、キウイ…といった四季折々のフルーツが一年中収穫できます。また、ぶどうは57種類、桃は42種類、梨は20種類、柿は18種類など、それぞれの品種も多く、「フルーツ王国」としてPRに力を入れているところです。
3. うきはテロワール
このように、うきは市は、フルーツをはじめ豊富な農作物が生産されています。なぜこんなにも農業生産に適しているのか、15(平成27)年から数年かけて地方創生の取り組みの一環として、うきは市の地勢、地層、地質、気候、風土などの地理的特性に関わる学術的調査を行いました。これまでは、非常に定質的というか、「うきは市は水と緑のまちです。気候も温暖で、おいしいフルーツが採れます。そんなフルーツの里うきは市にお越しになりませんか。」という、情緒的な説明を行ってきました。しかし、これから農業も国際展開を図っていかなければならないなかで、このような説明では、なかなか消費者の皆さまの納得が得られないのではないか、もっと定量的に、データ的、科学的、数値的に、こういう数字が出るからうきは市の農作物はこんなにすばらしいのだと立証できるように、大学の先生をはじめ専門家の皆さんの参画を得て調査に努めてきたところです。
結果として、想定以上のデータを得ることができました。数多くの項目において、国内の他の農業生産地よりも良いデータを得ることができ、調査に当たっていただいた先生方から、折角の機会だから文献調査になるけど、海外とも比較してみようということになり、その結果うきは市の土地が、フランスのワインの産地、ボルドーやアルザス地方と非常に似ているということが示され、それを受けて「うきはテロワール」と名付けた新しい発想のもとで、うきは市のブランドの構築を図るとともに、「フルーツ王国」としても啓蒙・普及を図っているところです。
(つづく)
<プロフィール>
髙木典雄(たかき・のりお)
1951年8月、福岡県浮羽郡浮羽町(現・うきは市)出身。74年、福岡大学商学部2部を卒業。70年に建設省九州地方建設局(現・国土交通省九州地方整備局)に入省。94年から98年まで、建設省九州地方建設局から浮羽町助役に出向。その後、福岡国道事務所副所長や九州地方整備局調査官、九州地方整備局総括調整官などを歴任後、2012年3月に国土交通省を退職。12年7月にうきは市長に初当選し3期務めた。法人名
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