2024年12月22日( 日 )

トランプ前大統領の復活劇を支えたのはイーロン・マスクとインド人?

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、11月15日付の記事を紹介する。

ドル紙幣 札束 イメージ    トランプ氏が来年1月にはホワイトハウスの主として復活することになりました。その復活劇を支えたのは表向き世界1の大富豪とされるイーロン・マスク氏です。何しろ、200億円以上をトランプ氏の選挙費用として献金しています。

 電気自動車の「テスラ」、宇宙船の「スペースX」、そしてツイッターを買収し新たに立ち上げた「X」など、毎年110%の成長を記録し、2027年までには世界初の資産1兆ドル超えを達成する見込みです。彼は2012年に世界初の資産10億ドルを記録しましたが、その後の躍進は目覚ましく、2022年には2,220億ドルで、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏の1,770億ドルを蹴落として話題を独占したものです。

 そんなマスク氏がトランプ候補を全面的に支援したのにはワケがあります。マスク氏曰く「今のままでは、アメリカ経済は破綻する。財政赤字はアメリカ史上最悪だ。ドルへの信用も下落する一方のため、国家予算の編成を抜本からつくり直す必要がある」。

 これまで基軸通貨ドルを刷り増すことで、国家破綻を回避してきたのが代々のアメリカの政権でした。そこにくさびを打ち込もうというのがマスク氏です。トランプ氏の遊説先に同行し、派手なパフォーマンスでトランプ氏への支持を訴えたのですが、その効果は絶大でした。今後は新政権の予算編成見直し担当大臣として国家財政のあり方に大改革のメスを入れることになるでしょう。

 加えて、見逃せないのがアメリカに暮らすインド系有権者の存在です。何しろ、600万人を超えるインド人がアメリカで活躍しています。余り知られていませんが、 中国人の500万人をはるかに凌駕していることは間違いありません。

 こうした在米のインド人を味方につけることができれば、選挙戦を左右することになります。しかも、ITや金融の世界で大成功しているインド人が多いのです。

 当初は、インド人コミュニティーではインド人の母をもつハリス副大統領への期待が膨らんでいました。しかし、ハリス候補は「自分は黒人だ」と主張し、ジャマイカ人の父親の血筋をアピールしたため、インド人の支持を失うことになったのです。

 そうしたインド人の票はトランプ氏の副大統領候補になったバンス上院議員に流れました。なぜなら、バンス氏の夫人は根っからのインド人で、そのことを強く意識した発言を繰り返したからです。

 実は、マスク氏に次いで、世界第2の大富豪はインド人のゴータム・アダニ氏。日本では馴染みが薄いでしょうが、インドの不動産、港湾インフラ等の開発で大成功し、2028年には資産1兆ドルに達する見通し。

 そうしたインド系の大富豪たちが副大統領候補のバンス氏夫人のインド人ウシャさんの演説に共鳴し、トランプ支援に回ったのです。

 ベジタリアンのウシャ夫人ですが、「夫は肉とポテトが大好きでしたが、私や母親のためにインド料理をマスターし、家では美味しい食事をつくってくれています」と家族思いの夫を持ち上げています。

 バンス副大統領候補はハリス候補について「子供のいない猫可愛がり女」と揶揄し、一時ネット上では避難轟々の嵐に直面しました。ところが、3人の子供をもつウシャ夫人の臨機応変な擁護発言が効果を発揮し、バンス批判の嵐は収まったものです。

 彼女曰く「夫は皮肉っぽい発言をしましたが、彼の発言の全体を聞いていただければ、子供のいない女性を貶めるような意図は皆無であることが、誰でも分かってもらえると思います」。

 いずれにせよ、インド系であることを封印し、黒人票を得ようとしてか、「私は黒人です」発言を繰り返したハリス氏は、本来であれば熱い支援が得られたはずのインド人コミュニティーからそっぽを向かれてしまいました。

 その一方、インド人の妻やインド文化を大切にするバンス氏の人気が急上昇し、結果的にトランプ支持票を大きく伸ばしたのです。

 ハリス陣営の見せかけの黒人作戦は明らかに大失敗でした。


著者:浜田和幸
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