2024年11月18日( 月 )

「青春18きっぷ」の改悪と今後の展望(後)

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運輸評論家 堀内重人

 利用者から好評の「青春18きっぷ」は、2024年冬の発売分からルールが変更される。自動改札機が通過できるようになる半面、従来は使用日にスタンプを押す方式であったが、3日用・5日用というかたちに変更となり、連続した日しか利用できなくなる。これにより、従来であればグループで1枚の「青春18きっぷ」を使用して旅行することができなくなるなど、リタイヤした高齢者の外出促進という効果が、そがれることになる。「青春18きっぷ」は快速も含めた普通列車の普通車自由席が乗り放題になる企画乗車券として、利益率は決して高くないものの、固定層がいるため、JRにとって貴重な収入源でもある。「青春18きっぷ」が改悪される背景と今後について言及したい。

「青春18きっぷ」改悪によって予想される悪影響と類似乗車券の存在(つづき)

 (3)は、近鉄全線の一般電車が、週末の金土日か、土日月の3日間で乗り放題となるお得な企画乗車券である。利用が可能な区間は近鉄の全線であり、ケーブル線も乗り放題の対象区間に含まれるため、大阪、京都、奈良、三重、そして愛知と広い範囲が乗り放題になる。

 価格は、大人が5,000円で、子どもが2,500円である。特急に乗車するには、別途、特急券を購入すれば可能であるが、乗車日の前日までの購入しなければならない。

 大阪難波から名古屋間の大人片道運賃が2,860円であるから、この区間を往復するだけで、元が採れるというお買い得な企画乗車券である。

 (4)は、JR九州が販売する企画乗車券であり、発売日から3カ月以内に1券で1人3回または同一行程で3人までのグループが利用する場合に発売され、発売日は有効期間の開始日とする。年齢制限がないため、「青春18きっぷ」と同様に高齢者も使用することが可能である。

 販売は、JR九州の駅・九州内の主な旅行会社で実施され、近鉄の週末フリーパスのように、インターネットによる販売は、実施していない。価格は大人・子ども同額の1万1,000円であり、身障者割引などの各種割引や、他の割引との重複割引は実施されない。

 日田彦山線BRT含むJR九州を中心に、九州内の民鉄、軌道(路面電車)線の普通列車の普通車自由席の乗降が自由であるが、JR九州の普通列車の指定席に乗車する場合は、別に座席指定券を購入すれば、乗車が可能となる。

 九州新幹線やJR九州の特急列車、南阿蘇鉄道のトロッコ列車、日田彦山線BRTを除いた路線バスに乗車する場合、別に乗車券、特急券などが必要になる。また門司港レトロ観光列車の普通車の指定席乗車の場合、別途、座席指定券が必要となる。

「青春18きっぷ」の今後の在り方

みどりの窓口 イメージ    今回の「青春18きっぷ」の改悪は、抗議活動が実施されるなど、非常に評判が悪い。とくに、連続した3日および5日となるため、従来のように高齢者や女性友達がグループで旅行できなくなるだけでなく、会社員を含めた社会人も、連休が取りにくいため、利用者減少が予想され、それによる売上の減少が見込まれる。

 では「青春18きっぷ」が、廃止へ向かうのかといえば、販売開始から40年以上の歴史があり、国民に浸透していることや、JRにとっては確実な収入源でもあることから、制度などを変えて存続させる方向へ向かうと考えられる。

 その場合、参考になるのはJR九州が販売する「九州満喫きっぷ」である。販売日が利用開始日に限定されることや、駅舎の無人化が進むJR九州においては、みどりの窓口がある博多・小倉を含めた県庁所在地がある主要駅まで来なければならないなどの制約はあるが、3人グループでも使用が可能な点は、参考になる事例である。

 個人で「青春18きっぷ」を使用する場合も、購入日に乗車日を決めるという制約が生じるが、3日間であれば1日券1枚と2日券1枚とする方法や、5日券であれば1日券が3枚、2日券が1枚や、1日券が1枚に2日券が2枚とする方法も考えられる。その点は、柔軟に対応すれば良い。もちろんグループ利用の場合も、購入する際、グループのメンバーもみどりの窓口へ来るため、対応が可能となる。そして未使用の切符を金券屋へ売却したり、みどりの窓口で購入した切符をキャンセルしたりして、現金化する行為も回避できる。

 「青春18きっぷ」は利益率こそ低いものの、JRの確実な収入源となっていることは事実である。高齢者の外出促進による寝たきり防止にも貢献していることから、JR九州が販売する「九州満喫きっぷ」を参考に、今後はグループでも使いやすい企画乗車券に改良する必要があると言えよう。

(了)

(中)

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