2024年11月29日( 金 )

都市の「余白」再開発(前)

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大阪都心に誕生した広大な緑の空間

 今年9月6日、大阪市北区の梅田貨物駅跡地における再開発プロジェクトである「うめきたプロジェクト」の2期区域「グラングリーン大阪」(GRAND GREEN OSAKA)の一部が先行開業した。

グラングリーン大阪

    グラングリーン大阪は、オフィスやホテル、中核機能施設、商業施設、都市公園、住宅を有する複合開発事業であり、緑豊かな「うめきた公園」を中心に、ビジネスから観光まで幅広いニーズを担う「南街区」、イノベーティブなライフデザインを実現する「北街区」と、大きく3つのエリアに分かれている。今回先行開業したのは北街区とうめきた公園の一部(サウスパークの全面・ノースパークの一部)で、全体開業は2027年春頃を予定している。

 さまざまな機能を有するグラングリーン大阪だが、最大の特徴であり、その核として位置づけられているのが約4.5haと広大なうめきた公園だ。同公園は西日本最大のターミナルであるJR大阪駅に直結しており、大規模ターミナル駅直結の都市公園としては世界最大級の規模を誇る。駅からオフィス、中核機能などを有する民間宅地などをシームレスにつなげる役割を担うとともに、広大な芝生や噴水広場などが広がる都心のオアシス的な役割も担っている。

 大阪都心の一等地に広大な緑の空間を生み出しているうめきた公園は、敷地に対する床面積の確保などの経済効率性を重視する都市開発の観点からすれば、実に贅沢でもったいない空間の使い方をしているようにも感じられる。だが、のびのびとした開放感を感じさせる同公園には多くの人が集まり、そうした人々の居場所となるとともに、賑わいや活気を創出。それが公園周辺の施設にも、副次的に良い波及効果をもたらしている。グラングリーン大阪では今後、北街区および南街区の分譲棟などの住機能の開発も進んでいくことになるが、このうめきた公園の存在は、都心にありながら良好な環境が担保されているという、住宅販売における大きなセールスポイントにもなるだろう。

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 都市の再開発においては、本体である建物の規模や機能、入居テナントなどのほうについ目が行きがちだが、忘れてはならないのは、公開空地や都市公園などの建物と建物の緩衝帯となる「余白」の存在だ。冒頭のグラングリーン大阪におけるうめきた公園のように、「余白」の有無およびその活用法によっては、再開発全体としての価値を何倍にも高めるブースター(増幅装置)にもなり得る。

 これまで本誌で再開発について取り上げる際は、どうしても本体となる建物部分について言及することが多かったが、今回は再開発における「余白」部分に目を向け、その意義や効果について改めて論じてみたい。

「公開空地」の確保でインセンティブを付与

 一口に「余白」といっても、再開発敷地内に設けられた広場などの「公開空地」と、都市公園法によって定められた「都市公園」の2つに大別される。大まかには、前者が民間事業者による開発の一環、後者が公共インフラという位置づけであり、今回は両者の特性などを踏まえながら触れてみたい。なお、都市計画法に基づき計画決定された「都市計画道路」や、都市部を流れる「都市河川」なども、空間的な意味合いからすれば一応「余白」に該当するのだが、扱いが難しいため今回は言及を避けておきたい。

 まずは「公開空地」だが、定義としては1971年に創設された「総合設計制度」(正式名称:敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例/建築基準法第59条の2)に基づいて、ビルやマンションの敷地内に設けられた一般公衆が自由に出入りできる空間のことを指す。

 この総合設計制度とは、建築物の敷地内に一定割合以上の公開空地を有する等の条件を満たす建築物について、容積率や各種の高さ制限を特定行政庁が緩和するという制度であり、簡単にいえば、容積率緩和などのインセンティブを付与することで、開発を行う民間事業者に公開空地の確保を促す制度である。同制度によってつくられた公開空地は、一般公衆が日常自由に通行または利用できる空間でないとならないとされており、通路や植栽を整備した快適な空間とするケースが多い。なお、同制度が適用されるのは敷地面積500m2以上となっており、狭小地などの開発では無理に公開空地を確保することは求めていない。

 同制度による公開空地の確保の推進は、行政側にとっては都市計画の観点で緑化整備や空地の確保の促進につながる一方で、開発を行う民間事業者側にとっても容積率や高さ制限が緩和された大規模な建物が建てられることで、双方にとってメリットがあるものとなっている。

天神BB&博多Cで魅力的な公開空地が誕生

 現在、福岡市の都心部では「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」の2つの再開発プロジェクトが進んでいるが、いずれも更新期を迎えたビルの建替えを促すために、容積率緩和などの各種インセンティブを用意しているのが最大の特徴である。そのインセンティブである天神ビッグバンボーナスや博多コネクティッドボーナスの認定要件では、「低層部・公開空地も含めたデザイン性の高いビル」「まちに潤いを与える木陰や花、目に映える緑化の推進」「イベント利用など賑わいが生まれる魅力的な広場空間の創出」など、公開空地や緑化について言及。いかに魅力的な公開空地や緑化を提案できるかが、再開発プロジェクトにおける重要な評価ポイントの1つになっていることは間違いない。

 その結果、刷新が進んでいる数々の再開発ビルでは、竣工前のものも含めて、それぞれ個性的な公開空地を備えているケースが多い。

 たとえば天神ビッグバンの第1号となる「天神ビジネスセンター」(21年9月竣工)においては、ピクセル構造のガラスが幾重にも重なったユニークな外観のビル本体に目が行きがちだが、ビル周辺においても公開空地としてゆとりある広場や歩行空間を確保。まちに潤いを与える花や目に映える緑の創出などにも取り組んでいる。

旧大名小学校の校庭部分を整備した「福岡大名ガーデンシティ・パーク」
旧大名小学校の校庭部分を整備した
「福岡大名ガーデンシティ・パーク」

    大名小学校跡地再開発であり、九州初のラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」が入ることでも話題を集めた「福岡大名ガーデンシティ」(23年3月竣工)では、旧大名小学校の校庭部分を「福岡大名ガーデンシティ・パーク」として整備。ステージや大型ヴィジョンも併設され、多種多様な交流の場としてさまざまなイベントも開催可能でありながらも、四季折々の緑が豊かな都心の憩いの空間として生まれ変わっている。

(つづく)

【坂田憲治】

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