都市型民泊の不動産ファンド 賃貸マンション活用で成長見込む(前)
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都心部でのホテル需要が高まっている。インバウンド需要の復活で急増する訪日外国人の宿泊に加え、札幌市ではイベント開催期間中にホテル需要が急増してどこも満室になる事態が報じられている。こうした需要の増減に柔軟に対応できる、都市型民泊への注目が集まる。既存の居住用不動産を宿泊施設として利用する都市型民泊を手がけるスタートアップも登場し、それを資金的に支援する動きも顕在化している。
DBJグループが金融面でスタートアップを支援
無人施設運営ソフトや集客プラットフォームなど宿泊施設関連のサービス「StayX」を運営するmatsuri technologies(株)(東京都新宿区)は10月17日、(株)日本政策投資銀行、DBJアセットマネジメント(株)と協働し、都市型民泊運営に特化した不動産ファンドを組成したことを公表した。同ファンドは、matsuri technologiesが運営する都市型民泊の適格物件の機動的な供給拡大を支援することを目的に組成されたもの。matsuri technologiesのソフトウェア導入によりDXを推進することで、需要の変化にも柔軟に対応でき、民泊運営業務の高度化・効率化を期待している。不動産ファンドを通じた都市型民泊運営を支援することで、都心部の居住用不動産の有効活用と、インバウンドで増加する宿泊需要に対応する。
matsuri technologiesは、予約から決済までをすべてオンラインで完結し、居室清掃などの運営管理を効率的に実装できる独自開発の「StayX」を通じ、都市型民泊の運営を行うスタートアップ企業。これまで民泊施設運営において、インバウンド訪日客を中心に民泊、法人中心に長期滞在者向けの1カ月単位のマンスリーマンションを展開してきた。また、施設運営では同社が開発した5つのソフトウェアを活用することで、扱う施設数を拡大。同社によれば、ゲストの滞在は2024年上期の平均滞在日数で3.7泊と中長期滞在が多く、民泊とマンスリーを組み合わせた運用で年間稼働率80%以上を実現しているという。
「StayX」を利用することで、同じ物件に対してさまざまな用途へ対応させることが可能。たとえば、通常の賃貸マンションを、1泊単位の宿泊や1カ月単位の短期賃貸で運営できる施設とすることができるという。matsuri technologiesは、ソフトウェアによってインターネットでの集客や、リアルタイムでの在庫管理、価格調整、AIを用いた清掃員管理など、民泊ビジネスのあらゆる側面をカバーし、無人運営を可能にした。これにより、人口減少による宿泊施設での労働力不足に対応することができるとしている。また、「現地の暮らしの体験」「自炊ができる」など訪日外国人の多様な宿泊ニーズに対し、宿泊施設や滞在方法にも多様性が求められる可能性があるという。
都市型民泊が訪日需要の受け皿に
今回、不動産ファンドスキームを通じて日本政策投資銀行は、matsuri technologiesの事業拡大を後押しする。居住用不動産の有効活用と今後の観光産業の発展に貢献するものとして、今回の不動産ファンドに「特定投資業務」の一環である「DBJスタートアップ・イノベーションファンド」を活用することにした。
「特定投資業務」は、民間による成長資金の供給の促進ならびに地域経済の活性化および日本企業の競争力の強化を図るため、国からの一部出資(産投出資)を活用して、成長資金を時限的・集中的に供給する業務のこと。「DBJスタートアップ・イノベーションファンド」は、この「特定投資業務」におけるスタートアップの創出・育成、イノベーションエコシステムの構築などに向けた取り組みを推進するため設置した重点投資分野のことだ。日本政策投資銀行グループは、不動産証券化分野における投融資などの実績・ノウハウを活用し、不動産金融市場のさらなる活性化を支援するとしている。
政府は30年までに訪日外国人旅行者数6,000万人達成の目標を掲げており、訪日外国人旅行者数は今後も増加することが見込まれている。訪日外国人観光客の増加にともない、都心部を中心にさらなる宿泊需要増加や宿泊ニーズの多様化が見込まれる一方、建築資材高騰による建築コストの高まりや地価高騰、建築現場を担う人材不足もあり、都市部においてリーズナブルなホテルの建設には限界がある。今回の不動産ファンドの組成は、都市型民泊がホテル需要の一部を代替する受け皿として期待できるとの判断によるもので、宿泊分野は不動産業界からの注目度も高い。
(つづく)
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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