2024年12月02日( 月 )

型枠工の労働環境を整え魅力向上を目指す

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(有)藤川建設
代表取締役 藤川悟 氏

(有)藤川建設 代表取締役 藤川悟 氏

 主にマンション新築工事の型枠工事を手がける(有)藤川建設。長年の実績を背景に、受注基盤を確立する同社の代表取締役・藤川悟氏に、業界環境の現状や職人不足への対応策などを聞いた。

型枠大工とは

 ──御社の概要および強みについて、お聞かせください。

 藤川 当社は1977年4月に、藤川建設を創業したのが始まりです。その後、徐々に社員を増やしていき、89年7月に(有)藤川建設として法人化しました。

 現在、職人は4名、一人親方を含めれば、20名程度の下請職人が在籍しています。また、外国人技能実習生の雇用を2年ほど前から始めており、現在4名在籍しています。当社の強みは、丁寧な仕事を長年続けてきたことで、元請企業からの信頼を得られていることです。私も運搬などまだまだ現役で行っています。

 私たちの暮らしを支える多くの建物や構造物は、鉄筋コンクリートでできているものが多いですが、その鉄筋コンクリートとは鉄筋で枠を囲み、生コンクリートを流し込んで固めてつくります。その型を決める、いわゆる「鋳型」となる枠のことを「型枠」といいます。我々型枠大工というのは、その枠をつくる職人のことをいいます。

 型枠大工は、建物の躯体部分の中心的職種である「鉄筋工事」「とび・土工工事(足場)」と合わせて躯体3役とも呼ばれ、建築工事にはなくてはならない業種です。躯体3役は連携が重要となりますが、現場ごとに手順や仕様が異なることも多く、そのあたりが仕事の醍醐味ともいえます。現在、福岡都市圏に限らず建築市場は活況です。ありがたいことに、賃貸マンションの新築工事において、当社へお声がけいただくことも増えてきましたが、人員の問題ですべて請け負うことは難しく、お断りせざるを得ないケースも増えてきています。

課題は若年者採用

(有)藤川建設    ──専門工事業を含む建設業界の課題について、お聞かせください。

 藤川 課題は、やはり職人不足です。とくに専門工事業のなかでも、型枠大工は「汚い」「きつい」「頭を使う」ことで、若年者から敬遠されがちです。型枠工事は野外での仕事になるので、雨や雪など天候に関係なく取り組まなければならないので、どうしても汚れてしまいます。

 また、「きつい」というのは、我々の仕事の半分以上が「材料荷上げ」だからです。荷上げというのは、マンションの場合、上階の床(スラブ)に設置した荷上げ開口から約15kgの支柱(サポート)などの材料を上げる必要があり、物件によっては10階以上の場合もあり、材料荷上げを頻繁に行うことになります。この作業は人力で行うため、とくに夏場の暑い日などには、とても大変な作業です。この荷上げで音を上げる人も少なくありません。「頭を使う」というのは、それぞれの建物の形状に合わせて、精工に加工して型枠を組み立てなければなりません。施工図面から、柱、梁、床、壁の形状や寸法を割り出し、加工図を作成します。それに沿って、ベニヤ板・浅木を切断し、自動くぎ打ち機で型枠パネルを製作します。

職人不足への対応

(有)藤川建設    ──若年入職者および職人不足への対策をお聞かせください。

 藤川 魅力のある環境づくりが必要だと思います。魅力の1つには賃金があるでしょう。3Kといわれる建設業には、他業種より高い、少なくとも並ぶぐらいの賃金が求められると思います。そうするためにも、労務単価の向上が必要となります。安い労務単価では、いずれ職人はついてこなくなるでしょう。その結果、職人不足がさらに加速し、元請からの仕事の要請も断らざるを得なくなります。すぐに賃金を上げることは難しいですが、労務単価交渉を進め努力していきたいと思います。これだけ若年者の入職者が少ない現状では、外国人に頼らざるを得ません。今後も雇用をしていくことで、職人不足を補っていかなければならないと考えています。

 女性職人の受け入れも考えています。実は、私の長女が型枠大工として4年近く現場で働いており、嬉しくもあり大したものだとも思います。力仕事もあるとはいえ、女性でも活躍できる仕事だと思います。

 ──専門工事業業界には今後、どういったことが必要だと思いますか。

 藤川 学歴がなくてもやり方次第では、どこまでも登りつめることができます。若くても起業して、社長になりたい人もいるでしょう。その後、規模を拡大していくことも可能です。そのためには、覚悟が必要となるでしょう。加えて、職人の方々の力が不可欠です。社長1人頑張ったところで、現場で働いてくれる職人がいないと仕事ができません。職人や社員と協力し合って仕事に取り組み、より良い環境づくりをしていきたいと考えています。

 未来に残っていく建物づくりに携わることができる型枠工事大工は、私にとってはとても魅力的です。それぞれの建物に、当時の思い出があります。このような魅力も伝えていきたいと思います。

【内山義之】


<プロフィール>
藤川悟
(ふじかわ・さとる)
1949年12月生まれ、長崎県東彼杵郡出身。佐賀県嬉野市立塩田中学校を卒業後、木造大工を4年、(株)小道工務店にて20年間の型枠大工修行を経て、77年4月に藤川建設を創業。89年に(有)藤川建設を設立、代表取締役に就任した。趣味は植物鑑賞。

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事