自然とつながる「キャンプな家。」(1)
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ある家の子育て①
「あ、子育てがひと段落したんだな…」──子どもが高校生になり、ふと感じた。もちろん子どもと付き合っていくのはまだまだこの先も続くが、一通り幼少期に教えていかなければならないこと、何かと手がかかる状態、人格・体をつくる食事の必要性など、全体的に振り返ってみると、子どもが生まれて15年ほどは、育児にコミットしておきたい時間だとしみじみ感じる。下の子が今9歳。あともう少しはお節介しないといけないなと、同時に自分を奮い立たせてみる。
最近、妻がフルタイムの職場に移り、いよいよ本格的に炊事へと足を踏み入れなければならないと料理本を漁っている。「洗濯物干し」「床掃除」への参入はすでに果たし、立ち居スタイルのアイロン台に変えたことで「アイロンがけ」も我が手中に(座位スタイルのアイロン台では腰が痛すぎる…)。私の「名もなき家事」も随分、板に付いてきた。自分にとっては子育てもプロジェクトの1つ。そう考えて人生設計を固めた。「子育てと家事は両輪でセット」。だからそれを仕事の間にねじ込んでいる。
ある国の事情、フィンランド
フィンランドでは、16時を過ぎるとあっという間にオフィスから人がいなくなるという。夏になれば1カ月以上の休みを取り、散歩やジョギングで森や湖へ。天然のプールで泳ぐ。上司をファーストネームで呼び、休みや仕事のやり方をオープンに交渉する。在宅勤務も多い。それでいて社会がそれなりに回り、キラリと光る企業もあって、イノベーションで世界をリードする国の1つでもある。
2018年と19年、フィンランドは幸福度ランキングで世界一になった(世界156カ国を対象に調査/2019)。日本は18年が54位、19年が58位。トップ10のうち、半数は北欧諸国が占めた。フィンランドの1人あたりのGDPは約5万ドル(2019年、IMF)で世界16位。日本は約4万ドル(24位)だ。石油やガスといった天然自然が乏しく、気候的にも厳しいが、国土の7割は森林で豊かな水を蓄えた湖もたくさんある。だから主要な産業は、伝統的に製紙・パルプ・木材といった森林資源を生かしたものだ。他に金属、機械産業、さらに最近は電気・電子機器、情報通信も強みの1つだ。国内の市場規模は人口わずか550万人と小さく、輸出中心にならざるを得ない。フィンランドは面積では日本と大きく変わりはしないが、人口は北海道と同じ550万人ほどの小さな国。
フィンランドはヨーロッパで最も森の面積が広く、国土の74%が森で覆われている。日本もフィンランドも面積に占める森林の割合はほぼ同じだ。日本も美しい自然が溢れる国だが、どうにも自然が遠く感じられる。とくに東京などの大都市では、電車を乗り継いだり車を長時間運転したりして、やっと森や湖に行きつく。それに距離だけでなく、それを楽しむ時間はなかなか平日にはとりづらい。
約100年前まで、フィンランドはスウェーデンとロシアに支配され、ほとんどの人が小規模な農業や森林業に従事する、ヨーロッパでもかなり貧しい国の1つだった。今となっては、小国でありながら、経済を維持・成長させつつ、さまざまな指標で上位に入るフィンランド。けれど、行ってみたり住んでみたりすると、あくせくした感じや、ガツガツした感じが少なく、そこにはどことなくゆとりを感じさせる暮らしがある。フィンランド人も仕事や勉強に忙しく、家事に趣味にとやることはたくさんある。それでも「人間らしい生活ができる」とフィンランドに住んだことのある日本の友人たちが表現する通り、全体的にバランスがとれているのはなぜだろうか(参考文献『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』_堀内都喜子より)。
(つづく)
<プロフィール>
松岡秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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