林業再生と木材活用促進へ 党派や市町村を超え後押し(前)
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福岡県議会議員
林活議連福岡県連絡会議会長
井上忠敏 氏林業再生と木材活用の推進は、健全な森林環境の保全や水源の確保、生態系の維持、そして持続可能な地域社会の実現などさまざまな効果が期待でき、国や自治体はもちろん、民間でも取り組みが活発化している。そこで、政治の立場からこうした動きを後押しする、福岡県の「林活議連連絡会議」会長の井上忠敏県議会議員に、福岡県の現状や課題、今後に向けて強化すべき取り組みなどについて聞いた。
林活議連とは
──まず「林活議連」についてお教えください。
井上 「議連」というのは、党派を超えて有志の議員が集まり、さまざまな社会課題について研究や政策提言などを行う組織のことをいいます。林活議連では林業・木材産業に関する活動を行っており、正式名称を「森林・林業・林産業活性化促進議員連盟」といい、私は2023年から福岡県議連の会長を務めています。また、今年10月9日に、県ならびに県内市町村の林活議員の集まりである「福岡県連絡会議」が開催され、私はその会長に就任しました。連絡会議は1995年に南九州、その後97年に全国、そして福岡県の連絡会議が2000年に発足しました。ちなみに、県の林活議連は97年に発足しておりますので、林活議連の活動は約30年の歴史があります。福岡県議会議員の定数は87人ですが、林活議連には現在、先日の衆議院議員選挙などに立候補された4人を除く83人が所属しています。これは画期的なことで、政治の世界でも林業再生や木材活用の促進に関心が高まっていることの表れであるといえるのではないでしょうか。
──林活議連連絡会議会長になられての抱負は、いかがでしょうか。
井上 私は小郡市の生まれで、周囲は田んぼと畑に囲まれ、森林とはほぼ無縁の環境で育ってきました。しかし、99年に県議会議員となり、最初に農林水産委員会に所属したことで、林業や木材産業に携わり、林活議連にも加入し、18年に林活議連連絡会の副会長となりました。昨年、会長となったことで、改めて空気や水を育む森林の大切さを認識し、収益性の低下や人手不足など、林業の置かれる状況が依然として厳しいことを実感している次第です。
森林の保全は地球環境の保全と強いつながりがあり、林業に携わる方々はそれらに大きな貢献をしておられます。この林業が置かれる状況を改善できるよう、林活議連としてできる活動に取り組んでいく所存です。(インタビュー当日の)午前中に、朝倉市の関係者との会合がありましたが、その際にも森林の現状についての話題が上がりました。朝倉市には寺内ダムと江川ダム、小石原川ダムという3つのダムがあります。森林を適正に管理していただいているからこそ、これらのダムから飲料水や農業用水などを森林のない自治体や地域に供給していただいているわけですから、朝倉市の方々には本当に感謝しないといけないと感じています。
──林活議連では、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。
井上 毎年、九州や全国の連絡会議と歩調を合わせた、国の機関への政策提言活動を実施しています。とくに、今年から課税がスタートした国の「森林環境税」「森林環境譲与税」の創設にあたっては、九州や全国の林活議連の皆さまとともに国への働きかけを行ってきました。昨年は森林環境譲与税の譲与基準について、森林が多い市町村への配分割合が高くなるよう、見直しについて働きかけました。なお、福岡県においては08年に「福岡県森林環境税」(※1)が導入されています。市町村に税を徴収していただき、この財源を活用して荒廃した森林の再生を市町村が事業主体となって取り組んでいただくことに対して、市町村の林活議連とも協力しながら理解を求めてきました。
※1:「森林環境税」は、2024年度から個人住民税均等割の枠組みを用いて、国税として1人年額1,000円を市町村が賦課徴収するもの。「森林環境譲与税」は、市町村による森林整備の財源として、19年度から市町村と都道府県に対して、森林環境税のなかから私有林・人工林面積、林業就業者数、および人口による客観的な基準で按分して譲与されている。また、森林環境譲与税は、森林環境税および森林環境譲与税に関する法律に基づき、市町村においては、間伐などの「森林の整備に関する施策」と人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発などの「森林の整備の促進に関する施策」に充てられる。都道府県においては「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てることとされている。「福岡県森林環境税」はこうした動きに先立って、福岡県森林環境税条例によって徴収されるもので、県民税に500円加算されている。 ^
自治体に促す森林保全
──10月9日に行われた林活議連福岡県連絡会議総会には、多くの県下自治体の議員も参加されていましたが、加入状況はいかがでしょうか。
井上 福岡県には60の市町村がありますが、福岡市など19市町村(※2)の議員の皆さんが加入されています。41の自治体からは加入されていないことになりますが、これは各市町村に森林があるか、人工林が多いのか、あるいは各市町村で優先すべき課題が異なることが反映されているように思われます。ただ、昨年には苅田町が新たに加入されるなど、林業が盛んではない自治体でも林活議連が設立されています。
先ほども触れた森林環境譲与税は、森林がない市町村にも交付され、それぞれの市町村の実情に合わせ林業再生や木材利用の推進に活用できます。たとえば、公共施設の建替えに県産木材を活用する、水源となる森林のある自治体を支援するなど、さまざまな活用法があるはずです。譲与税は都市部の自治体にも交付されるのですが、東京都内の自治体が福島県や埼玉県、長野県など周辺の自治体の支援に役立てるなどといったことを聞いています。そうした事例を連絡会議では丁寧に紹介していき、加盟自治体の増加につなげていきたいと考えております。
※2:福岡市、筑紫野市、古賀市、朝倉市、那珂川市、篠栗町、須惠町、久山町、筑前町、東峰村、豊前市、苅田町、飯塚市、嘉麻市、添田町、八女市、大川市、うきは市、広川町 ^
(つづく)
【田中直輝】
<プロフィール>
井上忠敏(いのうえ・ただとし)
1947年、福岡県小郡市生まれ。福岡大学・法学部卒。古賀誠前衆議院議員の公設第一秘書を経て、99年に福岡県議会議員に初当選。現在7期目。2015年5月14日から16年5月20日まで県議会議長(第65代)を務めた。福岡県林活議連会長、林活議連九州連絡会議副会長などを務める。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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