2024年12月16日( 月 )

ドルの終わりは近い?!トランプ次期大統領はドルを救えるのか?

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、12月13日付の記事を紹介する。

ドル イメージ    アメリカでは間もなくトランプ新政権が発足しますが、その先行きは厳しいものと言わざるを得ません。これまで、「ドル」という強力な国際基軸通貨を握ることによって、必要なものを世界中からいくらでも調達できるということで、アメリカは世界を支配下に置いてきました。ところが、「グローバル・サウス」の国々を中心に「いくらドルをため込んでいても、ある日突然、紙くず同然になるかもわからない」との気づきが生まれたのです。サウジアラビアが先鞭をつけました。

 「石油を売っても代金はドルではなく、裏付けのある金(ゴールド)とか、資源との交換というかたちでないとダメだ。あるいはビットコインのような転換が容易にできるような仮想通貨でないと受け取れません」と言い始めたのです。これはアメリカにとっては寝耳に水の出来事でした。要は、通貨をめぐる暗闘は激化するばかりです。新興国の間では新たな貿易の決済システムを求める声が日増しに大きくなっています。

 一時期、ドルの保有額で、日本を抜いて世界1の座を占めていた中国は、このところドルの保有額を急速に減らし始めました。アメリカの先行きに疑問を感じているためと思われます。このままでは、金融の「グレート・リセット」が起きるでしょう。

 BRICSのロシア、ブラジル、中国なども新興国に働きかけ、アメリカ離れの動きを加速させています。日本はアメリカとの同盟関係を重視し、ドルや米国債を買い支えていますが、このままのアメリカ頼み一辺倒では「こんなはずではなかった」と臍(ほぞ)を嚙むことになりかねません。

 何といっても、アメリカの国家戦略を支えてきたのはドルという武器でした。その「頼みの綱」とも言うべき通貨・ドルの効力が怪しくなってきているのです。当然でしょうが、トランプ次期大統領もそのことを懸念しています。

 そのため、「アメリカを再び偉大な国にする」とのスローガンを掲げ、アメリカに挑戦しようとしている中国を押さえつけようと、関税強化をはじめ、あの手この手を繰り出そうとしているわけです。と同時に、1月20日の大統領就任式に習近平国家主席を招待するなど対中融和策を模索しています。中国との全面対決ではなく、お互いに共存共栄を図る別ルートを開拓しようというわけです。

 こうした「トランプ砲」を株式市場や投資家は好感していますが、どこまで効果があるのか、現時点では余談を許しません。もし、中国とのディールがうまく行かなければ、中国からの輸入品に高関税が課せられ、結果的にアメリカ国内ではインフレがますます広がることは避けられません。となれば、アメリカ国民の間では不平不満が高まり、社会の不安定化が一層深刻化することになりかねません。

 トランプ氏の大統領選を勝利に導いた立役者のイーロン・マスク氏曰く「今のままでは、アメリカ経済は破綻する。財政赤字はアメリカ史上最悪だ。ドルへの信用も下落する一方のため、国家予算の編成を抜本からつくり直す必要がある」。

 これまで国際基軸通貨・ドルを刷り増すことで、国家破綻を回避してきたのがアメリカでした。そこにくさびを打ち込もうというのがマスク氏です。トランプ氏の遊説先に同行し、派手なパフォーマンスでトランプ氏への支持を訴えたのですが、その効果は絶大でした。選挙中に狙撃され、危うく一命を取り止めたトランプ氏を「史上最強のリーダー」と持ち上げ、トランプ氏の信頼を勝ち取ったものです。新政権の下では、新設される「政府効率化省」のトップとして国家財政の在り方に大改革のメスを入れることになるでしょう。

 いわゆる「影の政府」とも揶揄される「ディープステート」を排除しようとの目論見ですが、どこまで成功するかは見通せません。いずれにせよ、2025年にはアメリカはじめ世界が混乱に向かうということを想定し、対応策を事前に講じておく必要があります。


著者:浜田和幸
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