2024年12月05日( 木 )

隠蔽・押し付け 謝罪会見に映った企業体質~三井住友建設

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発覚後1カ月 ようやく謝罪

ダウンロード (19)建設業界の重層構造や納期やコストのプレッシャーについての報道が始まり、杭工事業者の意見がメディアで報道されるようになり、元請の責任問題もクローズアップされるようになった。そして、11月11日、三井住友建設が問題発覚以降、初めて会見した。そのなかで、工事全体の管理責任を認めて謝罪したが、施工ミスの責任は、下請の旭化成建材にあるとの主張を繰り返した。三井住友建設の永本芳生副社長は「杭工事の不具合とデータ流用を見抜けなかったことが最大の責任」と述べた。しかし業界関係者からは、「ゼネコンが杭工事(その他も含め)の現状を知らないわけがない」という声がほとんど。杭の長さが足りない場合、様々な追加コストが発生してくる。さらには納期も迫る。不具合が生じても、下請はゼネコンの現場監督には言えない。そして、下請が言ってこないこともゼネコンは知っているのだ。

 また「旭化成建材を信頼していたが、裏切られた」と述べたほか、元請の管理責任を問われると、「管理体制に落ち度はなかった。試験的に打つ杭に立ち会い、残りは施工報告書で確認すればよいとする国交省の標準仕様書に沿った対応だった」としたが、現場で杭打ち工事をどれだけチェックしていたかについては明らかにしていない。

 会見を見た人には、どれだけのことが伝わったのだろうか。同社経営陣は説明責任を十分に果たさず、自社の責任問題が報道され始めた。「そろそろ謝罪しておこう」という意味合いにしか取ることができない。本来ならば、10月20日の旭化成建材の会見に同席し、工事の工程を説明しながら、どの部分で不具合が起きたのか。そして、今後はどのように再発防止を行うかまで、説明すべきところである。そういう意味では、この会見で全国に伝わってしまったものは、下請への責任の押し付け、自社の責任逃れだけであろう。この会見を見て、怒りに震えた下請業者は少なくないだろう。
隠蔽、押し付け体質は変わらず
 同社を知る、業界関係者は次のように語る。「スーパーゼネコンにしろ、地場ゼネコンにしろ、現場担当者(所長)によって大きく現場の雰囲気も変わります。何十年も生き残っている会社ですから、それぞれに技術力は当然あります。スーパーも準大手ゼネコンも、現場にはそんなに技術力や対応に大きな差は感じない。そういう意味では、現場レベルでは企業体質というものは、なかなか見えてこないでしょう。しかし、三井住友の場合は、旧財閥系から継承してしまっている「上からの圧力」、つまり「下への押し付け」が強い体質。これは他とは違って、感じます。主要な取引先が三井・住友グループなので、それほど衝突の起きることもない。大きな問題が起きれば、外に出る前に内々にもみ消すこともできるでしょう。今回の会見を見て、隠蔽・責任の押し付けが表れていると感じました。」

 また専門工事業者からはこんな声も。「売上高では日本で10本の指に入るだろうが、同規模クラスのゼネコンと比較すると、技術力は低い。逆にレベルが低いので、専門業者のペースで仕事ができる。スーパーゼネコンでは、管理の厳しいところはいくらでもある。そういう意味では仕事がしにくい面もあるが、三井住友建設は任せっきりで、こちらとしては仕事はしやすい。丸投げで、『あとは頼んでおくね』『近隣から苦情がきたから、静かにやって。』ぐらいのもの。あの会見を見て、『レベルの低い会社』だと、どのゼネコンも思ったでしょう。」
三井住友建設の今後
 全社でこれまでの施工調査に追われており、実質的な営業は行えていないと想像できる。今の状況で、営業しても契約しようとする施主はいないのではないか。施工中の物件では、一時停止、再調査もありえる。完工しないと売上は立たず。そうなれば、資金も火の車。旧財閥系といえど、金融機関も黙って付き合うわけにはいかないだろう。さらに、モチベーションが下がった社員の流出も考えられる。業界は人材不足。支店長クラスには、別のスーパー・準大手ゼネコンから引き抜きの話も来ていると聞く。さらにその先には賠償責任もある。現時点で、光明は一筋も見当たらない。
【東城 洋平】

▼関連リンク
・「ゼネコンは全部知っている」~専門家が語る旭化成建材のデータ偽装(前)

 

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