飯塚エリア浮揚の契機となるか 八木山バイパスが一部4車線化(後)

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炭都として発展した筑豊エリアの中心都市(つづき)

 古くは江戸期に長崎街道が通り、2つの宿場町(飯塚宿、内野宿)が置かれたことで、宿場町周辺や街道筋を中心にまちは発展。近世・明治期に入ると、飯塚を中心とした筑豊エリア一帯は、国の基幹産業となった石炭産業で日本経済の成長を支えた。飯塚でも、全国各地から多くの炭坑労働者が移住してきたことで人口が急増。また、炭鉱労働者の疲れを癒すために甘い菓子が好まれたことで数々の菓子舗や銘菓が生まれたほか、嘉穂劇場をはじめとする多くの劇場や映画館などの娯楽産業も栄え、飯塚は「炭都」としての栄華を極めた。

 しかしその後、戦後の復興期においても筑豊地域から算出される石炭は重宝されたものの、1955年以降は石炭から石油へのエネルギー革命とともに石炭産業が次第に衰退。飯塚市をはじめとした筑豊エリアでも、炭鉱の閉山によって急激な過疎化が進んでいった。

 一方で飯塚市では、石炭産業が衰退して以降は、新たな産業の創出に向けて工業団地の整備や企業誘致に努めると同時に、大学や研究機関の誘致を積極的に推進。その結果、近畿大学産業理工学部や九州工業大学情報工学部が設置されるなど、県内でも有数の学園都市が形成されるに至った。平成以降は、産学連携のコーディネートを行う福岡県立飯塚研究開発センターや高度情報処理技術者の育成を行う(株)福岡ソフトウェアセンターが設立され、研究開発と産業振興の拠点が集積するまちとして変貌。かつて炭都として栄華を極めたときのような勢いは失われてしまったものの、筑豊エリアの中心都市としての地位と存在感は、いまだ健在だ。

進出企業の受け皿となる新たな工業団地開発

 その飯塚市内では、前述したように石炭産業の衰退以降、主に炭鉱跡地を造成するかたちで工業団地の整備を進めるとともに、企業誘致にも注力。現在、市内には最大規模の飯塚工業団地(110.4ha)をはじめ、庄内工業団地(89.5ha)やグリーンヒル幸袋(29.9ha)など計23の工業団地があるが、そのいずれも完売している状況にある。そのため飯塚市ではさらなる企業進出の受け皿を確保すべく、新たに市内2カ所で工業団地の開発を進めようとしている。

 まず1カ所目の「栗尾工業団地」は、飯塚市鯰田地区にある飯塚オートレース場の第5駐車場跡地において25年度の完成を目指して整備が進んでいるもので、敷地面積は4.0ha。そのうち2.4haについては、工業用温度センサー製造の国内最大手である(株)岡崎製作所(兵庫県神戸市中央区)が進出することが決定している。岡崎製作所は、現在嘉麻市にある福岡工場を栗尾工業団地に移転・新設させる計画で、新工場の操業開始時期は26年3月を予定している。

 もう1カ所の「飯塚あかね工業団地(仮称)」は、飯塚市筑穂元吉地区にある日鉄鉱業炭鉱跡地において28年度の完成を目指して整備されようとしているもので、敷地面積は25.1ha。うち6.3haについては、プレキャストコンクリート製品の設計・製造を行う(株)ドーケン(福岡県飯塚市)が出資するDIST(株)(福岡市博多区)に現状有姿で売却済み。ドーケンの本社は同工業団地から約500mの距離にあるが、ドーケンを借主としてDISTと同地の賃貸借契約を交わし、ドーケンのコンクリート製品製造の事業用地として使用する予定となっている。なお、工業団地の残りの用地については、半導体製造装置の関連企業や物流関連の企業の誘致を目指しているとされている。

 こうした新たな工業団地の開発が進む一方で、既存の工業団地においては、進出企業の設備投資も進んでいる。

 24年3月にはヤマエグループホールディングス(株)のグループ会社である鋼製型枠等製造業の(株)鹿島技研(福岡県飯塚市)が、飯塚市有安地区にある有安工業団地において、本社および新工場を竣工した。これまで老築化が進んでいたほか、距離が離れていた複数の工場を集約するかたちで開発されたもので、敷地面積は移転前と比べて約3倍に拡大。生産性および品質の向上により、高品質で安定した製品と技術、サービスの提供につなげていくとしている。

 24年7月にはジェネリック医薬品最大手の沢井製薬(株)(大阪市淀川区)が、飯塚市平恒地区にある飯塚工業団地内で第二九州工場 新固形剤棟(ステップ1)を竣工した。同社製品の供給力強化につなげるもので、今後は27年のステップ2の工事完了を見込んでいる。

 さらに現在、洋和菓子製造・販売大手のシャトレーゼのグループ企業である(株)さかえ屋が、飯塚市平恒地区にある飯塚工業団地内の同社の第二工場敷地内で「(株)さかえ屋アイス工場」の開発を進めている。九州や四国、西日本一帯のシャトレーゼ店舗で販売されるアイスの生産拠点となる計画で、25年5月末の竣工を予定。その後、7月からのアイス生産の操業を予定している。

 こうした新たな工業団地の開発や企業誘致、設備投資にとって、今回の八木山バイパス一部4車線化による定時性・速達性の向上は、追い風となるだろう。

(了)

【坂田憲治】

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