問われる用途不明の土地購入、五島市・空きホテル除却事業(前)
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ここ数年で耳にする機会が増えた「空き家」や「空きマンション」。誰も住まない住居施設は、荒廃が進むことで景観を悪くし、さらには倒壊の危険まで出てくる。地域活性化にとって大きな障害と言えるだろう。長崎県五島市では、家やマンションではなく、「空きホテル」の解体について、国の空き家対策事業の補助金も活用するかたちで実施されている。税金を使う以上、当然ながら、問われるのは事業の公共性なのだが――。
国・県・市が助成
解体される「大波止ホテル」五島市で問題となった「空きホテル」があるのは同市栄町。市の中核をなす福江島の海の玄関口・福江港から見える海沿いである。名称は「大波止ホテル」。建物は鉄筋コンクリート造りの7階建で1977年9月に建てられた。延床面積は2,517.33m2。2001年11月に火災に遭い、経営者が営業再開を断念。そのまま放置され廃墟と化す。現在の所有者は、登記上、当時の運営会社である合資会社 大波止ホテルの名が残っているものの、同社に営業実態はなく、先代の社長が亡くなっているため、事実上、「所有者不在」とされている。
「大波止ホテル」の解体工事は、15年9月1日から16年7月31日まで行われる予定。事業主は、ホテルが建つ土地2,000.39m2を所有する民間人。費用は全部で7,301万1,000円。そのうち、「空き家再生等推進事業【除却事業タイプ】」の補助として、国および五島市がそれぞれ5分の2ずつ、すなわち2,920万4,000円を負担。事業主は残り5分の1である1,460万3,000円を負担する。
もちろん、建物の所有者が別である場合、たとえ地主であっても勝手に取り壊すことはできない。したがって、今回は以下のような法的手続きを踏んでいる。
まず、事業主となる土地所有者は、15年2月18日に(資)大波止ホテルを相手に、土地の所有権に基づき建物を収去して建物の敷地分の明け渡しを求める建物収去土地明渡請求事件を提訴。同年4月16日に建物を収去して土地を明け渡せという判決が下される。次に、同年5月12日、債務者・(資)大波止ホテルが解体義務を履行しない(建物所有者不在)ため、債権者・土地所有者が建物の収去ができるように申し立てを行った。同年5月27日、土地所有者が建物の収去ができるとの決定がなされた。
一方、「大波止ホテル」の建物には、人体や環境への悪影響から現在では使用が禁止されているアスベスト(石綿)が含まれていた。市の説明によると、調査は事業主が実施しており、各階の天井裏のはり、屋上ボイラーの排ガス用煙突内部の断熱材、事務所や階段などの床、洗面所、浴室、廊下など合計3,412m2にアスベストが含まれていたという。
このため、解体工事に合わせてアスベスト除去作業も行われるが、こちらは事業主である土地所有者の費用負担はなく、国、県、市で除去事業費1億5,498万3,000円を負担。内訳は、国が3分の1の5,166万円、県が15分の2の2,066万4,000円、市が15分の8の8,265万9,000円となる。解体工事およびアスベスト除去作業の五島市分の負担は、合計1億1,186万3,000円となる。
(つづく)
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