2024年11月23日( 土 )

問われる用途不明の土地購入、五島市・空きホテル除却事業(後)

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 「大波止ホテル」の除却事業に至るまで経緯を整理すると以下のような流れになる。


 情報 - 用途不明の土地取得 福江港から見る「大波止ホテル」...を推し進める野口市太郎市長は、かねがね、「五島の玄関口である福江港に入ると同時に目に入る」という大波止ホテルの姿が、島を訪れる人に悪い印象を与えると心配していた。また、ホテルの建物は、すでに看板の一部が落ちたり、壁が崩落したり、窓ガラスが割れたり、そこに子どもが入り込んだりしているとの話を聞き、「これはもう市民生活を考えた場合に、放置できない」と判断。なんとか解決できないかと、かねてより国、県にも幾度となく相談してきた。


 そのようななか、土地所有者が、自前(費用は140万円弱)で調査を行い、ホテルの建物にアスベストが含まれていることが判明した。アスベスト除去については、「建物の所有者が存在しないなかで負担を求める先がないが、これを放置すると、市民の安全安心な生活を脅かす。本来、建物の所有者が負担すべき部分を行政で負担せざるを得ない」と、野口市長は決断。国や県、関係機関の協議などを進め、平成27年度の五島市一般会計補正予算案に大波止ホテル除却事業にかかる経費として1億9,038万1,000円を計上した。


 火災で「大波止ホテル」が廃墟となって14年。遠目から(たとえば福江港の乗船場から)、同ホテルのたたずまいが気になるほど目立っているかと言うと、現地を取材した筆者は正直疑問を抱く。野口市長曰く「特例の取り扱い」、すなわち費用の大半を税金で賄うかたちで除却事業に臨むのは、市民生活を脅かす危険の除去といった意味合いが強いだろう。だが今回、市議会、市民の間に疑念を生じさせたのは、除却事業の後の話。五島市は、「大波止ホテル」を除却後の跡地のうち約1,500㎡を事業主である土地所有者から購入すると決めているのだ。

予算決定前に入札通知?

 国の空き家再生等推進事業【除却事業タイプ】の対象となるには、空き建築物の跡地が地域活性化のために供されることが条件。つまり、除却事業の事業主である土地所有者は、土地を手放すことを前提とする代わり、国、市の補助を受けられる。しかし五島市の場合、土地を購入予定としているものの、その用途については未定。ただ単に、「地域活性化のために使う」という意気込みのみで、本当にその土地の取得が、地域活性化につながるかどうかは未知数だ。計画性がまったくない投資であり、これが認められるのであれば、税金の使い道は、もはや何でもアリということになってしまう。


 また、土地の購入価格について、市は、「大波止ホテル」の除却後に土地の評価を鑑定するとしており、現段階では決まっていない。廃墟のホテルがあるのとないのでは、土地の評価は変わる。建物の解体の必要がない更地のほうが、土地の価値は上がるはずだ。


 市議会で複数の議員が市側に疑問を呈するなか、急いて事を仕損じたのか、五島市は、除却事業の入札執行通知を、市議会で予算が決定される前に出すという失態を演じた。しかも、アスベスト除去作業で助成を行う県でも議会中であり、五島市は、五島市議会、長崎県議会の両方に「議会軽視」の態度をとったことになる。この件については、野口市長が6月29日に市議会で謝罪した。


 用途不明の土地購入と拙速と言える物事の運び方が、疑念を強めている。なぜ、ホテル除却後の土地の活用についてしっかりと議論をし、用途を決めた後ではダメなのか。その理由ついて、市が説明をしないまま、賛成多数で事業予算は可決された。

(了)
【山下 康太】

 

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