誰が為に日本農業を守るのか

 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「国民のいのちと暮らしを守るためには、小規模農業事業者の所得・労働環境を大幅に改善する必要がある」と訴えた5月11日付の記事を紹介する。

 令和の米騒動が続いている。コメ価格は高騰を続け、店頭のコメ在庫も底をつき始めている。政府は備蓄米を放出しているというが価格高騰は止まらない。根本原因は米の供給不足。政府がコメ生産を抑制してきた。また、コメ農家の収入が限界まで抑制されてきた。コメ農家の年収は1万円。時給10円。この所得環境下で誰が過酷なコメ作り農業に力を注ぐのか。

 政府は農業人口削減に力を注いできた。日本農業は風前の灯。食料自給率は38%にまで低下している。コロナショックが浮き彫りにしたのは食料危機が発生すれば海外からの食料供給が遮断されること。

 日本国民が餓死する可能性が顕在化した。国家の最大の役割は国民のいのちと暮らしを守ること。その根幹が食料の確保である。

 米国は食料が最重要の〈戦略物資〉であることを踏まえて外交政策を構築している。日本人の食料を支配する体制を構築すれば日本は米国に隷属するしか道がなくなる。この状態で世界が食糧不足に直面すれば、まずは日本への供給を断ち切るだろう。これにより、日本は飢餓大国に転落する。コメ生産を守ることは農家を守ることではない。日本国民のいのちを守ることだ。この根本を間違えてはならない。

 日本経済新聞はコメ農家を守るために〈食料安全保障〉が唱えられているとの偏向報道を展開する。日本重罪新聞だ。コメ農家のための〈食料安全保障〉ではない。日本国民を守るための〈食料安全保障〉だ。

 この新聞社は2001年から完全に売国新聞社に転じた。経営トップが鶴田卓彦氏から杉田亮毅氏に交代したのと同時に同新聞社は国際カルトの手下になった。国際カルトは日本を利益収奪の対象としてしか見ていない。〈郵政民営化〉も国際カルトが日本の郵政マネーを収奪するための仕掛けだった。これを推進した小泉純一郎氏の〈盟友〉が杉田亮毅氏だった。

 この新聞社の経営トップ交代と連動して同新聞社系列テレビ局の経済報道番組に出演していた私に対する激しい攻撃が展開されるようになった。日本のコメ生産を守ることは〈農家を守ること〉ではなく〈国民のいのちを守ること〉を目的とするもの。この根本すら理解できないなら経済新聞事業を廃業にするべきだろう。

 政府はコメ農家の所得を補償するべきだ。同時に政府がコメを買い上げて備蓄水準を国内消費量の1年分以上に引き上げるべきだ。需給がひっ迫した場合に備蓄米を放出すれば価格高騰を防止できる。政府の備蓄米放出が価格抑制の効果をまったく持たないのは備蓄の水準が過小で放出量が過小であるからだ。

 政府はコメ農家の所得を補償する一方で、コメ小売り価格を低位に維持するために財政資金を投下するべきだ。自動車の対米輸出関税の引き上げを緩和してもらうためにコメの輸入を増やすような愚策に手を付けてはならない。

 自動車産業はこれまでの〈日本円暴落誘導政策〉によって激烈な超過利潤を享受してきた。その自動車業界が関税率引き上げに直面するからと言って、コメ輸入を拡大する理由にはまったくならない。

※続きは5月11日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「誰が為に日本農業を守るのか」で。


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