20日の投開票まで、実質残り1日となった。自民党は選挙区・比例区いずれも苦戦を強いられており、獲得するのは30議席台にとどまる見込みで、連立を組む公明党と合わせても過半数の50議席に届かない可能性が高まっている。取材してきた福岡選挙区の情勢も踏まえてお伝えする。
1人区でも野党系優位へ
「参院選終盤情勢、自民・公明過半数下回る見通し~秋の政局到来か」でもお伝えしたが、参議院における自民・公明両党の非改選議席は75議席で、与党側は50議席を確保できれば、参議院の過半数を維持できるが、これまで与党側が強かった1人区において、東北や九州など各地で野党系候補が優位に立っている。
1人区は全国に32選挙区ある。自民・与党系が優勢な選挙区は、栃木や奈良、山口など7選挙区にとどまり、自民優位とされた岐阜、岡山、佐賀の3選挙区も接戦となっている。
福岡など改選3議席以上の複数区では、旧民主系だけでなく、参政党の候補の一部が頭一つ抜け出す勢いを見せており、自民・公明の与党勢力が当落選上で苦しい戦いを強いられる地域もある。
比例について、自民公明以外をみてみよう。立憲民主党は選挙区と合わせて30議席台の確保が見込まれている。ただし、他の野党に支持が分散しており、大幅な議席増は難しいとみられる。
日本維新の会は、22年の参院選の勢いを維持できておらず、地盤とする大阪など関西の選挙区の状況がカギになるとみられる。
共産党は、東京以外の選挙区で接戦、あるいは苦戦を強いられている。
国民民主党は、「手取りを増やす」との訴えが浸透しており、接戦の選挙区も多い。比例では倍増が見込まれ、支持基盤の労働組合の組織内議員を中心に大幅に増加するとみられる。
れいわ新選組は、参政党や国民民主党などと減税政策が重なる面もあり、従来の勢いはみられないが、比例で3議席前後の獲得が見込まれている。
公明が自民の支持基盤を切り崩す
福岡選挙区の状況にも触れておきたい。自民現職の松山政司氏は安定した戦いだとみられるが、支持層の一部が参政党や国民民主党に流れており、前回(2019年)参院選の58万3,351票に迫る票を得て、トップ当選できるかは微妙である。
友党・公明の下野六太氏が当落線上におり、自民党の支持基盤に食い込みながら、衆院選での協力を条件に票の取り込みを進めている。13日には、石破茂首相が久留米市で行われた下野氏の演説会に駆けつけ、与党の結束を強調する一幕もあった。自民党系の地方議員や業界団体の一部も参加しており、自民党の一部の協力は得られているようだ。
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野党第一党の立憲民主党は、政権批判の流れもあり、30議席台を獲得するとみられるが、福岡選挙区で現職の野田国義氏が、参政党や国民民主党の猛烈な追い上げを受けるなど、当選圏内に入れるかは微妙な情勢だ。当初予定になかった野田佳彦代表が14日と18日に福岡入りし、野田氏への応援を呼び掛けるなど、陣営内には焦りが広がっている。
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労組関係者のなかには「ここまでとは思わなかった。立憲も国民も危ないかもしれない」との声も聞かれる。最終日まで気が抜けない戦いとなるだろう。
保守層を取り込んだ参政党
自民・公明・立憲が議席確保に懸命な一方で、勢いが伸びているのが新興勢力の参政党である。福岡選挙区は、同党新人・中田優子氏の立候補表明こそ遅れたものの、保守層に刺さりやすい「日本人ファースト」を掲げ、安倍元首相を支持した保守層を取り込むかたちで、一挙に当選圏内に躍り出た。
12日の夕方、福岡・警固公園には約3,000人が集まり、代表・神谷宗幣氏の演説に耳を傾けた。
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神谷氏は「働いた利益が海外に逃げていくことがグローバリズムで、『日本人ファースト』とは、行き過ぎたグローバリズムに歯止めをかけることだ」と、同党に対する「排外主義」「ヘイトスピーチ」との批判を否定しつつ、支持を訴えた。
中高年だけでなく、20代・30代の若年層の姿も多く、カップルでの参加も見られた。数人に話を聞くと「インターネット上のショート動画で参政党を知った」という。
参政党の台頭の一方で、当初勢いがあった国民民主党は、比例候補の擁立をめぐる問題などで失速し、福岡でもその影響を受けているが、同党の新人・川元健一氏は都市部を中心に支持を訴え、当選圏内入りを目指している。選挙戦最終日の19日には玉木雄一郎代表が応援に駆け付ける予定だ。
れいわ新選組、日本維新の会、日本保守党は、それぞれの支持層を中心に固めているが、無党派層への浸透が進んでおらず、社民党や共産党は、支持者の高齢化などから支持の広がりが乏しい状況にある。諸派の日本誠真会・NHK党・チームみらいも懸命に訴えを行い、浸透を図っている。
今回の参院選は、まさに「革命前夜」と言ってもよい激戦となっている。皆様、ぜひ投票に足を運んでほしい。
【近藤将勝】